102.みさき~巡りの~~
「目的は・・・・いろんな国、いろんな町を巡って、その町の神殿を訪れることです。」
俺は、なおも抵抗して言ってみる。
「理由って言ったでしょう。」
スザンヌさんの真剣な眼差しは変わらない。
ダメか・・・。
「どこから・・・なにを、言えばいいのか・・。」
言い淀む俺のことを、みんなが見ている。
「10年前の災厄のことは、覚えていますよね?」
ようやく絞り出した俺の言葉に、一瞬エルの表情が強張った。
「もちろん覚えているわ、この王都も酷い有様だった・・・今はこの通り、すっかり綺麗になっているけど。」
「ええ、それには俺も驚いていたんですけど・・・・また・・『11の魔物』が現れるんです。」
スザンヌさんが目を見開いて固まる。
「でも、クサリクは神々の軍が封印して、邪神アプスも倒したはず。」
スザンヌさんは、自分に言い聞かせるように呟いた。
「邪神ティアマトが、息子キングウに命じて『11の魔物』を復活させるんです。」
ふいに、部屋の入口の方から、声が割り込んでくる。
「「「「アイリス(ちゃん)!」」」」
そこには、風呂上がりの上気した顔のアイリスが立っていた。
その赤い顔は、風呂上がりのせいばかりではないみたいだ。
「どうして、そのことを知っているんだ?」
俺は困惑して、上ずった声を出してしまう。
「それは・・・。」
俺の勢いに、アイリスは途端にうつむいて黙り込んだ。
「どうやら出どころは違うみたいだけど、そういう噂があるというのは確かのようね。」
スザンヌさんは、俺とアイリスを交互に見て顎に指を当てた。
「『11の魔物』が復活するかどうかは置いといて、それでセイヤくんが神殿巡りをすることと、どう関係があるのかな?」
ふたたび俺の顔を見つめ、聞いてくる。
どう言えばいいんだろう?
俺が転移者であることは、話を聞くとエア神さまは、エルにさえ言っていないみたいだしな。
「・・・スザンヌさんは、神託ってどう思います?」
「『神託』?宮廷の大神官様や、どっかの国の聖女様が授かるっていう?」
スザンヌさんが、一瞬キョトンとした目をして言った。
ああ、この世界ではそうゆうこともあるんだ、ヤッパリ。
「ええまあ・・・その神託を授かったんです。エア神さまに。」
「・・・・。」
スザンヌさんが、目をパチクリする。
「・・・セイヤくん、本気で言ってんの?」
「ハイ。」
「あたしも神託を授かったわ。」
「コリンも~!」
「みゃお~ん!」
エルが肯定すると、コリンも勢い良く右手を挙げる。
・・・ライアン、おまえは違うだろう!
「ちょ、ちょっと待って。どういうこと?」
スザンヌさんが、俺たちの顔を見回して狼狽する。
「俺はエア神さまに、こう言われたんです。『キングウに打ち勝って、『天命の粘土版』を奪い、『11の魔物』を倒し、邪神ティアマトを葬って、世界を救ってほしい。』と。」
「あたしは、セイヤのことを助けてやってほしいって言われた。」
「コリンも~!!」
「みゃお~ん!!」
だから、ライアンは違うだろ!!
「だから、神殿巡りなんです。」
スザンヌさんは、こめかみを押さえ始めた。