113.む〜かしの なまえ〜で でて〜 い〜ま〜す〜
「あのー。つかぬことをお聞きしますが、お二方と国王様のご関係は?スザンヌさんはともかく、ベンジャミンさんも国王様をあいつ呼ばわりしていたような・・・。」
アイリスが、国王様の名前を知っていたのは・・まあ、隣国の国王の名前くらい、知っていてもおかしくないからいいとして、問題はこの人たちだよな。
「ともかくってなによ!」
スザンヌさんが、頬をふくらます。
「あーそれはアレだ、むかし冒険者の現役時代に、パーティーを組んでいたんだよ。」
ベンジャミンさんが、涼しげな顔をして言った。
「へ?」
「チョー有名な話。」
俺が変な声を出したら、エルがさも当たり前だと言わんばかりに、抑揚のない声で言った。
「そ、そうなんですか?」
「伝説のパーティー、白銀の疾風。」
またも、エルが言う。
なぜにドイツ語・・・?
「昔の話よ!」
「確かに、今さらその名前は恥ずかしい・・・。」
スザンヌさんとベンジャミンさんが、慌てている。
それにしても・・・。
「国王様が冒険者って、本当ですか?」
「冒険者だったのよ。」
いや、そういうことじゃなくて。
「普通、命の危険があるような仕事を王族がするなんて、ありえなくないですか?」
「エリリンはね、第3王子だったのよ。だから、王位継承とかはほとんど関係なかったの。」
ミレリさんが新しく入れ直してくれたポットから、自分のカップに紅茶を注ぎながら、スザンヌさんが言った。
「そうだ、だから若い頃からあいつは好き放題やっていてな。元々、血統からくる基礎能力が高い上に、教育係の近衛騎士団長やら宮廷魔道士長やらに鍛え上げられた結果、バカみたいな値になったステータスを持て余して、冒険者なんかになっちまったということだよ。」
「で、あたしたち5人でパーティーを組んだワケ。」
「5人、ですか?」
登場人物が2人足りない。
「『深淵の魔道士』と、『慈愛の聖女』。」
エルが、話が長くなりそうだからと、気を利かせてミレリさんが置いていってくれた、お茶請けのクッキーをかじりながらボソリと言う。
「今じゃ、宮廷魔道士長さまと王妃さまだけどね。」
スザンヌさんも、クッキーを5枚一緒にかじりながら言った。
なんか、凄いメンバー過ぎて、状況を消化しきれてないんですけど・・。
「・・・あれ?でもどうして、第3王子が王様に?」
王位継承しないから、自由気ままにしていたんじゃなかったの?
「なんだ、君はなにも知らないんだなあ。そういえばさっきから、質問攻めだな?」
「え?ああ、スイマセン。俺とコリンは、遥か東方の国から来たばかりなもんで・・。」
「そうか、それなら仕方ないか。」
ヤバイ、話しやすさから、ついつい聞きたいことを聞いてしまっていた。
「まあいいさ、周知の事実だからな。」
「ありがとうございます。」
俺は、頭を下げた。
「10年前の神々の戦いは知っているか?」
「はい。」




