表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/123

31.おみそれしました



 カウンターから離れて、パブスペースの方へ向かうと、人だかりが出来ていた。


 その中心のテーブルに座っているのは、エルとコリン。



「どうなってんだ?」



 遠目から見ても、からまれている訳ではないようだ。



「エルちゃん、今日も可愛いね。奢ってあげようか?」


「エルさま、本日もお美しい!是非、今度お食事にでも。」


「エルさん、僕とパーティーを組みませんか?」


「エルちゃん!」


「エルさま。」


「エル閣下!」



 いや、ある意味、からまれているようだ。


 だが、エルはいっさい返事をせずに、ビールみたいな飲み物を飲んでいる・・って、お前未成年じゃなかったっけ?


 そんなエルの隣で、コリンは黙々と何かを喰っている。



「コリンちゃんていうのかい?さ、これあげるからお食べ。」


「コリンちゃんも可愛いね。牛肉は好きかい?」


「コリンちゃん、兎肉はいかがかな?」



 こっちは、なんかやたらと食べ物を貰っているようだ。


 あいつ、あんなに食べれたっけ?



「コリン、エル、お待たせ~。」



 俺が声をかけると、一斉にみんなの視線が突き刺さる。



「おかえり。」


「おはえりなは~い!」



 エルは、一瞬、俺の方を見て答えると、再び飲み続ける。


 コリンは、口の中になんかの肉をいっぱいに頬張って、満面の笑みで、手を振ってきた。


 すると、周りにいた男たち~いや、女もいた~が、舌打ちをした後、離れて行った。



「エルって人気者なんだな。」



 俺は、2人の向かいの席に座りながら、そう言った。



「別に、周りの連中が、勝手に寄ってくるだけ。」



エルは、無表情で言った。



()()()()()()()()()()いっぱいくれたの!」


「エルってほんとクールだな。・・コリンは、口の中のものを食べてから、喋ろうな。」



 俺の言葉に、エルは鼻先で笑い、コリンはコクコク頷いて、一生懸命に肉を飲み込もうとしていた。



「セイヤも、シカルを飲んだら?」



 エルが、自分の飲んでいるものを、勧めてきた。


 シカルっていうのか。


 ビールみたいだけど、俺、正月に親戚のおじさんに飲まされて、すげー苦かった覚えしかないんだけど。



「そ、そうだな。飲んでみるか。すいませーん!シカルください。」



 この世界では、16歳で成人だというし、郷にいれば郷に従えだ。



「っていうか、エル、お前未成年だよな?酒なんか飲んでいいのか?」


「いいのよ、冒険者は。」


「どんな理屈だよ!」



 俺が突っ込んでも、涼しい顔だ。



「ところで、お金は手に入ったの?」



 運ばれてきたシカルをひと口飲んだところで、エルが聞いてきた。


 シカル、結構イケル。


 ビールより、アルコールがきつくない感じだし、フルーティーで甘みもある。


 ハマるかも・・じゃなかった、お金の件か。



「ああ、結構いい値段で買ってもらえたと思う。でも、シルバー・ウルフを出したら、すげー驚かれた。俺のランクじゃあり得ないって。」


「え!あんた、シルバー・ウルフを狩ったの?そんなはずないわ!あたしでさえ、群の場合は、ちょっとは手こずるのに!」



 エルが、突然興奮し出した。


 ん?ちょっと待った、()()()()()()


 どういうこと?



「エルって、何ランク?」


「Aランク。」


「えーーー!(駄洒落じゃないよ)」



 そんな高ランクなのかよ。



「ちなみに、このエア村にAランクは、何人くらいいるんだ?」


「1人。」


「エーーーーー!」



 それで、さっきの騒ぎだったのか。


 そりゃあ、村唯一のAランク冒険者なら、他の冒険者の憧れだよなあ。


 しかも、こんなにかわいいし。


 中には、変な崇拝者もいそう・・・。


 コリンの方は、単純にかわいいからだろうけど。



「よく分かんないけど、偶然?仕留めることができたんだ。」


「偶然で、ヤレる相手でもないんだけど。まあいいわ、それよりあんたたち、今夜寝るとこどうするの?」



 俺の適当ないい訳には納得いってないようだけど、エルは重要なことを言ってきた。



「そうだ!どうしよう。」


 俺は、コリンの顔を見てそう言った。


 コリンは、そんな俺の顔を、口のまわりを肉の脂だらけにして、キョトンと首をかしげ、見返してきた。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ