103.信託ではありません・・念のため
「そこが、わからないのよ。どうして、『11の魔物』や邪神と戦うことと、神殿巡りがつながるのよ?」
スザンヌさんは、こめかみを押さえながら聞いてきた。
「あたしも、そこは聞いてないわ。なんとなくは、分かるけど。」
「コリンも~!」
「みゃお~ん!」
お前ら、遊んでるだろ?
「?」
俺たちと同じように、ベッドに腰を掛けたアイリスは、小首を傾げている。
「もう一つ、別な神さまからの神託があったんです。」
「「「「えぇっ!?」」」」
みんなが一斉に俺の顔を見る。
ライアンは、アクビをしているけど(あたりまえか)。
「その前に・・・エア神さまからはこうも言われたんです。『国々を巡れば自ずと実力も付くし、やるべき事が見えてくる。』って。」
「なるほど・・・で?」
「そして、もう一柱・・・ニンフルサグ神さまからも、神託がありました。『それぞれの国の町に行ったら、必ずその町の神殿を尋ねなさい。』っていう・・・。」
「もしかしてあの時?」
エルが聞いてくる。
「ああ。」
「アイリスちゃんを助けたときね。」
うなずく俺に、スザンヌさんが納得する。
「・・・でもね、もうひとつ、しっくりこないのよね。」
しばらくの沈黙の後、スザンヌさんが口を開いた。
「諸国を巡るのはいいわ、確かに実力も付くし、経験も積める。どんな敵と対決するにせよ必要なことよ。でも・・・なんで神殿なの?」
「それは・・・。」
やっぱり、そこですよね・・・。
「・・・・神託だけじゃないんです。」
「セイヤ!」
俺が話そうとすると、エルが声を上げる。
俺は、エルに頷いた。
「加護も頂いているんです。」
「加護?そんなの、みんな持っているわよ。みんな、生まれ育った町の神殿に最初に参詣した時に、貰うものだもの。」
「あたしもおんなじこと言った。」
困惑するスザンヌさんに、エルがボソリと言った。
怒ってる?
「普通の加護じゃないんです、邪神を倒しうる特別な加護を貰ったんです。」
「どういうこと?」
「あたしもおんなじこと言われた。」
ん~~怒ってるね。
「ステータスは明かさないって言いましたけど、頂いた加護のお陰で、たぶんスザンヌさんの想像の遥か斜め上をいくステータスになっているんです、オレ。」
「ちょ、ちょっと待って。じゃあ、神殿を巡るというのはもしかして・・・。」
「足りないんです・・・これでも。多分ですけど、邪神たちと対等に渡り合うには、全然足りないんです・・・実力が。」
両隣に座っているコリンとエルが、いつの間にか俺の手を握っている。
「・・・だから、ニンフルサグ神さまはおっしゃったんだと思います。神殿を巡れと。」
「更なる加護を得るために?」
「・・はい。」
「・・・・分かったわ。神託のことも、加護のことも、本当のことっていう前提でなんか話が進んできてしまったけど。その話・・・・信じるわ。」
「ありがとうございます。ただ、このことは・・。」
「それも解ってる、口外はしない。・・・ただし。」
スザンヌさんが、妖艶な笑顔で言ってきた。
「とことん、付き合わせてもらうからね。」
「ヤッター!」
俺は能天気に喜ぶコリンの横で、エルと一度顔を見合わせ、ガックリと肩を落としたのだった。
「あのう・・・・。」
そのとき、アイリスがオズオズといった感じで、言ってきた。
「どうした?」
俺は、アイリスの方を見て言った。
「ボクも・・・御神託を頂きました。・・二度ほど。」