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刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第31話:人形のようになってしまった輝夜と再会する満流!



敵地、吸血族の陛下がいる住処。

ここは奴らの本拠地と言っても過言では無いだろう。

満流は囮作戦によってわざと敵に捕まり、そのままこの地へと連れられてきた。



玉座の間に身体を向けた満流。そしてその椅子に座る者に視線を向けた。





「──────────っ!!?お前は…っ!」



そこには満流が知っている子供の姿ではなく、成長した…自分と変わらない青年の姿をした人物が座っていた。


〝このおぞましい感覚はアイツの力がそう感じさせるのか?!〟



「なるほど、かなり憔悴しておるな。今のお前なら我はおもちゃにすらしなかった。つまらんな、捨て置け。」


目の前の男がそういうとザンテがかしづいて「はっ。」と短く返事をし、満流の方へと向きを変えて近付こうとした。


満流は咄嗟にこのままだと外に放りだされてしまうと感じた。



「な…!お前っ、輝夜はどうしたんだ?!お前たちが攫っていったアイツは無事なのか!?」



だが、思わず口から出たのは輝夜の安否だった。その言葉を聞いた陛下は


「なに…、お前が心配するまでもない。あいつはただの人形になってしまってな、…面白くない。聖痕の持ち主でなければとうに捨てたのにな…。」


「なん…だと…!?」


満流の中で全身の血が沸騰するかのように苛立ちを覚えた。刹那!満流は捉えられていた縄を引き裂き、陛下に向かって飛びついた─────!



「危ないっ!陛下!」


咄嗟に陛下をかばって満流の前に飛び出してきたのはザンテだった。


素手で敵うわけがない。満流は輝夜のように手の平から武器を取り出すことは出来ない。が、


「スピア!」


満流が呪文を発したその時、彼が付けているピアスが変形して剣へと進化した。


その剣を手に取り、満流は陛下の首元に近付けて脅す。



「いずれお前たちは全員殲滅させなきゃならないが、今はそれよりも輝夜を救出する方が先だ。輝夜の元に案内しろ!」



流石に陛下もその剣が銀で出来ていることに気付いていたので仕方なく満流の要望を聞き入れて輝夜の元へと案内した。


〝ふっ、どうせ二人が揃った所で何も出来まい…。〟





ウィィィィィィーン……………。

輝夜の部屋の扉が開く。


満流は部屋の中でベッドに座る輝夜の後ろ姿を見つけて思わず手元が緩んだ。陛下はその瞬間を見逃さなかった。


─────ドンッ!!


満流を足で蹴とばして輝夜の部屋へ閉じ込めたのだ。そしてすぐさま結界を張ってザンテが待機している玉座の間へと向かった。


〝あの部屋にいる限り、何も出来まい……………。あとは我があの娘に会いに行く時に気を付けておれば大丈夫だろう……………。〟


陛下、ロワールはそう考えてニヤリと笑った。その口元には鋭い牙が見えている。





その頃、輝夜の部屋に閉じ込められた満流はというと


「チッツ、ま。いっか。輝夜に会えたんだし……………。」


何とも能天気に構えていた。



「輝夜っ!」


満流が輝夜の元へと駆け寄り、ベッドに腰かけて座っている輝夜の前に膝をついて座った。



「輝夜……………心配してた。大丈夫なのか、お前……………。」


そう言って輝夜の両手を取って握り締めた。



だが、満流はすぐに輝夜の異変に気付く……………!



「か…ぐ……………や……………?」



輝夜の両手はヒヤリと冷たく感じたのだ。そして輝夜の顔を見ると焦点が合っていない。

ぼぉ~っとした顔で首をかしげて満流を見ていた。


〝─────精気がない…!!〟


ただ生きてるだけの、その姿を見て再び怒りが全身から沸き起こる─────!!


「アイツ……………!輝夜が人形になったって……………!ふざけやがって……………!!」


輝夜の手を握り締めていた手に力がこもった。だが、その手は震えていた…。

普段なら


「痛いっ、満流!」


と返ってくるところだ。それなのに今は無反応だ。満流の心に悲しみの気持ちが静かに広がっていった。


〝──────────くっ、俺のせいだ……………!〟


次に後悔がどんどん広がっていく…。だがどんなに後悔したってどうにもならないことを彼は知っている。


輝夜の手を包む自分の手……………。ゆっくり力を入れて握って見ても感覚がないのだろうか?何の反応もない。満流はギュッと震えながら握り輝夜の両手を自分の顔元に持ってきた。自分の頬で輝夜の冷たくなった手をまるで温めるかのようにスリスリと撫でた。それでも反応がなかった。


〝こんな風になってしまって……………。〟


満流の中で輝夜がどれだけアイツに対して抵抗したのかと考えると無意識に輝夜の手の甲に口付けをしていた。


輝夜、輝夜……………輝夜……………。満流の心の中には輝夜を想う気持ちで溢れていた。



その時、輝夜に変化が現れた。



手が…冷たかった手が、少しずつ青白い皮膚が赤身を帯びて温かくなってきたのだ。


「──────────輝夜っ!」


だが、彼女の表情は変わらず…。焦点が定まらないままだった。



そこで満流は一つの案が彼の頭の中を占めていた。



「ごめん、輝夜!だけど、愛してる!」



そう言って輝夜の唇にキスをした。





普段なら抵抗されるか、ひっばたかれるところだろうが、今は焦点の定まらない人形同然…。抵抗するどころかされるがままだった。


満流はキスをしながら輝夜のことをずっと想っていた。

出会ったあの日、彼女の悲しみを知ったあの日、二人で霊力に目覚めたあの日、二人で立ち向かった悪鬼たちとの戦いの日々、自分が輝夜に剣を突き刺したあのとき、そしてそのあと初めて輝夜とキスをしたあのとき、初めて創造主の世界へと渡ったあの日…。

全て輝夜と過ごしてきた大切な日々だ。


重ねて来た年月が彼女への想いをどんどんより深く重ねていったこと。好きから愛に変化したのはいつだったのだろうか…。そう思いながらも満流はどんな困難にでも立ち向かう輝夜を心の底から心配し、そして尊敬し、愛しているのだと…。


〝お願いだ。俺の知ってる、俺の愛してる輝夜……………、戻ってこいっ!〟


満流の心はその悲痛な思いを壊れんばかりに叫んでいた!




ご覧下さりありがとうございます。ようやく輝夜と会えて安堵した満流でしたが、陛下が言っていた「人形」状態に驚き、自分を責めます。陛下は満流には何も力がないから放っておけばいいと考えていますが、さて満流は本当にそうなのでしょうか?


※4月1日は更新お休みします。


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