122.のれんに腕押し
「(・・どうだから。)」
「声が小さい!」
「めんどうだから?」
両手を胸の前で合わせて、上目遣いでソロ~と俺のことを見上げてくる。
なんで疑問形・・・。
「そういういい加減なところは、貴女らしいっちゃ、あなたらしいですけど・・」
チョイチョイ。
「ん?」
俺はイナンナ神さまを手招きして、顔を寄せてきた彼女の右耳へ、口を手で覆いながら近づけた。
「(エルやアイリスは、他の神さまから神託を頂いているからギリギリ良いとしても、あの人はマズくないですか?)」
小声で喋りながら、相変わらず腕を組んだままのスザンヌさんをチラ見する。
「(だいじょうぶ。色々不安や不満はあるでしょうけど、信用できる子だっていうのは保証するから、これからも一緒にいてあげて?)」
イナンナ神さまは小さな口に手をやって、プッと微笑ったあと、俺と同じ様にチラ見しながら言った。
「ちょっとあんたたち!聞こえてるわよ!!だいたい、わざとらしい仕草するんじゃないわよ!!!」
コソコソしている俺たちに、スザンヌさんが顎を引いて睨めつけながら低い声で言った。
「「へへっ」」
「『へへっ』じゃないわよ!まったく!!」
二人して首をすくめていると、スザンヌさんは呆れ顔で吐き捨てるように言った。
「・・まあそれはともかく、どうやらスザンヌさんが一緒に行動するようになるってことは、他のみんなもそうだけど、はじめっから織り込み済みだったんでしょう?『めんどうくさい』とかなんとか適当にごまかしてるけど」
俺がジト目で見つめると、イナンナ神さまは視線をそらす。
「ライアンちゃ~ん、寝てばっかりね~。おなかすいてな~い?」
「ミャ~あ~ぅ」
「さっきお昼ご飯食べてきたばっかです」
話もそらそうとするのを、バッサリ切り捨てる。
どうもなあ・・神様たちが、ほんとうのこと全て教えてくれているとは思わないけどさ、そもそも俺のことを利用するために召喚だんだし、でもなんか隠し事が多い気がしてならない。
ニンフルサグ神さまはともかく、イナンナ神さまもエア神さまも、いい加減さ爆発しているしなあ・・ハア。
「聞いても無駄そうなので、とっとと先進みましょう?」
小さくため息をついたあと、俺は紅茶をすすってから言った。
「もう、せっかちネエ」
イナンナ神さまが唇を尖らせる。
「先って?」
エルがティーカップをソーサーに置いて、聞いてきた。
コリン以外の全員が俺のことを見る。
「加護を授けてくれるのさ」