見ゆる未来は、絶望か希望か……。
その勇者は何を見るのだろうか。
「グルォォオオオオ!」
尾、振るえば忽ちに破ぜり散る。
声、発すれば忽ちに崩れ落ちる。
瞳、睨めば忽ちに竦み上がる。
此、則ち恐怖であると。
「あ、ぁあ……ぁぁぁぁあああああああ……!」
逆立っている髪の毛が、勇者が表すその心。
あらゆるモノに反発する、その心は今。
ただ一匹の竜によって、砕け散る。
「ななな、んなんだよ、何なんだよぉぉおお!」
逃げる、逃げれない。
勇者が勇者たるモノは、恐れぬ心。
恐怖に立ち向かう勇気と希望。
支えてくれる、仲間たち。
「……」
物言わぬ、ただの置物になってしまった……仲間。
恐怖に折れた、悲哀と絶望に染まりし心。
勇者が勇者でなくなるときは、呆気ないものだ。
「ゴオオオォォォオオアアアアアアア!」
「ヒィッ……!!」
竜は、ただ、護りたい。
この勇者という存在が、我が主を貶めるというのなら。
竜は……勇者を喰らう。
「ぁぁぁああああああ!」
「ヤメロ!」
主の声だ。竜は戸惑う。
己が叱咤されるかも、嫌だ嫌だ嫌だ。
「ヨクヤッテクレタ……ガ、ヤリスギダ」
嬉しくなって、でも、落ち込んで。
項垂れた頭を、優しく撫でてくれて……。
その隣にいる女にが目に写る。
竜は歓喜する。主がようやく、幸せになれると。
人の魂に、魔物の身にて強く優しい我が主。
そして……竜は見る、視る。
我が主が悲しむ姿を……。
奮い起て。今こそ咆哮を!
竜は見えてしまった、この眼を呪う。
故に、力を振るおう。我が主が、いや。
我が主達が、我々が幸せになるために!
祈る暇があるのならば、我は雄叫びをあげよう!
明日を見れる眼があるならば、明日を変える力をつけよう!
さすれば、平穏が訪れる……平穏を掴みとれる!
「トモニ、キテクレルカ?」
我は、雄叫びを……慟哭を……。