24.最初の村
エルが先にたって歩き出そうとすると、コリンが右手を自分の左手でつかんだ。
突然のことに、エルは驚いて振り払おうとしたが、コリンの余りに哀しそうな顔に、思いとどまったようだった。
すると途端に、コリンは機嫌を直し、今度は空いている右手で、俺の左手を握ってきた。
そして、満面の笑みを浮かべると、俺たち2人を引っ張り、歩き出した。
俺はすぐに諦めたが、エルは困惑した表情のまま、手を引かれていた。
「そういえば、エルって何歳なんだ?」
ようやく受け入れたのか、並んで歩き始めたエルに、何の気なしに聞いてみた。
「女性に歳を聞くとか、あんたはバカか?15だ。」
「すんません。へえ、じゃあ2コ下か・・。」
罵倒しながらも、答えてくれた。
「なにっ、あんた成人しているのか!」
「えっ?」
「16で成人だろう。」
そうなんだ、こっちの世界では、俺、もう大人なのか。
「コリンはね、5歳、もうすぐ6歳なの!」
俺とつないでいた右手を離して、手のひらを開いて、5歳を表現する。
エルとつないだ方を離さないのは、またつなぎなおす時に、拒否されないためにだろう、中々の策士だ。
俺は、コリンのフォローをムダにしないように、話題を変えることにした。
「これから行く集落って、どんなところだ?」
「小さな村よ、エアというの。水の神エアに守護された村で、大昔は結構栄えたところだったらしいわ。」
「そうなんだ。」
水の神か。
「着いたわよ。あれが、エアよ。」
2時間ほど歩いて、辺りが夕暮れになってきた頃、エルが左手で指し示した。
そこには、村というには立派な城壁に囲まれた、集落があった。




