過去は未来へ、未来とは現在(今)
お前は、何だ。
「(私は、戦帝アスラディア・ハストールが子。トールディン・ハストールだ!)」
違う。お前は、醜き魔物。
「(ダマレ!ワタシヲオトシメルカ、ブレイモノ!)」
違う。事実を述べるのみ。
「(……ワタシハ……ワタシハ……)」
悔しいか、憎いか。
「(……)」
悔しいならば、研鑽しろ。
憎いのなれば、復讐しろ。
「(ムダダ……。タトエ、デキテモ……ムイミダ)」
…………。
「(ヒトツ。トオウ、ミシラヌモノヨ。ワタシハ、オマエハ……ナンダ)」
お前は、醜き魔物。強き力を持ち、優しき心を持つ、美しきもの。
私は、見届けるもの。この世界を、見届けるもの。
「(ナレバ、ワタシハシタイヨウニシヨウ。ワタシハ、ミニクク、イヤシイ、マモノナノダカラ……)」
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「ユメカ……マタ、アノ」
呟いて、見回して。
見飽きた洞窟、愛しき少女。
見慣れた身体に、見慣れぬ水晶。
「コレハ……」
輝き耀き、見つけた勇者。
優しく美し、聖女をみつけた勇者。
でもでも貴方は醜い魔物。
勇者は激怒、貴方はいったいどうするの?
聖女は貴方を慕って思ってる。
「セイレイスイショウ……ヤツノ、カ」
そうだねそうだね。
私はいつでも貴方の味方。
「フッ……」
どうするどうする?
「マズハ、リリンヲオコスカ」
そうだね。でもでも、ほんとにどうするの?
勇者がくるよ。二代目二代目。
魔王様に報告するの?
「イマハ、シンコンリョコウ……トヤラニ、デカケテイル」
あ、そう。あっ。
「……んぅ。あ……」
「……ンヌ。オギタガ?ショウジョヨ」
「はい。あの、」
何で、何で。なにもしないの?って聞いてるよ!
それはね、それはね。トールディンが大切にしてるからだよ!
貴女は希望。最後の希望。トールディンを元に戻す、ね!
「えっ……ト、トールディン様?」
「……オイ」
良いじゃん良いじゃん、減りやしねぇ。
彼女はずっと、待ってたよ?
貴方が来るのを待ってたよ?
魔物だからと、なんじゃいなんじゃい。
彼女が好きなら、打ち明けな。
魔物になった貴方は何だい?
貴方は貴方は貴方だよ。
戦帝アスラディアが子、英雄のトールディン。
雷神ガルストルの末裔、英雄のトールディン。
弱き者を救うため、魔馬に乗りては現れる。
貴方はそうさ。誰もが認める、英雄さ。
「……」
「……あの時、【聖女】様……アナスタシア様が言っていたのは……」
「ワタシノコトダロウナ」
「で、では!王国が、教会が!」
「ソウダナ。ダガ、キミハカンケイナイ」
「あります!」
「ッ……」
「あの時、泣いてた貴方を助けることができなかった……」
「……モウ、イインダ」
「よく、ありませんよ……っ」
……。来る。
「……ヤツカ?」
違う。違う。違う。
強い、弱い、弱い……。
勇者。人の希望、魔物の絶望。
「……」
選択だよ。
選びな、選びな。
置いて逃げるか。共に逃げるか。
さぁ、選べ。