沢田の家への張り込み
「いえ、ここまで手紙を信じてきたから!」
戦いが始まった。神崎は一人をなぐりはがいじめにしようとした相手をなぐった。神崎は福田を逃がそうと呼び掛けた。
「ぼくは3人たおす。逃げてください。あいつのことであなたはまきこめない。」
沢田はあえて表に出ようとしなかった。表に出れば暴力沙汰で通報されるからだ。神崎は沢田と戦い、橋本と阿部は他の2人と戦い、福田はおろおろし、洋子と百合子は見ていた。結局激しい殴り合いが起きたが神崎は沢田に敵わず負けてしまった。橋本たちもだった。事件にならないようかるくひねられたという感じだった。百合子は連れていかれ、福田はあたふたしてるだけで、神崎にかばってもらうだけで終わった。神崎たちは荒らされたその場で今後の事を話し合った。
「すごいさわぎでしたな。」
「これからどうする。」
「百合子をつれもどす。」
神崎は固く決意した。橋本は同調した。
「おれもつきあうぜ。」
「僕もやります。」
福田が言ったのに神崎は制した。
「それは、出来ない。」
「でもせっかくここまで来て神崎さんと知り合えたんじゃないですか。」
「しかし、やはり危険だ。沢田の件は・・」
「僕も男です。」
「これから百合子をとりもどすため力を合わせよう。福田さんはだめとして。でも今日は本当にありがとう。」
洋子は後日会社でプレゼンの資料のはいったパソコンのデータを調べていた。
「あれ?ここ昨日のプレゼン資料だけど、念のためロックしておいたんだけど1度だけ外した形跡がある。」
「本当ね。」
洋子の友人が調べた。
「なぜかしら。」
「後は調べておくわ。」
「長井くん、プレゼンの資料なんだけど。」
洋子の友人は長井に疑いをかけた。
「なんだい?」
「このスライドショーのデータ部分調べたけど、福田君が間違えた部分確かに、CコアがBコアになってる。」
「その部分は福田君が作成したものだ。間違えたんだろう。」
「あたし、あの日作業しててきづいたけど、確かあの日福田君からあなたに途中で作業交代したわよね。で確かこういったわよね。Cコアのところまでおわったようだね、あとはまかせろ、って。なんで共有ファイルで福田君の作業確認してんの?あなたの担当じゃないでしょ。」
「彼が疲れてたから。」
「何でCコアの部分で交代してそこを間違えるわけ?」
「僕がわざと間違えるとでもいうのか。」
「うん、システム部に調べてもらったら改竄履歴があったわ。福田君をはめたんでしょ。」
長井の顔が変わった。
「なんで、そう思ったんだ?」
洋子の友人の問い詰めが強くなった。
「福田君がボウガンで日曜日撃たれそうになったってきいたからよ。で誰かに狙われてるって思った。」
ついに長井は怒鳴った。
「僕がボウガンを撃ったというのか!」
「理由はよくわからないけど、嫌いなんでしょ。みんないってるわよ。」
「濡れ衣だ。」
長井は吐き捨てた。
その後福田は先輩から話を聞いた。
「長井が今日つけで退社した。何でも福田を前から嫌ってただろうとか、洋子さんにストーカーしてボウガンでうっただろとか、みんなに半分冗談で言われたら本気に受け取ったらしい。」
「えっ、」
「長井さん福田君嫌いなんですか?」
「本人には黙っててほしいけど、結構悪口いってたよ。ばかにしてる感じだった。」
その日の夜、福田は沢田の家の近くに一人で来ていた。神崎の頼みではなく自分の意思である。
(沢田って男、今何をしてるんだろう。そして百合子さんは・・)
自分でもよくそんな勇気がわいたものだと感じた。先日の連中と神崎達との取っ組みあい
を目の当たりにしてもである。電柱に隠れて様子を伺っている内に近くにいた住民が話しかけてきた。
「ここの家はいつもすごい声が聞こえるんですよ。」
その頃百合子は殴られていた。沢田は平然としている。
「悲鳴あげんなよ。近所にきこえんだろ!」
「今悲鳴が聞こえたような・・」
その時沢田の家から怪しい雰囲気の男が出てきた。この前の連中とはまた違った。
「怪しい男だな・・でも神崎さんと初めて会った時に矢を撃ってきたのは誰なんだろう?沢田?それとも仲間?何故僕を狙ったんだ?」
翌日福田は合宿所に行き神崎達に報告した。
「沢田の家に行ったの?一人で?」
「ええ、百合子さんの事も気になって様子を近くまで・・」
「あまり危険な事はしない方がいいよ。君はこないだの件で顔を知られているからね。」
「近隣の人が教えてくれたんですが、沢田の家からは時々大声があがるそうです
あと怪しい男が来てました。」
「えっ怪しい?どんな?」
「何ていうか。表の世界じゃない感じの人で。」
「一刻も早く百合子を助けないと。」
「じゃあまた見に行ってきます。」
「それは危険だよ!それに怪しい人物と思われるかもしれない。」
「これからは神崎さんたちと沢田に立ち向かおうと思って。ところであいつの仲間懐から何か出してましたよ。まさか拳銃?」
あまり怖がらない福田に神崎はあきれた。
「君結構無茶やるね」
福田は夜遅く帰宅した。すると柏田とばったりあった。
「ああ、福田さん、仕事お互い大変ですね。」
「ええ、柏田さんは大企業に勤めてらっしゃるから充実してるんじゃないですか。」
「ええ、確かに夜遅くてきついのですが大事なプロジェクトの一員になりまして。」
「そうなんですか。が、頑張ってください。」
柏崎と離れて福田は思った。
「俺と違ってお人よしじゃないけどでも悪い人じゃないし優秀だし、すごいな。」
後日の夜また福田は沢田の家の近くにきて怪しい動きがないか探った。しかし近所の住民は気づき、怪しい目で福田を見始めていた。しかしそれに気づかない福田の後ろから声が聞こえた。
「あなた、何をしてるんですか?」
福田はぎょっとした。みると刑事らしき40代の男が立っていた。福田は必死に取り繕った。
「あ、あの実はあそこの家に住んでいる奥さんの友人が、悲鳴が連日聞こえているから様子を見て来てくれと頼まれまして・・」
少し嘘が混じった弁解だった。しかし本筋は真実であることが刑事には伝わったようだ。
「もしかすると沢田さんのお宅ですか?」
「はいそうです。」
「うーん、あそこはずっとそういう通報が続いてるんですよ。」
警官が来ていた。福田は近隣住民に聞いた。
「どういう事なんですか。」
「多分通報があったんだろう。いつも大声聞こえたからね。」
「じゃあ沢田もこれで終わりかな。」
沢田の家では警官との押し問答が続いていた。
「本当の事を聞かせて下さい。」
「いえ、内は夫婦円満ですと。」
百合子が笑顔で取り繕い、沢田は嘘の様にさわやかな顔をしていた。やがて刑事は出てきた。
「証拠がない。」
「どうしますか。」
「まだ捜査を続けよう。別の方面からもだ。」
パンと音が響き百合子は倒れた。
「昔の男の元へいった、
下衆な女め。」
皿をなげたがふせがれた。さらに百合子は殴られた。
「神崎の子を産んだのか!」
「産んでません!」
「産んだだろ!」
「出て行きます!」
「百合子さん」
その時、近くにいた福田が百合子の悲鳴をきいて駆けつけてきた。
思わず福田は飛び出し、沢田の家の扉を叩いてしまった。
「何だ?」
沢田が気づいてドアを開け、外を見回すと警官が機転を利かせた事を言った。
「酔っぱらいが出て、いま注意したところです。」
「福田さん・・」
「すみません。沢田の様子を探るために近くに来てたんですが、大丈夫ですか?」
「あたし、あたし・・」
「くそっ!もう許せない!」
「待って!沢田と戦ったら、貴方はただではすみません!」
「しかし!」
「私は戻ります。」
「えっでも。」
「女一人で泊まれる場所もお金もそんなにないでしょう。」
「すみません。何の力にもなれずに。」
昨日あった事を福田は洋子に話した。
「えっ、また沢田の家に?」
「昨日は家にはいりそうになって警官にとめられたんだ。それより百合子さんが。」
「ひょっとしたら百合子さんのため?」
嫉妬では全くなく、からかうように洋子はいった。
「ちがうよ。ただ友人として。」
「ふーん。」
その言い方には嫉妬はない、からかった調子しかない。
「本当だって。百合子さんは神崎さんのことが。」
「珍しく怒ってるわね」
洋子のニヤニヤが激しくなった。
「おれは、みんなにお人好しって言われるけど何がわかるんだ。気にしてるんだ。」
その日業務後に洋子は医者に行った。今度は慶団公園の近くではない。
「初診の方、岡田さんですね。今日はどんな。」
「実は、同行してないんですが、会社の同僚でおかしな行動をとる人がいて、今度見てもらいたいんです。」
「例えばどんな?」
「明らかに嘘である事を信じたり、親しくない人にやたら優しくして深入りしたり、どうしていいかわからないんです。」
「今度1度精神テストの必要がありそうですな。できればご同行願いたいのですが。」
翌日福田は課長に呼ばれ注意をうけていた。
「最近は規定時にばかり帰るじゃないか。君は今若く大事な時なんだ。もっと精力的に仕事に取り組め。」
「は、はい実は」
「なんだ、悩みがあるのか。」
「悩みを抱えた友人がいまして。」
「また相談にのるか。」
「わかりました。今日は残業します。」
福田は謝った。その時別の社員が用を伝えに来た。
「あっ、課長、苦情受付係からの報告ですが、沢田という客がかなり理不尽なクレームを上げてきまして、対応に悩んでいます。なんでも広告と内容がことなるとか」
「沢田か、同一人物じゃないよな。」
「わかった、すぐいく。」
「課長に怒られてる時に、沢田って名前を思い出した。別人だったら失礼だけど。
「福田くんちょっと」
「用ってまた、沢田のところ?私が代わりにいくわ。」
その夜、洋子は沢田の家の近くに様子を伺いに来ていた。福田が張り込む場所と同じくらいの距離だった。その時後ろから声が聞こえた。
「おい!」
振り返ると柄の悪い男が立っていた。沢田の仲間と思われる。
「あ・・」
洋子は怯えた。
「最近、このあたりにへんなやつがいるって聞いたんだ。あんた、ここでなにしてた?」
その瞬間、洋子の手を引っ張りはしりだした人物がいた。問いつめた男と洋子はおどろいた。洋子は
「こっちだ、はやく!」
という男に引っ張られ数百メートル走り、角を曲がって息をついた。
「はあはあ、もう大丈夫でしょう。」
「あの。」
「僕ですか、僕は神埼の友人の染谷と言います。福田さんから連絡をうけた神崎からあなたを守るようにと。」
「はじめまして、染谷さんは合宿所にはいかれてるんですか?」
「いえ、いっていません。神崎は僕を呼びたくないんでしょう。恋敵だったから。百合子さんをめぐって。」
「神崎さんたちとはこれからは。」
「実は会わないともいってられなくなってるんです。なにせ沢田のせいで百合子さんが大変な事になっている。だからみなで考え力を合わせなければいけない時期なんです。」
福田は遅れて来て染谷に挨拶した。
「ボウガンで撃たれたという事件ですが、あのとき神崎さんと話しててすっかり警察に届け出るのを忘れてたんだ。あれ沢田が犯人じゃないですよ。だって沢田は僕には何もしなかった。」
洋子は
「そういえば!じゃあ誰?怖い。」
「警察に連絡しようかな。」