プロローグ
大規模VRMMORPG『ファンタジア』。
バーチャルリアリティーがゲームの常識となったこの時代に君臨する超人気ネットゲームである。
ファンタジアの伝説はVR技術が生まれて間もない20XX年から始まった。
思ったように動かない、没入感に欠ける等、様々な課題が散見され、期待に胸を膨らませたプレイヤーをことごとくガッカリさせてきた他社ゲー。
そこに颯爽と登場したのが『ファンタジア』である。
滑らかな動作、緻密な世界観、そよ風まで感じられるようなリアリティ。そして勿論、美しいグラフィック。
サービス開始前から話題騒然の大盛り上がりで制作会社はにっこり笑顔が止まらなかった。
でも、二次元に強いオタク達は思った。
『謎技術とか某小説投稿サイト展開杉ワロタ。ドジッ子女神様ドコー?』と。
しかし彼らの不安と欲望は杞憂に終わる。
何せサービス開始から十数年経った現在でもファンタジアで『怪しい』事件など起きた試しがないのだから。
社員が制作会社の金を横領したことはあったが、そのぐらいである。
『ああ、これは日本の変態技術によるものなのだ』と肩透かし喰らった皆が納得した。
でもやっぱり、そうは問屋が卸さなかった。
20YY年、日本人の大量失踪事件が起こる。
年齢、性別、職業、時間、場所、全てバラバラ。
ただ1つ、共通していたのは…。
『ファンタジア』のプレイヤーであること、この一点のみである。