第68話:それぞれの未来に向かって
石化したラビットを手でトントンと触る満流。
「なあ、これ、また蘇ってくるってこと、ないよな?」
心配そうに輝夜に尋ねる。
「ふふっ、さあ?」
輝夜がいじわるそうに答える。
きっと答えがわかっていないのは満流だけなのだろう。
「満流、そんなに気になるなら、この石、壊してしまいましょう。」
悠一が言うが、納得できない様子。
「それに、さっきお前、「あなたを滅ぼすんじゃない――永劫の悔恨に封じる」って言ったよな。あれって………………。」
「何言ってるのよ、簡単に許すわけにはいかないでしょ?ロワールたちの人生を何だと思ってるのよ?」
「お前………………。」
輝夜の言葉にロワールは感動しているようだ。その魂は妹、ミリアナのものだとわかりながらも目の前にいるのは全くの別人なのだから素直に言葉に出来ないようだ。
「さあ、もうしっかり太陽も昇っているんだし、いつまでもこんなとこにいたんじゃ不健康になっちゃうわよ?」
輝夜は笑いながら言った。
「それもそうだな、帰るか。」
満流も同調した。悠一も同調し
「そうですね。それがいいですね。」
「おお、ではみんなで一旦、夜月神社へと参りましょう。」
ケンとダナも同調した。
そして輝夜はロワールたちを見た。
「ねぇ、…………行くとこがないなら、当面の間、ウチ来る?」
と声をかけた。
「──────────は?!」
その言葉にいち早く反応したのは満流だった。
「いや、待て。お前の周り男ばっかじゃん!」
「何言ってんの?あんたも男でしょ?」
「俺は特別だろ?幼馴染でもあり、お前の恋人でもあるんだから。」
くってかかってくる満流に対して輝夜は大きく息を吐いた。
「ねえ、もう敵もいなくなったんだし、〝修行〟は終わりでしょ?」
「は?俺を追い出すってのか?」
「もう、聞き捨てならないわね。元に戻るだけじゃないの。」
「だけど!」
二人が言い争いをしているのを横目に
「さあ、僕たちはあの二人を放っておいて、戻りましょう。ロワールさん、みなさんも一緒に行きましょう。」
悠一が輝夜たちを置いてその場をそそくさと立ち去ろうとしていた。
「─────あ!待って!悠一くん、私を置いていかないで!」
「ちょ…!輝夜っ、俺を置いて行くなよ~~~!」
悠一たちは「やれやれ」と思いながらひたすら夜月神社へと向かった。
神社に着くと鳥居の向こうで輝夜の父が待っていた。
「─────お父さん。」
父は黙って見ていた。
そして静かに微笑んだ。
「さあ、みんな、お腹空いただろう?中に入りなさい。」
そう言って総勢8人を受け入れた。
「なんでこんなに沢山料理を用意していたの?」
「ん?そろそろ帰ってくるんじゃないかって気がしたんだ。神様のお告げ…かな。」
「ふぅーん。」
この時、輝夜は気付かなかった。父にお告げを降ろした存在のことを…。
「それで?今後のみんなの身の振り方はどうなってるんだ?」
輝夜の父がみんなに尋ねた。
「僕は家に帰ります。」
悠一が率先して答えた。流石にあの三人を一時的にでも受け入れるなら少しでも場所がいるとわかっているからだ。ケンとダナはここでしかいられないから。
そして視線が満流へと集まる。
「………………。俺は、正直まだここにいたいけど、仕方ない。明日には家に一旦帰るよ。」
「そうか、では修行の結果は私から伝えておこう。」
「はい、ありがとうございます。」
ケンとダナが狛犬だったことはとっくにバレていたようだ。そして例の三人は自立の目途がつくまで神社で預かることとなった。
夕食を終えて一息ついている時、ふと、リビングに満流がいないことに気付いた輝夜。
〝きっと拗ねているのかもね…。〟
そう思って境内の方へと満流を探して出て来た。
外はすっかり夜になっていた。
いつもの場所に行くと、そこにはまるで子供の用に蹲って座っている満流がいた。
「もう、やっぱりここにいた。」
「あぁ…。なんだか思ったよりもあっけなく終わったことがちょっとな。」
満流は前を向いたまま、穏やかな声で言った。輝夜は満流の隣にチョコンと座った。
「あなたが強くなってたからじゃないの?」
輝夜の言葉に嬉しさが隠しきれていないようで彼の眉がピクリと動いた。
「それもあるが、なんだか腑に落ちないというか…。」
満流は上手くいきすぎたことで逆に不安を覚えているようだ。
「手応えがないってこと?」
輝夜が満流の背中に手を添えた。
─────ドキッツ。満流の鼓動が跳ねた。
「な…、それもあるけど、お前と離れるのがちょっとな。」
照れてる満流を見て輝夜は微笑ましく思って調子にのった。
「ふふっ、それって寂しがってくれてるんだ?」
「お前っ。男をそんな風に揶揄うんじゃないぞ!?」
そう言って輝夜の手を取って抱き寄せた。
「もうこんな風に触れ合う時間が減っていくじゃんか…。」
満流の瞳が揺れ動いている。輝夜も揶揄うのをやめて彼の素直な気持ちにこたえる。
「今までが異常だったのよ…。」
「俺はどんな理由をつけたって、ずっとお前のそばにいたいってのに。」
哀しそうに視線を落とす満流に胸がキュンとなった輝夜はそっと満流の唇にキスをした。
「─────!」
驚く満流。だけど、満流もずっと輝夜に触れたかった。
二人でいられる最後の夜─────
明日からはお互いの家で過ごすのだ。名残惜しい気持ちは満流だけではなかった。
そんな二人をそっと見守る存在がいた。
ロワールだ。妹である輝夜を心配していた。
〝ふっ。ミリアナ。今度は幸せか?だったら俺はそれを見守っていてやるよ。〟
リビングではまだ残ったみんながワイワイと今回のことで話をして盛り上がっているようだ。
境内だけが静まり返って二人は最後に一緒に過ごせる時間を大切にしていた。
「満流、離れていたって気持ちは変わらないよ?」
「輝夜…。」
「うん、大好き!満流っ!」
「ああ、俺も。大好きだ!輝夜!」
二人の視線が絡み合う。輝夜は恥ずかしさで思わず視線を逸らして話題を変えようとした。
「ねえ、月…。少し欠けちゃってるね。だけど綺麗…。」
「ほら、そっち見てないでちゃんと俺を見ろって。」
少し低めの満流の声。
胸のドキドキを誤魔化すように違う話を振ったのに…。
輝夜はゆっくりと振り向いて満流の顔を見た。
〝これからは今までみたいに四六時中一緒というわけにはいかないんだ…。〟そう思うと自分から言い出したことだったが胸がチクンと痛んだ。
「そんな顔、すんなって。いつだってお前のそばにいてやるからさ!」
「……うん。」
そしてそっと、輝夜は再び目を閉じた─────。
─────完─────
ご覧下さりありがとうございます。何とか、今回も完結に辿りつけました。応援して下さいました皆様のおかげです。ありがとうございます。
amebloを閉じる事に決めましたので、こちらにAIノベルを残しておこうと思ってます。それが終わったら一つ中世風のお話を挟んでからこのお話の続きを書きたいと思っております。このシリーズ、実は4部構成まで考えております。
チェスをモチーフに書いてきましたが、実はルール全然知りません。駒の種類を調べながら書いてます。AIにいい案ないか相談したらちゃんとチェスの駒の役割通りになってると言われてちょっと鳥肌が立ちました。また制作裏話はnoteでいつかお話しますね。
長らく応援頂きまして、ありがとうございました。




