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友だちの詩  作者: 詩とかいてウタです


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12/12

あくまのけいやく

ぼくの彼女はあくまだった。


たとえじゃなくて、ほんとうにあくまなのだ。


角が2本生えていたし、尖った尻尾もついていた。

魔界からやってきた彼女はぼくと契約した。


「絶対に振り返らないでね、でないとカズキくん、取り返しのつかないことになるよ」


だからぼくは付き合ってから一度もその約束を破らなかった。

彼女に肩を叩かれても知らんぷりをした。

だるまさんがころんだに誘われても丁寧にことわった。


あくまの彼女はそんなぼくを見てケラケラと笑っていた。

彼女が微笑むとぼくはとても嬉しかった。


だからそう。常に前向きでいることを決意した。

でも。決意したはずだったのに、頭を抱えて考え込んでいる。


就職したての春には地元のなかまに彼女を紹介した。

尻尾や牙には驚いたけれど、みんなとても喜んだ。

力持ちの彼女はべろべろに酔ったぼくを背負ってアパートへ一緒に帰った。

桜並木の街道はぼくら二人だけの深夜。星がきれいだった。


海に行ったときには泳ぎもせずにビーチでのんびりした。

コカ・コーラの缶を飲み干して、日焼け止めを忘れて夏の日差しにやかれたぼくを彼女は笑った。

太陽よりもまぶしい笑顔を鮮やかに思い出せる。


もみじ狩りを好きな人と楽しむのは初めてだった。

休憩しながら紅葉の下でおにぎりを食べた。

そういえば彼女のつくるおにぎりは、海苔がしっとりとしていて、炊きたてアツアツご飯を「ほいっ、ほいっ」と丸める背中がなんだかかわいかったんだ。


そして今、公園でぼくはなにをしているんだろう。

濡れた手袋をはずして、白い雪を転がしている。

思い出のゆきだるまの面影を探すためだろうか。

彼女がふいに姿を消してからもう1年も経ってしまった。

もう。1年も経ってしまったのか。


深呼吸をひとつする。

ぼくは気づいてしまった。

会いたいと思う気持ちが止めどなくあふれてくる。


振り返るひまがあるなら自分から会いに行けばいいんだ。

ぼくは雪玉を転がして描いた魔法陣の真ん中に立つ。

そして魔界の門を開いた。

絶対に彼女を取り返してみせると心に誓って。

カズキくん、頑張ってね。取り返しはつかないけど、取り返せないとは言ってない。

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