120.だ~ってだって、だ~ってだってなんだも~ん♫
・・・紅茶の香りがする。
跪き、両手を組んで目を瞑り、祈りを捧げる姿勢をとっていた俺は、薄っすらと目を開けた。
あたりはまばゆい光に満ちた白い空間・・・床も天井も、その境界の見分けの付かない空間。
・・・じゃないな、普通に部屋じゃん!
直線の多いデザインの中に、丸みを帯びた形をしているソファー・・・。
木製のローテーブルの上には、紅茶のセット。
無駄な装飾のない、シンプルで機能的なデザインの家具。
それらの家具は、天然木を使用した温かみのある素材感を重視したもので、棚や白い壁には可愛い雑貨が飾ってある。
ナチュラルな自然色を基調とした中に、カラフルな色使いのものが要所に配置されている。
『ザッツ北欧スタイル』みたいな?
「いらっしゃい。どう、気に入った?」
部屋のインテリアに気を取られていると、始めに目に入ったソファーの方から声がした。
艶やかな黄金色の長い髪にサファイヤの様なブルーアイ、透けるように白い肌の美少女がティーカップを片手に小首をかしげている。
背は低く、プロポーションは・・・まあ普通か・・。
「だから、人のことを勝手に値踏みしないの!」
「なんで貴女がいるんですか?!」
紛れもなく、俺をこの世界に放り込んだ張本人・・・イナンナがそこにいた。
「あのさあ、わたしだけ呼び捨てってひどくない?」
「他人の心を読まないでください!出あったときから変わってないんだからいいじゃないですか。」
「だってさあ、スケベ爺やニンフルサグちゃんには『神さま』付けじゃない。」
イナンナがプクぅ~と頬をふくらませる。
「お取り込み中のところ、申し訳ないんだけどさ。どなた?」
ちょんちょんと、俺の右肩を指でつついてスザンヌさんが聞いてきた。
「あー、え~と・・イナンナ神さま。・・・・・・エーーーーー!!!!な、なんでいるんですかあー!?」
「セイヤくん、ほ、ほんとに本物?」(エル)
「ニャハハハ、こんにちわ~!」(コリン)
「はワワワ。」(アイリス)
「にゃ~あ。」(ライアン)
なぜか俺の後ろには、全員がいた。(サーシャさまと司祭長さまはいないけど)
そしてエルは無意識の『くん』呼びだ。(なんか嬉しい)
「めんどうだから、まとめて呼んじゃった。」
イナンナがぺろっと小さな舌を出す。
なんにも動じてないのが2名と1匹。
動揺しまくりなのが2名。
・・頭痛くなってきた。
「イロイロと言いたいことは山ほどあるんですけど、とりあえず・・なんでいるの?ここってイシュタル神さまの神殿だよね?」
「だって、わたしがイシュタル神だもの。」