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 1分もかからずに、反応のあった地点に到着した。


 そして、目にした光景に、俺は、思わず息を飲んだ。



 足元に5つのウルフの死体が転がり、残りの15頭のウルフに囲まれて立っている一人の少女。


 身長140センチメートルくらいで、小柄な体。


 細身でありながら、胸は普通にある。


 つまり、スタイル抜群。


 着ているのは、黒く光る革素材のタイトなショートパンツに、同じ素材の半袖の上着、足元に履くのも黒のショート革ブーツ。


 露出している素肌は、黒色の革と対象的な大理石のように白い肌。


 特徴的なのは、艶やかな銀色の長い髪をツインテールに結び、ややつり目の切れ長な目は、エメラルドグリーンをしていること。



 小さな身を少しかがめて、手にはシャムシール~シミターとも呼ばれる、わずかに曲がった細身の片刃刀~を持ち、タイミングを見計らっている。



 ウルフたちが、突然その場に現れた俺たちに気を取られたその瞬間、少女はそのスキを突いた。



 一瞬で間合いを詰めると、ウルフたちの間を縫うように駆け巡り、確実にシャムシールでその首を切り裂いていく。


 不意に、背後の死角にいたウルフが、鋭い牙を剥き出しにして、少女の首筋を狙いにいった。


 だが、うしろの敵が見えていたのか、少女は上半身を前に倒しながら、襲ってきたウルフの顔を後ろに蹴り上げる。


 蹴られたウルフは、のけぞるようにして吹っ飛ばされた。


 14頭目のウルフを切り裂き終えると、先ほど蹴り飛ばした最後の1頭に駆け寄り、とどめを刺した。



 その間、銀色に輝く髪が、一度たりとも留まることはなかった。



「す、凄い。」


「おねえさん、すごーい!」



 思わず、感嘆の声を漏らした俺の横で、コリンが手をたたいて、はしゃいでいる。



「なんか用?」



 討伐部位をナイフで解体して集めながら、少女が言ってきた。



「あ、いや。魔物に囲まれている人がいるみたいだったので、助けようと思って来てみただけだけど。」



 俺は、先ほどの衝撃と、あまりの愛想のない物言いに、ドギマギして答えた。



「ふ~ん。獲物を横取りしようとしてたんじゃないの?」


「い、いや。けして、そんなつもりは・・。」


「ホントだよ。セイヤお兄ちゃんは、コリンのことも助けてくれたんだから、嘘じゃないよ。」



 戸惑う俺に、コリンが助け舟を出してくてる。


 なんて可愛いヤツ。



「そう、どっちでもいいけど。じゃあ、その必要性も無くなったし、用事も済んだということで、あたしは行くわ。」



 回収が終わり、パンパンに膨らんだ鞄を肩からさげると、少女は俺たちに背を向けて歩き出した。



「あ、ちょっと。」



 慌てて声をかけると、少女がふりむいた。



「なに?まだ、なんか用事あるの?」



 吸い込まれそうなエメラルドグリーンの瞳で、キッと睨みつけてくる。



「カ、カワイイ・・。」


「な、なに言ってるのよ!」



 思わずつぶやいてしまった俺の言葉に、少女は一瞬で顔を朱らめた。



「・・あ?いや、ご、ゴメン。思わず見とれてしまって・・。」


「か、からかわないでよ!で、何のようなの?」



 訳の分からない言い訳をする俺を無視して、少女は改めて聞いてきた。



「そうだ!え~と、俺たち遠くの方から旅してきたんだけど、金も食べ物も無くなってしまって、この近くの集落に行こうと思ってたんだ。それで、よかったら集落まで案内してくれると助かるんだけど。」



 俺は、言えない部分や都合の悪い部分は適当にごまかして、少女にお願いしてみた。



「・・・・わかったわ。そんな小さな子を、飢え死にさせるわけにはいかないわね。」



 少女は、しばらく、俺とコリンの顔を交互に見ていたが、やがてそう言って頷いた。



「ありがとう!おねえさん。」



 コリンは、俺の適当な作り話を否定するでもなく、笑顔のままじっと俺たちのやり取りを見ていたが、少女の言葉を聞いて、それが満面の笑顔と変わった。



「ありがとう。俺は、セイヤ。この子は、コリン。よろしくな。」



 俺は、ホッとして、改めて礼を言い、自己紹介をした。



「エルよ。よろしく。」



 エルがほんの少しだけ微笑んで、差し出した俺の手を握ってくれた。



「コリンも。」



 すると、コリンが、握りあった俺たちの手の上に、自分の小さな手を重ねてきた。


 それを見たエルが、今度は破顔するのだった。


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