101.おんなものですか?
「ちょっと、あなたたち・・・話があるんだけど。」
その夜、アイリスがバスルームに行ったっているあいだに、スザンヌさんが俺たち3人を自分の部屋へ呼び集めた。
橙色のテラッテラした、シルクのネグリジェを着て、洗った髪の毛をタオルで纏め上げている。
「あのぉ、それ女物ですよね?」
「男女兼用よぉ~。」
「・・・・。」
もう、聞くのはやめよう。
「で、なんですか?とつぜん。」
俺たち3人+1匹がベッドに腰掛けると、スザンヌさんはドレッサーの前の椅子に腰を下ろして脚を組んだ。
・・・ん?なんか前にも似たようなシュチュエーションが、あったような記憶が・・・。
「あなたたち、なんか隠しているでしょう?」
スザンヌさんが胸の前で腕を組み、右手を頬に当てて、俺たちを順に見回す。
・・そして、俺の方を向いて止まった。
「なんのことでしょう?」
俺の声が、変に上ずった。
エルが、陰で肘打ちをしてくる。
コリンは、小首傾げてキョトンとしている。
「ちょっと前の、ネクロマンサーとその手下との戦闘のことなんだけど。」
スザンヌさんが、コリンのことを見つめる。
「コリンちゃん、随分と強かったわねえ、ステータスのわりに。」
「い、いや・・あれは、その・・そう!エルに結構みっちり、稽古をつけてもらってたから・・なあ!エル。」
「そう。コリン、けっこう優秀。」
「えへへえ~。」
俺たちが、三文芝居をしていると、スザンヌさんが再び俺の方を見て、真剣な表情になった。
「セイヤくんのステータスも、このあいだ見せてくれたのは、本当は違うんでしょう?」
「そ、そんなことないですよ。ははははは。」
俺は、乾いた笑いを出してしまう。
「あたしにはね、スキルがあるの。」
スザンヌさんが、ひとつ大きなため息を吐いて、言った。
「あの・・鑑定、ですよね?」
「それも持っているけど、それじゃないわ。」
鑑定じゃない・・。
なんだ?
看破?
「『トレイス ディテクター』っていう、ユニークスキルよ。」
「トレイス ディテクター?」
なんでございましょう?
「スキルの『痕跡を検知』できる能力よ。」
「すいません、ちょっとなに言っているか分かんないんですけど。(なんで、なに言ってるか分かんないんだよ!)」
いちおう、一人ツッコミ入れときました。
「誰かが、スキルを発動した瞬間から、その痕跡を検知して辿ることができるの。」
マジか!
じゃあ、ドヤ顔で隠しおおせたつもりでいても・・。
「だからたとえどんなに、巧妙に隠蔽することができたとしても、それがスキルによってなされたものなら、行った事実は分かってしまうのよ。」
「バレバレですか・・。」
スザンヌさんが、無言で頷く。
「ねえ、今ここで、ステータスを明かしなさいとは言わないわ。でも、何か目的が・・・うううん、何か理由があってこの旅をしているんでしょう?」
しばらくの沈黙のあと、スザンヌさんは切り出した。
「それを教えてくれない?」