表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/36

30.フェアと優しさ・1

(Side:清浄院琴子)



 玲衣さんと、おんぶ中なお眠り遥さんと魔王城内を歩いて、

 3分少しで到着したセネットさん用の練習場は小さめの体育館みたいな作りで、

 内装は扉に壁、天井などをオフホワイトとホワイトベージュのさっぱりムードでピ、と張って、

 各種のトレーニング器具を黒で見やすく、在ると分かりやすく揃えられた場所でした。


 ただ気になるのは、お部屋全体があまりに清潔過ぎることです。


 フラットベンチや高重量ダンベルを始めとしたトレーニング器具はどれも、どこも傷ありへこみありで使い込まれているものの、

 そこには僅かな汗の匂いも染みも、汚れ一つすらありません。


 お掃除用の魔法などで完璧にキレイにしているのでしょうか、

 もしくはセネットさんのご種族が模造神族、特殊なゴーレムとのことですし、

 そもそも汗をかきにくいか、全くかかない体質をされているのかも――いえ、でもセネットさんのプライベートでしょうし、詮索を巡らせるのはやめましょう。


 お部屋がとっても清潔なのは真実ありがたいことですし、

 トレーニング器具が〝実用されている、問題なく使える〟って分かったのも嬉しいです。


 サンドバッグがガッシリめに吊り下げられてる、思い切り打ち込めそうなタイプなのも良いですね♪


 トレーニングマットだってもう敷いてくれていますし、

 着替えて早速ウォームアップ、しっかりな動的ストレッチから始めましょう。


 あっ、でもその前に遥さんを降ろしてあげないとです、

 お部屋の壁沿いに黒の革張りソファーがいくつか――クッションがちょっと硬そうですけど、まぁ在りますし、

 サイズも割合横長、横広め、3人から4人掛けタイプですから伸び伸び寝かせてあげましょう。


 入口から少し遠く、お部屋真ん中端っこのソファーに歩いて、遥さんをそぉっと、静かなめらかにすぃふ、と降ろして、のんびり仰向けにしてあげます、

 遥さんは今もすぅすぅふにふに、すごいおとなしく眠ってくれてますから姿勢を寝に整えてあげるのもしやすいです、

 髪もくせとか付かないように軽く、さら揃えてあげてから最後に小さな足元、

 シンプル可愛いバレエシューズ、淡みまったり青むらさきのに右足側から私の両手を添えて、やわい慎重ちからを靴脱がしへ引いて、ついそろ、すぅしゅぽ♪ っておみ足開放、白靴下だけにしてあげます――バレエシューズの時も思いましたが、紺色白差しワンピと合ってて素敵です、可愛いです♪

 あ、早く左足も靴下だけにしてあげなきゃです、

 遥さんの快眠のためにも、私が遠慮なくトレーニングするためにも、ですっ。



 ◆◆◆◆◆◆



 ――遥さんの両足のお靴を、私の両手(ほの)ちからでそろりすぅわぽ、ゆったり開放してあげてから、

 穏やかに眠ってくれてる遥さんの足元、ソファー端の床にその靴をセットで置いておき、

 私は足音立てずに速やかに、さらふさらふ、って練習場奥のドアへ着替えに向かいます、

 セネットさん曰く、シャワーも据え付けられてるらしい更衣室へ行きます。



 そうして着いた更衣室内――色合いはここも白基調、やっぱり汚れ一切なく凄い清潔でした――で、スキルの〝取り寄せスペース〟を使って今朝と同じトレーニングウェア、ブラックに白を差したスポブラスコートスパッツを自宅から持ってきて直ぐ着替えです、

 ぱぱっとサラッとお洋服を脱いで着替えて、始める用意が出来ましたので部屋を出てストレッチに向かいます、トレーニングマットのとこに行きます。


 マット横ではもう玲衣さんがスマホ片手に待ってくれてましたから、

 いつも通りに時間や回数計測などの補助を頼んで――私も頭と心でやってますけど、玲衣さんに見てもらえばもっと安心できますものね♪――、

 ウォームアップをアップドッグ・ストレッチから、おなか腰きゅわすぅーっ♪ と柔くしっかり、とっても気持ち良く伸ばして、あったかく進めていきました。


 今日の午後も良いトレーニングが出来そうです、

 動いていくのはやっぱり楽しみですし、ストレッチからもう楽しいです♪


 目的達成に向けて頑張りますっ、明日(あす)の決闘に備えるためにも、

 セネットさんのご厚意に応えるためにも、大切に私を仕上げていきますっ!



 ◆◆◆◆◆◆



 トレーニングで動いて、動いて、速く重たくどんどん打ち込んでしなやか、ふわもにつよーく鍛えていって――遥さんはトレーニングの途中で音に起きちゃいましたけど、

 でもちょっとびっくりしてただけで、すぐ姿勢良く座って真摯に待ち続け、トレーニングを見続けてくれました、瞳の光がきらきらしてて、きっと自然に楽しんでくれてたから私もやる気がむずむず、ふわっ! て湧いて、動いてくのにいっそう身が入りましたっ、くすぐったい感じに嬉しかったです♪――、

 心身ほっこり高まってからクールダウンに移った時にはもう十七時過ぎ、始めてから四時間近くが経過してました。


 そうしてクールダウンの始まりに、大きめ黒デザインなランニングマシンで軽めにさらさぁー、と走っていたら、

 玲衣さんが両手持ちのスマホを真剣に見つめつつ早足気味にスタスタ近づいてきて、

 私の横顔を左脇から、ちょいと見上げて声掛けてくれました。


「琴子、走りながらでいいから聞いて。


 実はセネットさんからメールが来ててね、

 件名が〝提案あり、トレーニングが終わったら見てください〟とかだったからちょうど今見たんだけど、

 彼によるとこの練習場で今日中に、ジェイコブ・ウォールさんを参考人としての話し合いがしたいんだって。


 ウォールさんも大隊長を勤める軍人さんで、琴子とは既知って書いてたけど、

 提案を受けても大丈夫かしら。


 私としてはかなり興味があるけど、琴子の意見はどう?

 あ、今決めなくてもいいから、決まったら教えてよ」



 ――と気遣ってくれましたものの、セネットさんのご提案ですしどうも緊急っぽい? ですし、

 イエスに決まってますから即答します。ランはそのまま軽やかに、さらさた、さらさた、駆けるまま。


「はい、大丈夫ですよ。大事そうなご提案ですし、勿論受けます。

 ウォールさんもとっても良いひとでしたから、私たちの心配は無用だと思います。


 むしろ参考人っていうのが穏やかじゃないですし、

 ご当人のウォールさんが何かの事件とか、そんなのに巻き込まれてないかが少し気になります」



 んー、思うまま伝えましたけど、ウォールさんがご無事なのかがほんと気掛かりです、

 メールからするとセネットさんが付いてくれてるみたいですし、きっと安全でしょうけど、でも参考人、ですからね。


 ケネスさんの癇癪をぶつけられたとか、セネットさんへの罰を連帯責任で取らされたとかじゃなくって、

 単にお話の信頼性を上げるための証人的な、ごく平和な意味合いなら良いのですが。


 マシン横の玲衣さんもますます神妙な表情で応じてくれます、

 私はとにかく体をしなやか、実直に、落ち着きムードのふわふわパワーでクールダウンを走ってます。


「分かった。未知や懸念はあるかもだけど、ウォールさんが信頼できるならまぁオッケーでいいでしょ。

 今度はヘンなひとなんて居ないみたいだし、平和な話し合いができそうだもの。


 あと琴子、あなた優しすぎ。

 話し合いとかは来るまで置いといて、自分のクールダウンに集中しなさいな。

 いつも通りに、マッサージも手伝うから。リラックスしてね」



「わっ、ふふっ♪ 玲衣さん、ありがとうございますっ♪」


 考える前に笑みが零れます、にこにこぴかー、と咲いちゃいます。


「じゃあトレーニングを最後まで楽しく、元気に動いて仕上げちゃいますね。

 あ、クールダウンですからちょいゆったりめで、伸び伸び気持ち良くなっちゃいます♪」


 すらすら走ってる私の隣で、玲衣さんもちょっぴり笑ってくれました。


「そ。まるっといつも通りね」


「はい、いつも通りですっ♪」


 答えた私は気分上々、体すっきりほんわかライトに、

 クールダウンをラン、ストレッチ、玲衣さんサポートのマッサージまで強く柔く、きゅんと磨き抜いて終えることができました。


 シャワーをきちんと浴びて洗ってまた着替え――バスタオルも取り寄せスペースで実家から持ってきて、私愛用なふわっふわの白でかサイズです、どこもぽむさらスッキリ拭けます♪――、

 すっぴんでも綺麗可愛いに自信あり、背すじも体幹もすらりっと快く、

 シャワー上がり・トレーニング上がりの爽やかな心地で更衣室から出ると玲衣さんがすぐメールのお返事を打ち始めてくれましたから、

 私は遥さんのソファーまで歩いて、あくまで可否自由な確認を取ります、と、

 当の遥さんはウォーターサーバーの紙コップ、ひやっとクリアなお水を右手に真剣ながらも落ち着き払って、


「分かりました、私も問題ないです、信じてますから大丈夫です。

 琴子さんが信じるお二人のかたなら、私もほぼ直接……みたいにでしょうか、とにかく信じられます。

 だから次の話し合いでも、一緒に頑張らせていただきます」


 そう、あたたかな真心を伝えてくれました。

 だから私はすぐ笑顔でお礼の、ありがとうございます、を伝えます、すると遥さんはちょっと頬を赤らめつつ、


「こっ、こちらこそ、いつもありがとう、ございますっ。

 あの、寝てたのにここまで運んでくださったことも、ほんとにありがとうございましたっ」


 と可愛く、律儀に仰ってくださいましたので、

 私もにっこり明るいままに、すっと応じることができました。


「ええ、どういたしまして。


 遥さんがお嫌でなければ、私はいつでもおんぶしますから、

 もし疲れた時や眠りたい時にはどうか無理なさらないでくださいね。


 遥さんも私も、楽しく自然体で行きましょう♪」



「あっ、はいっ! これからもよろしくお願いします、よろしくですっ!」


 ふふっ♪ ちょっと勢い込んでる遥さんも、その優しい真面目が素敵です♪


 ――ただ、ちょっと前から玲衣さんがスマホをノールックでスイスイ押してて、

 お顔はシャープで怜悧な目開けにパッチリ、私と、遥さん? をジジッと見て、見て……見比べてるっぽい? 気配にかたちを感じるのですが、

 ひょっとして可愛さや綺麗さのソムリエでもしてるのでしょうか。


 だとしたら玲衣さんも可愛らしいですね、私と遥さんの魅力を是非ともお聞きしたいです――けども、

 玲衣さんにすぐ尋ねたら恥ずかしがっちゃうかもですし、

 いつか時間が急ぎじゃない、落ち着いた場所でお喋りしてみましょう。


 今はともあれ、セネットさんとウォールさんを話し合いにお迎えしないとです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ