剣に祈りを
魔物討伐に志願した彼を待ち続けました。 ハッピーエンドです
私は小さな教会に捨てられていました。
産まれて間も無い赤ちゃんで、誰が置き去りにしたのかは分かりません。
神父様に育てて頂きました。毎日神様に感謝をし、皆が健康で、幸せでいられる様にと祈りました。
神父様は教会で子供達に勉強を教えています。文字を読み、書く事、計算方法、生活の仕方。どうしたら生きて行けるか、困った時はどうしたら良いか教えてくれました。
まだ子供の私達は、教会で出会い、年相応に恋をしました。私にとって彼は、誰よりも素敵で、彼も私にプロポーズをする位愛してくれました。
裕福では無くとも、幸せだったのに、、、。
例年より魔物の数が増え、若い男達が召集されて行きます。
いつか彼にも召集が掛かるでしょう、、、。
討伐に参加すれば、幾許かのお金が手に入ります。彼は、私の為に自ら討伐に参加すると言いました。
本当は行って欲しく無い。
結婚の為に二人でお金を貯めていて、後半年で目標の金額が貯まる予定でした。
でも、彼は志願してしまった、、、。お金を手にして、嬉しそうな顔をする彼を責める事は出来ません。
私は、貯めたお金で剣を買い、鍛冶屋に持って行きました。一番安い剣です。
それでも、彼にはその剣を持って行って欲しかった。その剣を私と思って、いつも身に着けていて欲しかった。
毎日のお祈りは、彼の事ばかりになりました。
彼が怪我をしない様に、一日も早く、無事に帰って来られる様に、、、。毎日、毎晩お祈りします。
彼が出発する前日、私は心を込めて料理を作りました。いつ帰って来るか分かりません。一週間か、一ヶ月か、一年か、、、。
「必ず生きて帰るから」
そう言って、教会で二人だけの結婚式をしたのです。
その晩、初めて私達は結ばれ、彼は私のお腹にそっと触れました。温かい手、、、。
私は泣きません。彼が私達の為に選んだ道だから、、、。
翌朝、にっこり笑って見送ります。
「必ず帰って来てね。いつまでも待っているから」
そう言って最後のキスをしました。
街の男達と、馬車に乗り、城に向かう彼。
どうか、どうか無事に帰って来て下さい。
*****
あの日、私は身籠りました。
毎朝、毎晩のお祈りは欠かしません。いつも彼の無事を祈り、お腹の子供がすくすく育つ様に祈ります。
私には祈る事しか出来ないけれど、それでも充分幸せだったのです。
魔物討伐が終わり、王都では凱旋パレードがありました。彼はまだ帰って来ません。
魔物討伐が終わったと言う事ならば、彼にもう危険は無い、、、そう思うと、私はホッとするのです。
後は、この子と彼の帰りを待ちましょう。
*****
魔物討伐で、多くの若者が犠牲になりました。無事に帰って来たのは、彼と聖女様、騎士団の数名だったそうです。
彼は聖女様を守り、多くの功績を上げ、沢山の褒賞を受け取るとか、、、。
英雄になり、凱旋パレードが開かれ、彼は聖女様と一緒に帰って来ました。
そして、、、。一枚の手紙を私に見せたのです。
*****
私は手紙を読んでも、一瞬理解が出来ませんでした。
そこには英雄となった彼の、褒賞が書かれています。そして最後の一文だけが、やけに目に止まりました。
どうやら聖女様と彼が婚姻する様なのです。
私は彼を見ました。
聖女様と並ぶ彼は、まっすぐ私を見たのです。
聖女様も、彼の横に静かに立っていました。
私は何を言えば良いのか、分かりません。
「ママ、、、?」
後ろで息子の声がしました。
急いで身体で息子を隠します。
「ごめんね。お客様だから、お部屋で待っていてね」
息子は「うん」と頷くと、静かにベッドに入りました。
私が彼に向き合うと
「結婚したのか?」
と聞いて来たのです。、、、笑っちゃう、、、。
「結婚しました」
声が震えそうになる、、、。
「待っていると言ったのに、、、」
「待っていました」
「君が幸せなら、、、私が気に掛ける事は何も無いだろう」
そう言って手紙を回収すると、彼は聖女様と出て行きました。
私は、深い溜息を吐いてました。
**********
俺は、必ずあの家に帰ると誓った。彼女が待つ家に、、、。
剣など振った事は無い。子供の頃、棒切れで遊んだ位だ。
召集後、城で少し訓練があった。剣を持たない男達は、俺より貧相な剣を配られた。闘い方も分からない俺達は、人数で勝負させられた。
仲間は日に日に減って行く。騎士達は聖女を守り、俺達は盾の様な存在だった。
聖女は第四王女、、、騎士達も彼女に何かあってはいけないと、必死に守る。
そんな中でも俺はよく動いた方だ。身体が軽く、剣捌きも滑らかだった。運動神経は悪く無いと思っていたが、まさかこんなに動けるとは思わなかった。いつも神経を尖らせていたからかも知れない。それでも不思議だった。
完全に討伐するのに、3年も掛かってしまった。
常に深い森に入っている訳では無い。城に戻り、身体を休め、英気を養い、再び討伐に向かう。
最初の頃は、一日も早く彼女の元に帰りたかったのに、次第にそんな感情は薄れて行った。
城の中に入れば、生活圏が違えども、聖女と同じ時間を過ごす事もある。彼女は俺の側によく来ていた。
第四王女としての悩みや、聖女としての悩みを俺に話す。美しい女性が側にいるのは、悪い気がしなかった。
だからと言って、深い仲になる事も無い。彼女は王族で、私はただの村民だから、、、。
長い討伐が終わり、王都で凱旋パレードが行われた。褒賞を貰い、彼女の元に帰れる事になった。
王との謁見で、褒賞を賜り、聖女との婚姻を勧められた、、、。
彼女は今も俺を待っているだろうか、、、。三年も経っている。もしかしたら、、、
**********
私はケヴィン様と結婚したかった。
聖女と言われ、討伐に同行したけれど、私の力は精々怪我を治す位。王女としても中途半端な四番目、、、。
彼は強くて優しかった、、、。
本当は、騎士の一人が好きだったのだけれど、彼の方は、私の事等見てくれないの。初めは彼の方に振り向いて頂きたくて、ケヴィン様の側にいたのだけれど、いつしかケヴィン様の優しさに、心地良くなったわ。
もし、彼と結婚出来るなら、英雄と第四王女の恋物語になるの。それもステキだと思わない?。
お父様にケヴィン様との結婚を打診しました。彼の功績を讃えたお父様は、私との婚姻の事も加えて下さいました。
本当は騎士様と結ばれたかったのですが、、、。
**********
彼は帰って来なかったのです。そう思う事にしました。
息子の寝顔を眺めながら、もう、夢を見るのを止めると誓います。
私は待つのに疲れてしまったのかも知れません。
この村を出よう、、、。いつか彼はこの村に帰って来るでしょう。彼の母親は、この子があの人の子供だと知っているかも知れません、、、。もし、この子まで取り上げられてしまったら?
私に、何が残るのかしら、、、。
この子だけは、誰にも譲れない、、、。
私は家の中に隠してあった、全てのお金を集め、明日の早朝には此処を出ようと決めました。
荷馬車に出来るだけの荷物を乗せて、此処にはもう帰る事は無いと、心に誓いました。小さな家。彼がいないから、充分だった。彼が無事に帰って来たら、私はもう少し広い家に移ろうと考えていたのに、、、、。
息子の寝顔に彼の面影を見つける。
ごめんね、、、お父さんに会えなかったね、、、。
いつも、いつも「ぼくのおとうさんは?」と聞いて来ました。その度に
「王様のお仕事を手伝っているのよ。きっともうすぐ帰って来るわ」
と話していたのに、、、。
**********
聖女は数名の騎士と、侍女と共に城に帰って行った。
俺は久しぶりに実家に帰る。父も母も喜んで迎えてくれた。
「あなたは聖女様と結婚をするのでしょう?」
母に聞かれて、俺は即答出来なかった。
「あなたが数年前、結婚すると連れて来た女より、聖女様と結婚する方が良いわ。あの子は捨てられた子だったし、結婚もしないで子供を産む様な女だもの」
結婚もしないで子供を産んだ?
何故、結婚しないんだ、、、?
「母さん、その子はいつ産まれたの?」
「あなたが召集された翌年の夏前かしら。今、2歳位だと思うわ」
、、、。俺の子供だろうか、、、。
でも、結婚したと言っていた、、、。待て、、、俺達は二人きりで結婚式をしたじゃないか、、、。正式では無いけど、、、あの日、、、あの夜、、、。
彼女は「待っていました」と確かに言った。
あの子供は、俺の子では無いのか?
確かめなければ、、、。
翌朝、確認しに行こう、、、。
**********
早朝、私は息子を起こして、荷馬車に乗せる。彼は寝惚けている様で、荷車に布団を敷いて寝かせました。
晴れてて良かった、、、。
私は、この村から出来るだけ遠くに逃げました。
**********
俺が朝、家に戻ると、何だか嫌な予感がした。
扉を叩く。返事は無い。
窓にはカーテンがしてあった。
裏に回ると、荷馬車が無い。貧しくて売ってしまったのか?
よく見ると、餌が散らばっている。そんなに乾燥していない、、、さっきまで馬はいたんだ、、、。
昨日、確認しておけば良かった。そう思いながら、ドアの取っ手を回す。鍵が開いていた。
カチャリ、、、
扉を開けて中を覗くと、何だか変だった。家具は有るのに、違和感がある、、、。
そっと中に入った。
「フィア、、、?」
久しぶりに彼女の名前を呼んだ、、、心が、あの時に戻る。
二人で住み始めたこの家。家具しか無い家だった。皿もコップも少しずつ持ち寄り、新しい物は何も無かった。
貧しくて、でも幸せで、俺はもっと金が欲しくて、魔物討伐に志願した。彼女に必ず帰ると告げて、奥の部屋で彼女を抱いた、、、。
彼女がプレゼントしてくれた剣、、、。凱旋パレードの時、見窄らしい剣でパレードに出るなと言われた。俺は新しい剣を貰い、彼女がくれた剣はクローゼットの奥にしまった、、、。
彼女はどこに、、、?
このまま、一生会えなくなるのか?
ダメだ、、、。
俺は急いで部屋を出る。
俺が彼女なら、城下の方へ逃げる。道は一本。急いで馬に跨り、彼女を探す。
待て、、、行かないでくれ、、、。確認したい事があるんだ。あの子は誰の子だ?
全力で馬を走らせる。まだ、そんなに遠くには行っていないだろう!
**********
嘘でしょう?あの人が追い掛けて来る、、、何故?
馬は荷車を引いている。大した荷物では無いけど、全力で走らせたら、息子が落ちてしまうかも!
嫌だ、来ないで!私達の事は放っておいて!
「フィアーッ!!」
止めて、名前を呼ばないで!!
「フィアーッ!!」
もうダメだ、、、逃げても無駄だと諦めた。
これ以上馬を走らせてはいけない。息子もいつのまにか目を覚まし、泣いている。
彼が追い付き、私の横に馬を寄せ、降りました。
私は息子を抱き抱えます。
「フィア、、、その子は、俺と君の子なのか?」
「違います、、、」
「顔を見せて」
「どうぞ、、、。貴方と同じ髪色と瞳の色の人は沢山います」
「いつ、産まれたんだ。あの夜に出来たんじゃ無いのか?」
涙が出そうだった、、、
「違います、、、」
この子の父親は優しい人だもの。私達を捨てたりしない、、、。
涙が溢れて、彼の顔がボヤけて行く、、、。
止めて、泣かないで、、、我慢して、私、、、。
「パパ?」
ああ、涙が溢れてしまった、、、。
「パパなの?」
*****
息子とあの人は二人で草原を散歩しています。
私がいつも、夢見た光景でした。
荷馬車の後ろに座り、二人を眺めます、、、。
ねぇ、、、貴方は聖女様と結婚するのでしょう?早く、彼女の所に戻った方が良いわ、、、。
そう思いながら、ふと彼の剣に気が付きました。
私が上げた剣ではありません。
もっと立派で、英雄に相応しい剣、、、。
もう、あの剣は使っていないのね、、、。
**********
「ぼくのパパはね!おうさまのところでおしごとしてるの!まものをぜんぶたおしたら、ママとぼくのところにかえってくるんだ!おじさんがパパなの?」
「ママは何か言っていたかい?」
「おきたらばしゃだったから。あのね、ママはパパにけんをプレゼントしたんだって!そのけんがママがあげたけん?」
「これは、王様に貰った剣だよ。頑張ったご褒美に貰ったんだ。ママから貰った剣は、お家に大事にしまってあるよ」
「じゃあ、おじさんがパパなの?」
私はどう返事をしたら良い分からなかった。
フィアの気持ちを確認しないで、父親と名乗って良いのだろうか、、、。
「ママね、、、たまに、さびしくてなくよ。はやくパパにかえってきてほしいって。ぼくがなぐさめてもダメなんだ。おじさんがパパならはやくかえってきて」
私は、荷馬車に座る彼女を眺めた。
**********
「フィア、、、」
「止めて、、、名前で呼ばないで、、、」
「あの子は」
「違うわ、、、。貴方は聖女様と結婚するのでしょう?そのまま、帰った方が良いわ、、、」
「もし、、、君が他の誰かと結婚していたのならそうしたけど、、、君は待っていてくれたんだろう?」
「だって、、、約束したもの、、、。貴方をずっと待っているって、、、」
「あの子の名前は?」
「ニコラ、、、」
「ニコラ、、、良い名前だ、、、」
**********
私達は、草原で遊ぶニコラを見ていました。
「いけない!」
彼は急に立ち上がり、走り出します。
何?どうしたの?
私は分からず、辺りを見回しました。彼の走る方角の先、叢がザワザワと動き、何かがニコラに近付いています。
狼?それとも魔物?真っ直ぐニコラを目指すモノ、他にも二箇所叢がザワザワと動いています。
ケヴィン!お願い!
彼の剣が抜けない。彼の身体に対して長すぎるのか、鞘から抜けなかった!
**********
いつも使っている剣より長かった。鞘から剣が抜けず、鞘を後ろに引いて捨てた。剣が重い。
だから、嫌だったんだ。見栄えだけ良くしてあった。装飾が邪魔で重すぎる。身体も重い。上手く出来るか?いつもと違う気がする。
狼だった。三匹。ニコラを抱え剣を振る。
剣が重い!
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私は祈った。祈る事しか出来なかった。
お願い!ケヴィンとニコラを助けて!
狼が二人を攻撃しないで、森に帰って行く事を願った。
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急に身体が軽くなる、重たかった剣が軽く降りやすい。これならニコラを守れる!
狼は俺達を攻撃した後、敵わないと思ったのか、深い森に帰って行った。
「ママ!」
フィアを振り返ると、彼女は倒れていた。
急いで走り寄る。
「フィア、、、」
真っ青な顔だ。
「大丈夫か?」
「少し休めば、、、」
「家に帰ろう、、、」
俺はフィアを荷台の布団に寝かせる。馬を誘導して、ゆっくり向きを変えさせ、来た道を帰る。
ニコラは荷台の上で遊んだり、御者席に座って手綱を操っている真似をした。
*****
「フィア、、、鑑定を受けてみないか?」
「鑑定?」
「聖女の鑑定」
「私、聖女じゃないわ、、、」
フィアは気付いていない、さっきフィアが祈った時、彼女の身体が微かに光ったんだ。聖女が怪我を治す時も、自ら光を発する。何だか似ていた。
「ニコラ、王都に行きたく無い?」
「おうと?」
「美味しいモノが沢山あるよ」
「行きたい!」
「ケヴィン、、、」
「良いじゃ無いか。どうせ、旅に出る予定だっただろ?行き先を変えるだけだよ」
「、、、」
**********
私達は、ケヴィンと共に王都に向かいました。
ニコラはケヴィンにばかり懐き、常に一緒にいたがります。彼の馬に乗り、私は後ろを着いて行きます。
ニコラの反応が嬉しいのでしょうか。二人で沢山話しをしています。
ケヴィンは私達を教会に連れて行きました。城の横に立つ教会は、この国で一番大きな教会です。私とニコラは、教会の前で立ち尽くしました。
余りにも美しく、荘厳で威厳があり、身分の低い者を寄せ付けない雰囲気です。
私の様な者は、入ってはいけない、、、そう思わせられてしまう、、、。怖い、、、。
「フィア、、、大丈夫、俺がいるから」
そう言うと、彼は大きな門の横に立つ男性と話しを始めました。
彼はケヴィンに
「どうぞ」
と声を掛け、教会の中に入って行きました。
*****
聖女の鑑定は、教会の中にある一室で行われる様です。小さな部屋にある、鑑定に使われる石に触れるだけ。聖女が触れると色が変わるそうです。
神父様とケヴィンが二人で話しています。何を話しているのかは、聞こえません。
神父様がチラリと此方を見ました。
「フィア、此処へ」
ケヴィンに呼ばれて二人の側に行きます。ニコラは私の服を掴み、不安そうでした。
「この石に触れてごらん」
小さな切株の様に切られた石。表面が真っ直ぐ平らになっていて、乳白色でツルツルと美しい、、、。
「綺麗、、、」
指先でそっと触れると
「掌全体で触れて下さい」
神父様の優しい声に、フッと指を離してしまいました。
触れた場所がピンク色に変わっています。
私は言われた通り、掌で触れました。
「祈りを、、、」
祈り、、、
ケヴィンとニコラと三人で暮らしたい。もう二度と離れ離れになりたく無い。私の願いは家族で一緒に過ごす事、、、。
「わあ、、、」
ニコラの声が聞こえました。
私は静かに目を開きます。
「本物ですね、、、」
と神父様が笑っています。
「ママ、、、?」
ニコラの不安そうな顔。私も聖女と言われて、どうしたら良いのか分かりません。
ケヴィンに
「神父様と話しをしてくるから、少し待っていて」
と言われました。
私とニコラは教会の中で待ちます。
広い広い部屋。木で出来た五人掛けの、重厚な黒い椅子。沢山並んでいます。ステンドグラスが並び、私の育った教会とは違いました。
でも、十字架を前にすると少し安心するのです。
手を合わせ、お祈りを捧げます。
皆が幸せでいられますように、、、。
コトリと音がして目を開くと、ケヴィンが立っています。
「私の荷物を取りに行こう」
ニコラが彼と手を繋ぎます。教会の裏門が城と繋がっていて、私達は彼の部屋へ行きました。
英雄なのに、訓練場の横に立つ、寮の一部屋に住んでいました。彼らしく感じて、ホッとします。
「褒賞の品をまだ受け取っていないんだ、今日の夜、王様と謁見が出来る様に頼んだから、暫くこの部屋で待ってて」
彼はそう言うと、クローゼットの中を片付け始めました。
私が贈った剣が出て来ます。シーツに包んでありました。
「ママのけん?!みたいみたい!」
ニコラがはしゃぎます。ケヴィンは優しく笑い、シーツを剥がすと、そっとニコラに見せました。
こんなに古かったかしら、、、そう思いながら見つめます。彼がニコラに触らせました。
ベッドにもう一本の剣と並べると、その違いは歴然でした。装飾が多くて、無駄に長い剣と、ただの剣。
ニコラは美しい剣を選びます。でも、彼には重くて長すぎました。
ケヴィンは古い剣に触れると
「やっぱり、此方の剣が俺にはしっくり来るな」
と笑います。
**********
フィアとニコラが俺のベッドで寝ている。
こんな幸せな事があるだろうか、、、。
三年間の間に、彼女は母になっていた。顔も、身体も大人の女性になっている。
自分で選んだ魔物討伐だった。想像以上の褒賞を貰った。
それでも、彼女と離れた事を後悔している。
ニコラが産まれた時、一緒にいたかった、、、。
赤ん坊の彼を抱きたかった、、、。
彼女一人に全てを任せてしまった、、、。
もう二度と離れたく無い、、、。
扉を叩く音がして
「謁見の準備が整います」
俺は深呼吸をして部屋を出た。
*****
王との謁見で、俺は明日此処を出る事を告げた。褒賞の品は、すでに準備してある為、手続きを踏めばいつでも持ち帰る事が出来る。
「聖女様との婚姻の件ですが、、、」
緊張する。
「私はすでに結婚している為、謹んでお断りさせて頂きます」
「正式には結婚しておらぬな」
ドキリとした。
「お前は英雄になったのだ、ただの村民と結婚という訳にもいかない。聖女と結婚しなさい」
俺はため息を吐いた。
「承知いたしました」
「第四王女の為に、住む場所も見つけた。彼女にも褒美を取らせねばな」
*****
翌朝、フィアとニコラが目を覚ましてから褒賞を受け取る手続きをして、あの小さな家に運ぶ事にした。それも、今日中に。
俺達三人は、街で朝食を摂り、村に帰る。
「君の育った教会に行きたい」
そう言うとフィアは喜んだ。
「神父様も、ケヴィンに会えたら喜びますよ」
俺は、気持ち早く、馬を走らせた。
*****
教会は昔のままだった。小さい頃に遊んだ庭。外で勉強した日もあった。
やっぱり此処が良い、、、。
フィアが神父様を呼びに行く。ニコラも神父様に会った事があるのか、手を繋いで来る。
「お久しぶりです」
「お帰り。魔物討伐は終わったんだね」
「はい、、、。ですから、フィアと結婚をしたいのです」
神父様は婚姻の手続きをしてくれた。
俺達は成人しているから、二人だけでも手続きは出来た。
フィアはサインをする時、涙を溢した。
ごめんね、フィア。随分待たせてしまったね。
**********
昼過ぎには褒賞品が届きました。小さな家に届いた物はかなりの量があった為、ケヴィンは自分のリストと品物を一つ一つ確認をしました。
最後に城からの使いの方が
「第四王女との婚姻の事ですが」
と言った時、ケヴィンは慌てる事なく
「私は聖女と婚姻済みだから、それは出来ないね」
と言って、婚姻証明書を見せたのです。
「え?あの?」
と使いの方は、言葉に詰まり、証明書を確認しました。
「フィア様とは、、、」
私はつい、手を挙げてしまいました。
「聖女様、、、なのですか?」
「そうです。鑑定も受けました。証明書をご覧になりますか?」
ケヴィンが言うと
「お願いします」
と返事をしました。
ケヴィンが書類を取りに行くと、使いの方は困った様な顔をされました。
*****
使いの方が帰ってから、私はケヴィンにそっと聞きました。
「あの、、、大丈夫なのですか?」
「うん、此処を見て、書類には「聖女との婚姻」と書いてある。昨日の謁見でも、王様の口からは一度も「第四王女」とは言われなかった。だから、俺は急いで教会に行ったんだよ」
「、、、なんだか、逞しくなりましたね」
「フィアも、、、会わない内に大人になった、、、」
彼が私の手を取り、奥の部屋に連れて行きます。
「あの、、、ケヴィン?」
「なんだい?」
低い、優しい声、、、大好きだわ、、、。
「あのね、、、」
彼は扉を開ける。
「ニコラが寝てるの、、、」
「あ、、、」
ケヴィンは音を立てない様に、そっと扉を閉めると私を抱き上げました。
「分かった、、、それなら此方の部屋で」
と言って、褒賞品の置かれた部屋に戻ります。
**********
抱き上げたフィアをそっと下ろす。
「私を軽々と抱き上げられるんですね」
髪を耳に掛けながら、少し恥ずかしそうに言う。
「フィア、、、ただいま、、、長い間、留守にしてごめんね、、、」
そう言って、彼女の頬に触れる。ピクリと反応した。
上目遣いで俺を見詰める。
大人っぽくなった彼女が、ふと子供の顔に戻る時がある。
「愛してる、、、」
そう言って、彼女にキスをすると
「お帰りなさい、、、」
と応えてくれた、、、。
**********
私は毎日教会に祈りに行きます。
祈る事はただ一つ
皆んなが幸せでいられます様に、、、
お幸せに




