かたらないさん
せかいってやつは
おとこのひとに会う
「結婚しないの?」
「しないんじゃないんです。できないんです」
おとこのひとは驚く
「そんなことないでしょう」
「いやいや、消去法にも引っかからないんです」
おとこのひとは結婚している
奥さんがいる
奥さんにはこどもがいる
こどもは奥さんに世話をされている
こどもはおとこのひとと奥さんとの間にできた
したくてもできない人たち
したくても選ばれない人たち
遺伝子解析マッチングアプリを開発したのは、そういった彼らを救うためだった
おとこのひとは遺伝子レベルで奥さんを愛している
データがそう示しているし、
実際に奥さんはおとこのひとといるときにとても幸せそうに笑う
そんなおとこのひとと
おんなのひとたちが
どんどんどんどんマッチングしていく
好きなにおい
好きな顔
好きな鼓動
好きなおんがく
きらいな体操
きらいな宇宙
きらいなものさし
きらいなバクテリア
無数に張り巡らされた糸が交差して網の目がひとつまたひとつと増えていく
科学のチカラだ
すごいんだ
わあいわあい
喜びにあふれている
そしてわたしはあぶれていく
全人類がもれなくマッチングしていく一方で
あらゆるすべてとの相性が
ゼロパーセント
単なるデータでしかなかったものが
このおとこのひとの優しげな眼差しによって
あのおんなのひとの微笑みによって
確かな精度を裏づけられていく
せめて
おとーさん
おかーさん
ふたりが幸せなら
それでいいかな
ゼロはゼロなりにそう思うのです
(了)




