表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

剣に祈りを

掲載日:2026/08/10

魔物討伐に志願した彼を待ち続けました。 ハッピーエンドです

 私は小さな教会に捨てられていました。

 産まれて間も無い赤ちゃんで、誰が置き去りにしたのかは分かりません。

 神父様に育てて頂きました。毎日神様に感謝をし、皆が健康で、幸せでいられる様にと祈りました。

 神父様は教会で子供達に勉強を教えています。文字を読み、書く事、計算方法、生活の仕方。どうしたら生きて行けるか、困った時はどうしたら良いか教えてくれました。

 

 まだ子供の私達は、教会で出会い、年相応に恋をしました。私にとって彼は、誰よりも素敵で、彼も私にプロポーズをする位愛してくれました。

 裕福では無くとも、幸せだったのに、、、。


 例年より魔物の数が増え、若い男達が召集されて行きます。

 いつか彼にも召集が掛かるでしょう、、、。


 討伐に参加すれば、幾許いくばくかのお金が手に入ります。彼は、私の為に自ら討伐に参加すると言いました。

 

 本当は行って欲しく無い。


 結婚の為に二人でお金を貯めていて、後半年で目標の金額が貯まる予定でした。


 でも、彼は志願してしまった、、、。お金を手にして、嬉しそうな顔をする彼を責める事は出来ません。

 私は、貯めたお金で剣を買い、鍛冶屋に持って行きました。一番安い剣です。

 それでも、彼にはその剣を持って行って欲しかった。その剣を私と思って、いつも身に着けていて欲しかった。


 毎日のお祈りは、彼の事ばかりになりました。

 

 彼が怪我をしない様に、一日も早く、無事に帰って来られる様に、、、。毎日、毎晩お祈りします。


 彼が出発する前日、私は心を込めて料理を作りました。いつ帰って来るか分かりません。一週間か、一ヶ月か、一年か、、、。

「必ず生きて帰るから」

そう言って、教会で二人だけの結婚式をしたのです。

 

 その晩、初めて私達は結ばれ、彼は私のお腹にそっと触れました。温かい手、、、。


 私は泣きません。彼が私達の為に選んだ道だから、、、。


 翌朝、にっこり笑って見送ります。

「必ず帰って来てね。いつまでも待っているから」

そう言って最後のキスをしました。


 街の男達と、馬車に乗り、城に向かう彼。


 どうか、どうか無事に帰って来て下さい。



*****



 あの日、私は身籠りました。

 毎朝、毎晩のお祈りは欠かしません。いつも彼の無事を祈り、お腹の子供がすくすく育つ様に祈ります。

 私には祈る事しか出来ないけれど、それでも充分幸せだったのです。


 魔物討伐が終わり、王都では凱旋パレードがありました。彼はまだ帰って来ません。

 魔物討伐が終わったと言う事ならば、彼にもう危険は無い、、、そう思うと、私はホッとするのです。

 後は、この子と彼の帰りを待ちましょう。



*****



 魔物討伐で、多くの若者が犠牲になりました。無事に帰って来たのは、彼と聖女様、騎士団の数名だったそうです。

 彼は聖女様を守り、多くの功績を上げ、沢山の褒賞を受け取るとか、、、。


 英雄になり、凱旋パレードが開かれ、彼は聖女様と一緒に帰って来ました。


 そして、、、。一枚の手紙を私に見せたのです。



*****



 私は手紙を読んでも、一瞬理解が出来ませんでした。

 そこには英雄となった彼の、褒賞が書かれています。そして最後の一文だけが、やけに目に止まりました。


 どうやら聖女様と彼が婚姻する様なのです。


 私は彼を見ました。

 聖女様と並ぶ彼は、まっすぐ私を見たのです。

 聖女様も、彼の横に静かに立っていました。


 私は何を言えば良いのか、分かりません。


「ママ、、、?」


 後ろで息子の声がしました。

 急いで身体で息子を隠します。

「ごめんね。お客様だから、お部屋で待っていてね」

息子は「うん」と頷くと、静かにベッドに入りました。


 私が彼に向き合うと

「結婚したのか?」

と聞いて来たのです。、、、笑っちゃう、、、。

「結婚しました」

声が震えそうになる、、、。

「待っていると言ったのに、、、」

「待っていました」

「君が幸せなら、、、私が気に掛ける事は何も無いだろう」

そう言って手紙を回収すると、彼は聖女様と出て行きました。


 私は、深い溜息をいてました。



**********



 俺は、必ずあの家に帰ると誓った。彼女が待つ家に、、、。

 剣など振った事は無い。子供の頃、棒切れで遊んだ位だ。

 召集後、城で少し訓練があった。剣を持たない男達は、俺より貧相な剣を配られた。闘い方も分からない俺達は、人数で勝負させられた。

 仲間は日に日に減って行く。騎士達は聖女を守り、俺達は盾の様な存在だった。


 聖女は第四王女、、、騎士達も彼女に何かあってはいけないと、必死に守る。


 そんな中でも俺はよく動いた方だ。身体が軽く、剣捌きも滑らかだった。運動神経は悪く無いと思っていたが、まさかこんなに動けるとは思わなかった。いつも神経を尖らせていたからかも知れない。それでも不思議だった。


 完全に討伐するのに、3年も掛かってしまった。

 常に深い森に入っている訳では無い。城に戻り、身体を休め、英気を養い、再び討伐に向かう。

 最初の頃は、一日も早く彼女の元に帰りたかったのに、次第にそんな感情は薄れて行った。

 城の中に入れば、生活圏が違えども、聖女と同じ時間を過ごす事もある。彼女は俺の側によく来ていた。

 第四王女としての悩みや、聖女としての悩みを俺に話す。美しい女性が側にいるのは、悪い気がしなかった。


 だからと言って、深い仲になる事も無い。彼女は王族で、私はただの村民だから、、、。

 

 長い討伐が終わり、王都で凱旋パレードが行われた。褒賞を貰い、彼女の元に帰れる事になった。

 王との謁見で、褒賞を賜り、聖女との婚姻を勧められた、、、。


 彼女は今も俺を待っているだろうか、、、。三年も経っている。もしかしたら、、、



**********



 わたくしはケヴィン様と結婚したかった。

 聖女と言われ、討伐に同行したけれど、わたくしの力は精々怪我を治す位。王女としても中途半端な四番目、、、。

 彼は強くて優しかった、、、。


 本当は、騎士の一人が好きだったのだけれど、かたは、わたくしの事等見てくれないの。初めはかたに振り向いて頂きたくて、ケヴィン様の側にいたのだけれど、いつしかケヴィン様の優しさに、心地良くなったわ。


 もし、彼と結婚出来るなら、英雄と第四王女の恋物語になるの。それもステキだと思わない?。

 お父様にケヴィン様との結婚を打診しました。彼の功績を讃えたお父様は、わたくしとの婚姻の事も加えて下さいました。


 本当は騎士様と結ばれたかったのですが、、、。



**********



 彼は帰って来なかったのです。そう思う事にしました。

 息子の寝顔を眺めながら、もう、夢を見るのを止めると誓います。

 私は待つのに疲れてしまったのかも知れません。



 この村を出よう、、、。いつか彼はこの村に帰って来るでしょう。彼の母親は、この子があの人の子供だと知っているかも知れません、、、。もし、この子まで取り上げられてしまったら?


 私に、何が残るのかしら、、、。


 この子だけは、誰にも譲れない、、、。


 私は家の中に隠してあった、全てのお金を集め、明日の早朝には此処ここを出ようと決めました。


 荷馬車に出来るだけの荷物を乗せて、此処ここにはもう帰る事は無いと、心に誓いました。小さな家。彼がいないから、充分だった。彼が無事に帰って来たら、私はもう少し広い家に移ろうと考えていたのに、、、、。


 息子の寝顔に彼の面影を見つける。

 ごめんね、、、お父さんに会えなかったね、、、。

 いつも、いつも「ぼくのおとうさんは?」と聞いて来ました。その度に

「王様のお仕事を手伝っているのよ。きっともうすぐ帰って来るわ」

と話していたのに、、、。



**********



 聖女は数名の騎士と、侍女と共に城に帰って行った。

 俺は久しぶりに実家に帰る。父も母も喜んで迎えてくれた。

「あなたは聖女様と結婚をするのでしょう?」

母に聞かれて、俺は即答出来なかった。

「あなたが数年前、結婚すると連れて来た女より、聖女様と結婚する方が良いわ。あの子は捨てられた子だったし、結婚もしないで子供を産む様な女だもの」


 結婚もしないで子供を産んだ?

 何故、結婚しないんだ、、、?

「母さん、その子はいつ産まれたの?」

「あなたが召集された翌年の夏前かしら。今、2歳位だと思うわ」


 、、、。俺の子供だろうか、、、。


 でも、結婚したと言っていた、、、。待て、、、俺達は二人きりで結婚式をしたじゃないか、、、。正式では無いけど、、、あの日、、、あの夜、、、。


 彼女は「待っていました」と確かに言った。

 あの子供は、俺の子では無いのか?


 確かめなければ、、、。


 翌朝あす、確認しに行こう、、、。



**********



 早朝、私は息子を起こして、荷馬車に乗せる。彼は寝惚けている様で、荷車に布団を敷いて寝かせました。

 晴れてて良かった、、、。

 私は、この村から出来るだけ遠くに逃げました。



**********



 俺が朝、家に戻ると、何だか嫌な予感がした。

 扉を叩く。返事は無い。

 窓にはカーテンがしてあった。

 裏に回ると、荷馬車が無い。貧しくて売ってしまったのか?

 よく見ると、餌が散らばっている。そんなに乾燥していない、、、さっきまで馬はいたんだ、、、。

 昨日、確認しておけば良かった。そう思いながら、ドアの取っ手を回す。鍵が開いていた。


 カチャリ、、、


 扉を開けて中を覗くと、何だか変だった。家具は有るのに、違和感がある、、、。

 そっと中に入った。

「フィア、、、?」


 久しぶりに彼女の名前を呼んだ、、、心が、あの時に戻る。


 二人で住み始めたこの家。家具しか無い家だった。皿もコップも少しずつ持ち寄り、新しい物は何も無かった。

 貧しくて、でも幸せで、俺はもっと金が欲しくて、魔物討伐に志願した。彼女に必ず帰ると告げて、奥の部屋で彼女を抱いた、、、。


 彼女がプレゼントしてくれた剣、、、。凱旋パレードの時、見窄らしい剣でパレードに出るなと言われた。俺は新しい剣を貰い、彼女がくれた剣はクローゼットの奥にしまった、、、。



 彼女はどこに、、、?

 このまま、一生会えなくなるのか?


 ダメだ、、、。


 俺は急いで部屋を出る。

 俺が彼女なら、城下の方へ逃げる。道は一本。急いで馬に跨り、彼女を探す。



 待て、、、行かないでくれ、、、。確認したい事があるんだ。あの子は誰の子だ?


 全力で馬を走らせる。まだ、そんなに遠くには行っていないだろう!



**********



 嘘でしょう?あの人が追い掛けて来る、、、何故?

 馬は荷車を引いている。大した荷物では無いけど、全力で走らせたら、息子が落ちてしまうかも!


 嫌だ、来ないで!私達の事は放っておいて!


「フィアーッ!!」


 めて、名前を呼ばないで!!


「フィアーッ!!」


 もうダメだ、、、逃げても無駄だと諦めた。

 これ以上馬を走らせてはいけない。息子もいつのまにか目を覚まし、泣いている。


 彼が追い付き、私の横に馬を寄せ、降りました。

 私は息子を抱き抱えます。

「フィア、、、その子は、俺と君の子なのか?」

「違います、、、」

「顔を見せて」

「どうぞ、、、。貴方と同じ髪色と瞳の色の人は沢山います」

「いつ、産まれたんだ。あの夜に出来たんじゃ無いのか?」


 涙が出そうだった、、、


「違います、、、」


 この子の父親は優しい人だもの。私達を捨てたりしない、、、。


 涙が溢れて、彼の顔がボヤけて行く、、、。

 めて、泣かないで、、、我慢して、私、、、。


「パパ?」


 ああ、涙が溢れてしまった、、、。


「パパなの?」



*****



 息子とあの人は二人で草原を散歩しています。

 私がいつも、夢見た光景でした。

 荷馬車の後ろに座り、二人を眺めます、、、。


 ねぇ、、、貴方は聖女様と結婚するのでしょう?早く、彼女の所に戻った方が良いわ、、、。


 そう思いながら、ふと彼の剣に気が付きました。

 私が上げた剣ではありません。

 もっと立派で、英雄に相応しい剣、、、。


 もう、あの剣は使っていないのね、、、。



**********



「ぼくのパパはね!おうさまのところでおしごとしてるの!まものをぜんぶたおしたら、ママとぼくのところにかえってくるんだ!おじさんがパパなの?」

「ママは何か言っていたかい?」

「おきたらばしゃだったから。あのね、ママはパパにけんをプレゼントしたんだって!そのけんがママがあげたけん?」

「これは、王様に貰った剣だよ。頑張ったご褒美に貰ったんだ。ママから貰った剣は、おうちに大事にしまってあるよ」

「じゃあ、おじさんがパパなの?」


 私はどう返事をしたら良い分からなかった。

 フィアの気持ちを確認しないで、父親と名乗って良いのだろうか、、、。


「ママね、、、たまに、さびしくてなくよ。はやくパパにかえってきてほしいって。ぼくがなぐさめてもダメなんだ。おじさんがパパならはやくかえってきて」


 私は、荷馬車に座る彼女を眺めた。



**********



「フィア、、、」

めて、、、名前で呼ばないで、、、」

「あの子は」

「違うわ、、、。貴方は聖女様と結婚するのでしょう?そのまま、帰った方が良いわ、、、」

「もし、、、君が他の誰かと結婚していたのならそうしたけど、、、君は待っていてくれたんだろう?」

「だって、、、約束したもの、、、。貴方をずっと待っているって、、、」

「あの子の名前は?」

「ニコラ、、、」

「ニコラ、、、良い名前だ、、、」



**********



 私達は、草原で遊ぶニコラを見ていました。


「いけない!」

彼は急に立ち上がり、走り出します。


 何?どうしたの?

 私は分からず、辺りを見回しました。彼の走る方角の先、くさむらがザワザワと動き、何かがニコラに近付いています。


 狼?それとも魔物?真っ直ぐニコラを目指すモノ、他にも二箇所(くさむら)がザワザワと動いています。


 ケヴィン!お願い!


 彼の剣が抜けない。彼の身体に対して長すぎるのか、鞘から抜けなかった!



**********



 いつも使っている剣より長かった。鞘から剣が抜けず、鞘を後ろに引いて捨てた。剣が重い。

 だから、嫌だったんだ。見栄えだけ良くしてあった。装飾が邪魔で重すぎる。身体も重い。上手く出来るか?いつもと違う気がする。

 狼だった。三匹。ニコラを抱え剣を振る。


 剣が重い!



**********



 私は祈った。祈る事しか出来なかった。


 お願い!ケヴィンとニコラを助けて!

 狼が二人を攻撃しないで、森に帰って行く事を願った。

 


**********



 急に身体が軽くなる、重たかった剣が軽く降りやすい。これならニコラを守れる!


 狼は俺達を攻撃した後、敵わないと思ったのか、深い森に帰って行った。


「ママ!」

フィアを振り返ると、彼女は倒れていた。


 急いで走り寄る。

「フィア、、、」

真っ青な顔だ。

「大丈夫か?」

「少し休めば、、、」

「家に帰ろう、、、」


 俺はフィアを荷台の布団に寝かせる。馬を誘導して、ゆっくり向きを変えさせ、来た道を帰る。

 ニコラは荷台の上で遊んだり、御者席に座って手綱を操っている真似をした。



*****



「フィア、、、鑑定を受けてみないか?」

「鑑定?」

「聖女の鑑定」

「私、聖女じゃないわ、、、」


 フィアは気付いていない、さっきフィアが祈った時、彼女の身体が微かに光ったんだ。聖女が怪我を治す時も、自ら光を発する。何だか似ていた。


「ニコラ、王都に行きたく無い?」

「おうと?」

「美味しいモノが沢山あるよ」

「行きたい!」

「ケヴィン、、、」

「良いじゃ無いか。どうせ、旅に出る予定だっただろ?行き先を変えるだけだよ」

「、、、」



**********



 私達は、ケヴィンと共に王都に向かいました。

 ニコラはケヴィンにばかり懐き、常に一緒にいたがります。彼の馬に乗り、私は後ろを着いて行きます。

 ニコラの反応が嬉しいのでしょうか。二人で沢山話しをしています。


 ケヴィンは私達を教会に連れて行きました。城の横に立つ教会は、この国で一番大きな教会です。私とニコラは、教会の前で立ち尽くしました。

 余りにも美しく、荘厳で威厳があり、身分の低い者を寄せ付けない雰囲気です。

 私の様な者は、入ってはいけない、、、そう思わせられてしまう、、、。怖い、、、。


「フィア、、、大丈夫、俺がいるから」

そう言うと、彼は大きな門の横に立つ男性と話しを始めました。

 彼はケヴィンに

「どうぞ」

と声を掛け、教会の中に入って行きました。



*****



 聖女の鑑定は、教会の中にある一室で行われる様です。小さな部屋にある、鑑定に使われる石に触れるだけ。聖女が触れると色が変わるそうです。


 神父様とケヴィンが二人で話しています。何を話しているのかは、聞こえません。

 神父様がチラリと此方こちらを見ました。

 

「フィア、此処ここへ」

ケヴィンに呼ばれて二人の側に行きます。ニコラは私の服を掴み、不安そうでした。

「この石に触れてごらん」

小さな切株の様に切られた石。表面が真っ直ぐ平らになっていて、乳白色でツルツルと美しい、、、。

「綺麗、、、」

指先でそっと触れると

てのひら全体で触れて下さい」

神父様の優しい声に、フッと指を離してしまいました。

 触れた場所がピンク色に変わっています。

 私は言われた通り、掌で触れました。

「祈りを、、、」


 祈り、、、


 ケヴィンとニコラと三人で暮らしたい。もう二度と離れ離れになりたく無い。私の願いは家族で一緒に過ごす事、、、。


「わあ、、、」


 ニコラの声が聞こえました。


 私は静かに目を開きます。


「本物ですね、、、」

と神父様が笑っています。

「ママ、、、?」

ニコラの不安そうな顔。私も聖女と言われて、どうしたら良いのか分かりません。

 ケヴィンに

「神父様と話しをしてくるから、少し待っていて」

と言われました。

 私とニコラは教会の中で待ちます。

 広い広い部屋。木で出来た五人掛けの、重厚な黒い椅子。沢山並んでいます。ステンドグラスが並び、私の育った教会とは違いました。


 でも、十字架を前にすると少し安心するのです。


 手を合わせ、お祈りを捧げます。


 皆が幸せでいられますように、、、。



 コトリと音がして目を開くと、ケヴィンが立っています。

「私の荷物を取りに行こう」

ニコラが彼と手を繋ぎます。教会の裏門が城と繋がっていて、私達は彼の部屋へ行きました。

 

 英雄なのに、訓練場の横に立つ、寮の一部屋に住んでいました。彼らしく感じて、ホッとします。


「褒賞の品をまだ受け取っていないんだ、今日の夜、王様と謁見が出来る様に頼んだから、暫くこの部屋で待ってて」

彼はそう言うと、クローゼットの中を片付け始めました。

 私が贈った剣が出て来ます。シーツに包んでありました。

「ママのけん?!みたいみたい!」

ニコラがはしゃぎます。ケヴィンは優しく笑い、シーツを剥がすと、そっとニコラに見せました。

 こんなに古かったかしら、、、そう思いながら見つめます。彼がニコラに触らせました。

 ベッドにもう一本の剣と並べると、その違いは歴然でした。装飾が多くて、無駄に長い剣と、ただの剣。

 ニコラは美しい剣を選びます。でも、彼には重くて長すぎました。

 ケヴィンは古い剣に触れると

「やっぱり、此方こちらの剣が俺にはしっくり来るな」

と笑います。



**********



 フィアとニコラが俺のベッドで寝ている。

 こんな幸せな事があるだろうか、、、。

 三年間の間に、彼女は母になっていた。顔も、身体も大人の女性になっている。

 

 自分で選んだ魔物討伐だった。想像以上の褒賞を貰った。

 それでも、彼女と離れた事を後悔している。


 ニコラが産まれた時、一緒にいたかった、、、。

 赤ん坊の彼を抱きたかった、、、。

 彼女一人に全てを任せてしまった、、、。


 もう二度と離れたく無い、、、。



 扉を叩く音がして

「謁見の準備が整います」

俺は深呼吸をして部屋を出た。



*****



 王との謁見で、俺は明日此処(ここ)を出る事を告げた。褒賞の品は、すでに準備してある為、手続きを踏めばいつでも持ち帰る事が出来る。


「聖女様との婚姻の件ですが、、、」


 緊張する。


「私はすでに結婚している為、謹んでお断りさせて頂きます」

「正式には結婚しておらぬな」


 ドキリとした。


「お前は英雄になったのだ、ただの村民と結婚という訳にもいかない。聖女と結婚しなさい」

 

 俺はため息をいた。


「承知いたしました」

「第四王女の為に、住む場所も見つけた。彼女にも褒美を取らせねばな」



*****



 翌朝、フィアとニコラが目を覚ましてから褒賞を受け取る手続きをして、あの小さな家に運ぶ事にした。それも、今日中に。


 俺達三人は、街で朝食を摂り、村に帰る。

「君の育った教会に行きたい」

そう言うとフィアは喜んだ。

「神父様も、ケヴィンに会えたら喜びますよ」


 俺は、気持ち早く、馬を走らせた。



*****



 教会は昔のままだった。小さい頃に遊んだ庭。外で勉強した日もあった。

 

 やっぱり此処ここが良い、、、。


 フィアが神父様を呼びに行く。ニコラも神父様に会った事があるのか、手を繋いで来る。


「お久しぶりです」

「お帰り。魔物討伐は終わったんだね」

「はい、、、。ですから、フィアと結婚をしたいのです」


 神父様は婚姻の手続きをしてくれた。

 俺達は成人しているから、二人だけでも手続きは出来た。

 フィアはサインをする時、涙を溢した。


 ごめんね、フィア。随分待たせてしまったね。



**********



 昼過ぎには褒賞品が届きました。小さな家に届いた物はかなりの量があった為、ケヴィンは自分のリストと品物を一つ一つ確認をしました。


 最後に城からの使いのかた

「第四王女との婚姻の事ですが」

と言った時、ケヴィンは慌てる事なく

「私は聖女と婚姻済みだから、それは出来ないね」

と言って、婚姻証明書を見せたのです。

「え?あの?」

と使いのかたは、言葉に詰まり、証明書を確認しました。

「フィア様とは、、、」

私はつい、手を挙げてしまいました。

「聖女様、、、なのですか?」

「そうです。鑑定も受けました。証明書をご覧になりますか?」

ケヴィンが言うと

「お願いします」

と返事をしました。


 ケヴィンが書類を取りに行くと、使いのかたは困った様な顔をされました。



*****



 使いのかたが帰ってから、私はケヴィンにそっと聞きました。

「あの、、、大丈夫なのですか?」

「うん、此処ここを見て、書類には「聖女との婚姻」と書いてある。昨日の謁見でも、王様の口からは一度も「第四王女」とは言われなかった。だから、俺は急いで教会に行ったんだよ」

「、、、なんだか、逞しくなりましたね」

「フィアも、、、会わない内に大人になった、、、」


 彼が私の手を取り、奥の部屋に連れて行きます。

「あの、、、ケヴィン?」

「なんだい?」


 低い、優しい声、、、大好きだわ、、、。


「あのね、、、」

彼は扉を開ける。

「ニコラが寝てるの、、、」

「あ、、、」


ケヴィンは音を立てない様に、そっと扉を閉めると私を抱き上げました。

 

「分かった、、、それなら此方こちらの部屋で」

と言って、褒賞品の置かれた部屋に戻ります。



**********



 抱き上げたフィアをそっと下ろす。

「私を軽々と抱き上げられるんですね」

 髪を耳に掛けながら、少し恥ずかしそうに言う。

「フィア、、、ただいま、、、長い間、留守にしてごめんね、、、」

そう言って、彼女の頬に触れる。ピクリと反応した。

 上目遣いで俺を見詰める。

 大人っぽくなった彼女が、ふと子供の顔に戻る時がある。


「愛してる、、、」


 そう言って、彼女にキスをすると


「お帰りなさい、、、」


 と応えてくれた、、、。



**********



 私は毎日教会に祈りに行きます。

 祈る事はただ一つ


 皆んなが幸せでいられます様に、、、









お幸せに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ