表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/123

32.寝床の確保



「ここにも宿泊施設はあるけど、必要最低限な部屋よ。その子と一緒ならキツイかもね。あたしの泊まっている宿屋でいいなら、紹介するけど?」


「そうだな、お願いしようかな。」


「わかった。」



 最低限のところが、妙に強調されていた気がしたが、この世界のことをよく知らない俺は、エルに紹介してもらうことにした。


 それにしても、相変わらず表情には乏しいが、親切だよな。



「そうと決まれば、早速行きましょ。支払いお願いね。」



 エルが椅子から立ち上がる。



「まっへ!」



 コリンも、何かをつかんで、椅子からおりた。



 ・・・お前、まだ喰ってたのか。



「ああ、任せとけ。お金は手に入ったか--あ、エル、借りたお金返しておくよ。さっきの登録料と、夕飯代。」


「ご飯代はいいわ。奢ったげる。お近づきのしるしよ。」


「あ、ありがとう。」



 ほんと、クールなんだか、優しんだか・・。




***************




『月のらくだ館』



 看板には、そう書いてあった。


 ラクダもいるんだね。



「「エルお姉ちゃん、おかえり~!!」」


「ただいま。」



 エルが扉を開けて中に入ると、元気な声をかけられた。


 エルに続いて中に入ってみると、そこにはそっくりな顔をした、犬の獣人の子が2人いた。


 歳は、コリンよりはちょっと上だろうか?



「今日は、ちょっと遅かったわね。」



 エルが2人に挨拶を返して、頭を撫でてやっていると、その向こうから別な声がした。



「夕飯は食べてきたんだろうね。」



 エプロンで手を拭きながら、近づいてきたのは、やはり犬人の女性だった。


 30代くらいだろうか。



「ごめんなさい、食べてきたわ。」


「いいのよ。」



 女性は、ニコニコ笑っている。



「そちらは?」



 女性が、俺とコリンの方を見て聞いてきた。



「旅の人。泊まるところが無いって言うから、連れてきた。お部屋空いてる?」


「そう、エルちゃんが他人の世話を焼くなんて珍しいわね。ちょうど、今日一つ空いたところよ。」




 よかった、とりあえず寝床は確保できそうだ。



「あの、セイヤです。こっちは、コリン。今晩から、よろしくお願いします。」


「おねがいします!」



 コリンと二人で、頭を下げた。



「まあまあ、ご丁寧に。ウチは宿屋だから、泊めるのが商売よ。好きなだけ泊まっていってね。」


「「はい!」」


「それから、あたしはサリー。この子たちは、サムとサニーよ。あとついでに、厨房にいる旦那はサルク。よろしくね。」



 みんなサがつくのか・・ややこしいな。


 まあ、みんな細身で(サリーさんは、スレンダー美人だ)、サルーキーそっくりだけど。



「宿代は、一日一部屋朝晩二食付きで、6000シケルだけど、エルのお友達ということで、5000シケルでいいわ。部屋は、2人部屋だけど3人までならなんとか泊まれるわ。それから、このロビーの奥が食堂だから、食事はそこでとってね。朝は6時から8時まで、夜は5時から7時までよ。」


「わかりました。」


「それから、洗濯物は部屋の前のカゴに入れておいてくれれば、やっておくわ。洗顔は、部屋の中の水瓶の水を使って。飲水は、必要なときに厨房に声をかけてね。」


「え~と、宿代は前金ですか?」


「そうよ、何泊する?」



 どうしよう、もっと大きな町にも行ってみたいけど、この世界に慣れるまでは、ここにいたほうが良さそうだしな。



「じゃあ、1ヶ月でお願いします。」


「そう、なら今月は小の月だから、29日分で14万5000シケルね。」



 俺は、金貨を15枚渡してお釣りをもらった。


 エルに返した登録料と、パブの飲み代を引いて、残りは34万3000シケルだ。(コリンの肉代は貰い物なので、勘定に入ってない)


 んー、一人で民宿とか泊まったことなかったし、ビジネスホテルとかだと、CMで3~6000くらいって言ってたような・・・これは安いところの場合か?


 まーでも、なんとなく1シケル=1円くらいの価値のような感じなのかなあ。


 だとしたら、50万シケル(50万円)って、俺が今まで手にしたことのない大金だ!


 もしかして、冒険者って儲かる商売なのか?


 そういえば、エルは1日で10万シケル(10万円)稼いだことになるのか!


 ・・・すげえな。




「「コリンちゃんて言うんだ。明日から一緒に遊べるね!!」」



 コリンは、もうサム&サニーと仲良しになっているみたいだ。



「じゃあ、あたしは部屋に行くわね。」



 エルが、俺たちのやり取りが一段落したのを見届けて、そう言ってきた。



「エル、今日はいろいろありがとな。ほんとに助かったよ。」



 俺は、エルの手を取ってお礼を言った。



「べ、別に、大したことしてないわよ。こ、コリンのためよ。」



 エルが顔を真赤にして、俺から視線をそらして言った。



「ああ、だから、ありがとな。」



 なんか可愛すぎて、あえてそう言ってみた。



「じゃ、じゃあ、おやすみ。」



 エルは、手を離し二階への階段へ向かった。



「あ、エル。申し訳ないんだけど、明日もし大丈夫だったら、村を案内してくれないかな?」



 階段を登りかけたエルに、慌てて聞いてみた。



「ん~・・いいわ、案内するわ。」


「ありがとう!よろくな。じゃあ、引き止めて悪かった。おやすみ!」


「「「エルお姉ちゃん、おやすみなさい!」」」



 俺がそう言うと、コリンとサム&サニーも、元気に挨拶をした。



「うん、おやすみ。」



 エルは、右手を小さく振って、二階へ上がっていった。





 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ