慶団公園で待つもの
「もうすぐ十四時か。」
もちろん、日本人の九十七%が洋子が来なければ行かない方を選ぶだろう。恐る恐る改札を出た。
「おまたせ」
5分ほど待つとオフィスでの姿とはまた違った映える服装に身を包んだ洋子が笑顔で現れた。デートの待ち合わせと言っても違和感がない。しかし福田は笑顔であってもどこかそっけなかった。
「来てくれてありがとう。じゃあ、公園に行こう。」
感じ取れる無愛想さを洋子は感じ取っていた。歩き出すも今一つ会話ははずまなかった。
やがて慶団公園についた。自然と人工物が入り混じる有名な憩いの場所である。しかし憩いと行っても福田は不安を隠せなかった。
大きな噴水が中心にあった。ここが指定の待ち合わせ場所である。福田は洋子に言った。
「もしもの事があるから、待ち合わせ場所へは僕1人で行く。少し後ろへいてくれ。」
恐る恐るまえにでた。そこへ後ろから何かが飛んできた。と同時に礼二をかばいたおれた青年がいた。彼はベレー帽とサングラスをかぶり、ベージュのコートをきていた。一発目のボウガンから発射されたと思われた矢は石壁に命中し、2発目は青年が福田をかばい外したものの石壁の一発目の近くに刺さった。福田はあわてた。
「あ、あわわ、矢が飛んできた!いったい何がどうなって!」
青年は怪しまれないためにか、ベレー帽とサングラスを取った。
「大丈夫ですか?」
「いえ?」
「あ、あわわ僕は一体、貴方は?」
「どうしたの一体?」
洋子が心配し走ってきた。青年はサングラスを外すと、いかにも生徒会長か運動部のリーダーのようなさわやかでたくましい、理知やクールさも感じさせる外見であった。
「大丈夫ですか?お怪我は?」
「あの僕狙われてたんですか。」
「確かに矢が来ました。」
「あなたが助けてくれたんですか。もしかして・・この手紙を書いた方ですか?
あなたが差出人?」
「手紙ってもしかしてこれ?」
その青年が差し出した手紙には福田の所に来た手紙と同じような文体の手紙だった。
「もうすぐ正しい人が助けに来てくれます。四月十二日に慶団公園の噴水に来てください。」
「あっ、僕と同じような手紙。差出人はあなたじゃなかったんですか。」
「いえ僕じゃありません。誰かが僕たちを会わせようとした陰謀?」
ベレー帽の青年は困惑していた。
「わたしが困っている事を知ってる人は何人かいますが、あなたに出したのは僕じゃないです。」
「僕は、誰かが助けを求めてると思って来たんです。」
「こんなおかしな手紙を信じて来たんですか?」
「よければお話に付き合います。手紙の検証もしたいし。」
「いいんですか?」
「あなたは命の恩人ですし。」
二人は喫茶店へと移動した。青年はあいさつした。
「僕は神崎、神崎徹と言います。」
「僕は福田礼二と言います。」
「この手紙がポストに差出人不明で入ってたんですか・・」
「あなたの所にも同様のものが・・」
「字体を見比べると同じですね。」
「で最後の所にいついつに助けてくれる人が来ます。ってまるで確定したように書いてありますよ。」
「僕が来ると知っていた人物?」
「うーん・・何か嫌な予感がします。あなたはやはり帰られた方がいいですよ。」
「そ、そうですね。せっかく来ましたけど。」
「この手紙全部を信じたんですか?」
「はい・・」
「そ、そうですか。もしかして私と関係ある悪い人物の仕業かもしれないし。」
「あのせっかくここまできたんで、何か困ってる事を少しだけ聞かせてもらえませんか。」
「うーん実は今私はある女性をかくまっているんです。」
「女性をかくまってる?」
洋子が聞くと神崎は続けた。
「僕の昔の恋人が別れた後、別の男に脅されて結婚したんです。ところが連日その男から暴力を受け、私に相談してきたんです。」
「あなたの元恋人がDVに・・」
「その男は僕達と同じ大学の同級生でした。でも素行が悪く三年で退学になりました。ところがその後復学し、僕らの仲を引き裂き奪ったのです。そいつと子分の暴力で。元々、ひどい男だったのですが、結婚してからさらにひどくなって。私が連絡を受けてかくまう事にしたんです。」
「離婚相談所とかは?」
「それが、その男の父親がすごい力をもっていまして。警察ですら手を出しにくいんです。実はこの近くの仮住まいに。」
「あっこの近くに政教学園の旧校舎ありますよね。」
「おお、お詳しい、実は今はその一部を使わせてもらってるんです。」
そこは取り壊された部室を立て直した集合住宅の様な場所だった。友人らしき数名が出迎えた。
「神崎?どうした。その人は?」
「ああ、今説明するよ。」
木造のいかにもな運動部合宿所で無駄な装飾がなかった。ただ1つ「魂のオール」と書かれたオールが壁に貼ってあった。
「どうしたの?徹さん。」
部屋の奥から美しい女性が出てきた。楚々として大人しい髪の長い美人であった。
「ああ百合子。」
「あのこの人たちは?」
「あ、ああ、実は、そのさっき偶然に・・」
神崎は説明に戸惑い、福田が付け加えた。
「あ、あの実は、さっき事故に合いそうになりまして、神崎さんに助けてもらったんです!そ、それでお礼をしたく!」
「まあ!そうだったんですか。」
百合子は納得したようだった。
「まあ矢が?」
「はい、公園を歩いていたら急に飛んできたんです。それを神崎さんが助けてくれて、なんとお礼を言ったらいいか。」
「この人昔から困っている人を助ける性分だったんです。今は私も。」
洋子は言った。
「あの実は神崎さんから少しだけお話を・・」
「洋子さん・・」
福田は止めようとしたが遅く、場が少し止まった。
「取り壊す予定だったボート部の部室を貸してもらい百合子をかくまう仮設住宅にしてるんです。今はここに隠れているしかないんです。沢田は恐らく百合子の友人関係などを洗って行き先を調べているでしょう。彼女は僕らボート部の同期で相談を受けましてでもここもいつ見つかるかわからない。でこいつは阿部、でこいつが橋本。」
「俺たちはボート部で彼女は皆のあこがれでした。神崎と百合子さんは
エースとマネージャーの立場で段々と仲をふかめていきました。ところがいやがる百合子と強引に付き合おうとした沢田という男がいるんです。そのご退学した沢田は彼女をおどしてきたのです。
「何とかならないんですか?」
「僕たちは沢田の権力に何もできない、でも僕は百合子をわたさない。」
「僕も協力します。」
「色々周囲を調べてるらしい。早百合の友人関係とかも。だから同じ大学の人間は疑われる。
神崎は沢田との過去を思い出した。
「やめろ、百合子にちかずくな。」
「俺と決闘するきか?」
「3人かかりだと?あいかわらず卑劣だな。」
「結婚を進められたのはかれの家とうちの父との関係で仕事をなくすぞとおどされ、私だけ逃げるわけに行かなかったんです。」
「だとしたらいつまでもここにいたらまずい。ボート部ならここだからな。」
福田が口を挟んだ。
「その悪い人同じ部だったんですか。」
「ええ、神崎とエースの座を争ってました。」
しかし神崎は嫌な顔をした。
「それは昔の話さ。一旦壊れだしてからのあいつは見る影もなかった。」
福田がまた口を挟んだ。
「神崎さん、ここで暮らしてるって昼間はどうしてるんですか」
「会社はやめ夜のバイトで食いつないでるんです。」
神崎は新聞を見た。
「こいつだ。」
「池内昌明」
「この男は沢田の父親の友人だ。こいつが、沢田の悪事をいくつも揉み消してるらしい。」
「具体的にどんな?」
「変なやつらとへんなものを取り引きしてるらしい。元々まじめに働かないやつだからな。警察もうごいてはいても、中々証拠をつかめないらしい。」
「何か情報がわかればいいんだがつかむ方法がない。」
「沢田が近くに来てる可能性がある。実はこの福田さんと言う人が矢で狙われたんだ。」
「何だって?」
その時ムードを打ち消すように後ろから入ってきた男がいた。
「よう。」
それは沢田と柄の悪い子分だった。
「探したぜえ。久しぶりだな神崎、百合子はどこだ?あいつはおれの女だ。いつからお前は人の女寝とるようになった。」
百合子は神崎の後ろに隠れた。
「おい何かくれてんだ。」
「百合子、大丈夫だ。」
神崎は努めて百合子を安心させようとした。
「あ?お前が略奪したんだろ。痛い目に会いてえのか。この部室も破壊してやる!」
沢田の仲間は臨戦体制になった。福田はおろおろした。
沢田は荒れた。
「お前の仲間も相手するならただじゃおかねえ。」
「ちょっと待て!相手は俺だ!」
しかし橋本は
「いいぜ、おれもやる!」
「福田さんは逃げるんだ、岡田さんも。」
福田は逃げようとしたがためらった。
「どうしたんだ!早く!」
「僕もやります!」
「そんな!何を言ってるんですか!あなたは巻き込めない!」
ここまでお読み頂きありがとうございました。次アップするか、少し迷っておりますが、このあと福田は沢田の家に張り込んだり百合子が逃げるのを手伝います。また、神崎は沢田と戦いますが矢を撃ってはいず別の人物で警察もかかわります。それ以前になんで主人公こんな他人の問題に首つっこむのかおかしいのは理解しています。お人好しが非現実な話でだんだん洋子に頭おかしい扱いされます。




