117.○○、☓☓やめたんだって?
「ひっろ!」
ジッグラトの頂上は例によって、平になっている。
エア神殿の頂上も大概広かったが、ここは常軌を逸していた。
東京ドームでいえば2個分は優にある。(※作者注)
「しかも遠いし。」
おそらくイシュタル神さまが祀られているだろう四角い建物が、かなり先の方に見える。
「セイヤ、ごちゃごちゃうるさい。」
エルにジト目で睨まれた。
「さ、もうちょっとよ。」
スザンヌさんに言われ、建物へと向かう。
「ようこそいらっしゃいました、ローリー様。・・・そして、お待ちしておりました、セイヤ様、コリン様。それからお久しぶりですね、エル様にアイリス様。」
入り口には1人の男性が待っていた。
透き通る白い肌に、薄い金色の髪。
特徴のある耳を見れば、ハイエルフ族であることが分かる。
「ご無沙汰しておりました、司祭長様。」
スザンヌさんが膝を少し曲げて挨拶をする。
・・優雅さがここまで似合わない人もいるんだな。
「さ、あの方も奥でお待ちになられております。こちらへどうぞ。」
白く光沢のある衣装をふわりと翻して、司祭長さまが建物の奥へと誘った。
「あの方って?」
俺は前を行くスザンヌさんの肩をたたいて、たずねた。
「行けばわかるわ。」
しかし、その答えはそっけなかった。
なんで?
「なあ、エル?」
こっちは目をそらされた。
ん?
「アイ・・。」
目を伏せる。
んんん?
・・コリンとライアンは・・・当てにならんか。
薄暗い建物の中の廊下を進み、やがて大きな扉の前へ出た。
「こちらです。」
司祭長さまが扉に手をかけて、開け放つ。
中は思いのほか広い空間だった。
高い天井に、足元は階段状に長椅子が並んで下方へと続いており、一番奥に祭壇とその後ろに神像が立っているのが見える。
まるで・・・そう、地球でいえば西欧のどこかの由緒正しい劇場と、教会を足して二で割った様な造りだった。
祭壇の横には、一人の女性が佇んでいた。
こちらを見上げ、微笑んでいる。
エルとアイリスが、息を呑む気配がした。
司祭長さまに続いて、階段を1段ずつ降りていく。
なんかよく分かんないが、緊張してきた。
エルとアイリスも、相当緊張しているのがわかる。
コリンはいつの間にかライアンを抱え、周りを珍しそうにキョロキョロ見回しながらついてくる。
緊張とは無縁のようだ。
スザンヌさんは・・・・どこか少し嬉しそうだ。
祭壇の前に辿り着き、イシュタル神さまの神像に一礼したあと、そばに立っている人物に向き合った。
「お久しぶり、スザンヌちゃん。ギルマスやめちゃったんだって?」
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※(地方の人でよく分からなければ、だいたい300m四方の広さと思えばいいです。ちなみに小学校の校庭は50m~80m四方くらい)