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3.軽い神様と話し合い

(Side:清浄院琴子)



 玲衣さんの反応、お返事はとても敏速で、

 私も気がかりにしていたことをすぐ神様、ウェルシュさん、に尋ねてくれました。


 だって〝事故〟とか〝死なずとも〟とか、あまりにも物騒ですからね。


 玲衣さんの声はキビキビしていて、早口気味でちょっぴり硬め、生真面目と緊張が私にも伝わります。


「そう、こちらこそはじめまして、ブランドン・ウェルシュさん。

 私はスポーツドクターの雷切玲衣よ、よろしく。

 で早速聞きたいんだけど、今助かった子はもう安全なのよね?

 危害を加えるようなことはどうかやめてほしいのだけど、

 ウェルシュさんにそのつもりは、ないのよね?」


「うん全然。あ、良い意味でね」


 当の神様はさっくりにこやかに、肯定と説明をぽんぽん返してくれます。


「そもさっきのアレもね、鉄骨のこと、アレこっちの世界での運命だったから、

 俺自身はホント危ないとか、無いのよ? マジでさ。


 でもまさかだよ、隠れてた俺の気配を見つけて、だよね?

 そこから事故現場まで辿って来てさ、運命を変えちゃうなんて面白いしありえないし、もー、超ビックリ。


 ライキリさんよりも動いたコの方がずっと強いから、やっぱりそっちの彼女が、俺見つけたの?

 いちお確認っていうか、答えてくれると嬉しいかな。あっ、アトちょっとごめんだけど、

 運命とか世界の作りとかメンドイのがあってさ、この世界が無理なく動いてくようにね、

 葵さんは少なくとも一回、一旦はこっちの方に転移して、死ななかったコトのごまかしとかしなきゃなんないのよ。


 なンで葵さんに関しては、転移がほぼ決定事項になってるワケ。

 転移しなきゃ最悪、てか必然的にね、〝死に直し〟の事象が発生しちゃうから。

 それイヤでしょ? 俺だってイヤだもん、神様でも生きたいよ? そりゃね。


 なんか話しっぱだけど、ここまでだいじょぶそ? 分かんないとかあったら、またなんでも聞いてね」



 ウェルシュさんの緩い声や表情、(ぜん)の気配やお体を見て取るに軽やか、なめらか、

 さきほどからずっと自然な感じで、嘘の様子は無さそうです。


 無論、気を抜く油断は禁物、彼は時間か世界かを全部不動にピタリと止めちゃうほどの方、

 きっと今の私よりずっと強いでしょうし、

 だったら嘘だって上手かも、演技も強いかもしれません。


 なので完全には安心できませんけれど、それでも信じないと始まらなさそうです。

 警戒は続けますけれど、出来る限りは友好を保ちたいですし、あとウェルシュさんの世界に是非行ってみたいです。


 だってウェルシュさんがこんなに強いのですから、私もそちらの世界で特訓とかすれば、もっと強くて綺麗になれそうです!

 知らないことを学んで磨いて、しっかりと身につけていけば、きっと強くも美しくも成れちゃいます、今までだってずっとそうでしたもの!


 あ、でもとにかくお返事ですね、せっかく私に問いかけてくれたのですから、

 声は穏やかなそよ風、楽しみ秘めて、正直な誠意で答えましょう。

 幸い時間も秒過ぎてません、ぱぱっと考えた甲斐がありました♪


「はい、大丈夫ですよ。丁寧なご説明とお気遣いを、どうもありがとうございます。


 改めて、私もはじめまして、清浄院琴子と申します。

 格闘技を生業(なりわい)としておりまして、

 強くなることに鍛えること、綺麗になること、自分磨きが大好きです♪


 ご質問のことですが、ウェルシュさんに察していただけた通り、

 私が今朝早く、起床直後からウェルシュさんが街を見ているご様子、

 ぴかぴかしたお強い雰囲気を、曖昧ながらもこの身で感じ取りました。


 正確には空気越し、空間越しにですけれど、知るべく広がった感覚は、確かに私のものですよ。

 今回はウェルシュさんがお強いおかげで、ほぼ自動で見て取るのが広がりました。

 なのですぐに分かりましたし、あおいさんを助けられて本当に良かったです。


 あとですね、個人的には転移というのにとっても興味がありますから、

 是非もっとお話をお聞きしたいです。あもちろん、あおいさんの安全確認も含めてですけど。


 私としては転移した世界で、新しい学びや鍛錬に邁進したいんです。大好きなことを、もっとしたいんです。

 もっとずっと、強くて綺麗になってみたいので、どうか引き続きのお話を、私たちに聞かせてくださいね♪」



 ほこほこふわり、と笑みながら伝えると、ウェルシュさんもにっこりスマイル、より友好的っぽく応じてくれました。

 物騒ごとにならないままに、きちんと話せるのは良いですね!


「オッケー、セイジョウインさん、ね。転移を前向きに考えてくれて、俺いまメッチャ嬉しーよ。

 解説も真面目にやっちゃうし、転移にあたっての恩寵もモチロンね、

 便利な能力とかアイテムとかさ、もう色々プレゼントするつもりだから、ちょっと期待しといてよ?」


 そこでウェルシュさんは左目ウィンク、茶目っ気クールにパチッと決めてくれました。

 親切をさらにくれるという、多分優しい神様に、私もお礼を伝えます……対価などがあるのか心配ではありますが、それはまた問うとか考えるとかしましょう。


「ありがとうございます、私も嬉しいです。

 ウェルシュさんからの贈り物に、是非とも期待させていただきますね」


「そっか、よかったー」


 彼がふにゃり、とスマイルを緩めて、そのまま和やかな真顔に変わる、間を置かずに声を続けてくれる。


「ところで俺ら初対面だし、日本語の漢字とか分かんないままじゃん?

 もし三人さんがスマホ持ってるなら、名前どう書くのか教えてくんない?

 別に魔法で情報抜き取るとか、そんな悪いコトは絶ッ対しないから。もしよかったらなんだけど、どうかな」


「私は()いですよ、承知しました。

 ちょっと世界は止まってますけど、玲衣さんやあおいさんにも安心してほしいです」


「あはは、それほんとゴメンねー。

 じゃライキリさん、葵さん、そっちの都合とかは平気そ?」


 先に答えたのは玲衣さんだった。今はもう早口でもなくて、クールに落ち着いてくれている。


「うん、私も賛成。あとあおいさんだけど、ちょっと待ってあげるべきかも」


 っと、確かにあおいさんの反応がないですね、というか気配がガチガチに硬いです、きっと怖がっちゃってます。心配です。


「そうですね、今は不思議の真っ最中ですものね」


 玲衣さんへ応じてから、目線ちらりとあおいさんを見てみれば、

 やっぱり表情がかなりに緊張、おどおど気味で、

 体も恐れにこわばって、もうほとんど固まってしまってました。


 ……ひどい事故に巻き込まれかけちゃって、死ぬはずだったとかきついこと言われて、災難だし可愛そうですね、彼女。


 なのでこういう時は、そっとな抱きしめ、ゆるいムードの触れ合いです、

 私の体は柔らかくてもっちもち頑丈、強くてたっぷり甘やかですから、しっかり活かして落ち着かせてあげましょう。


 ちょいとかがんでミニバッグを歩道に置いて、そのまま首と視線をこっくり上に、

 あおいさんの今だけ少し高い頭、おとなしくて可愛らしいお顔に垂れ目、弱ってる光を、しとり、と見据えます。


 にっこりほんわり微笑んで、声もふわりと、呼びかけます。


「あおいさん、ちょっとおおきめに触って、両手で抱いても、いいですか」


 すると彼女の瞳がしゃらん、と明るいびっくりに震えてくれて、

 声でも戸惑いながらちょっぴりほかほか、熱めぽんやりの呟きを返してくれた。


「え、あ、はい、好きです。ファンです、清浄院、琴子さん」


「あら、嬉しいです♪ 応援の力と優しさを、どうもありがとうございます♪」


 とっても可愛い告白に、喜びがぱぁっと広がります、笑顔もにこにこしちゃいます。

 それに、はい、って真っ先に、律儀な了承も伝えてくれましたから、

 私も遠慮なくファンの女の子、あおいさんとの触れ合いができますね。


「ではお礼も兼ねて、あおいさんを抱かせていただきますけど、

 もし嫌だったら言葉でも動きでも、どうか遠慮なく伝えてくださいね。

 私からも頑張って、あおいさんのお気持ちを読み取れるようにしますから」


「エッ、いえ、ぜんぜんっ! 嫌とかないです、すごく光栄で、思い出ですっ!」


 ……私が言葉選びに失敗したのか、焦った真心を明示してくれました。

 垂れ目もパッチリあわあわしてて、少し申し訳なくもなりますが、

 まずはゆったり抱きしめてあげましょう、

 慌てた気持ちも残ってる怖さも、ぜんぶとろかしてほんわりさせましょう♪


「ありがとうございます。私も今すごく楽しいですから、もっと楽しくふわふわしちゃいましょう」


 かがみ気味の姿勢をゆっくり少しずつ高く、私のおっきな両腕に両手、表面はかちかちな両手の平を広げて伸ばして、

 あおいさんの細腕のそとからすんわり、回してゆっくり抱え込んでいきます、

 あおいさんもノースリーブワンピでちっちゃな撫で肩がゆるりと見えてます、可愛いです、

 私もどちらかと言えば撫で肩ですけど、筋肉たっぷりもにっもに♪なので、

 見た目ちょっとだけするりっとしたくらいなのですよね、肩も隆々と強くて柔らかいんです♪


 だからあおいさんの可愛さと、私の可愛さとは個性違いですね、

 まあ強い力のやわみと美貌があるのは、確実に私ですけれど♪ あっ、これよくないですね、自慢が過ぎますね反省です。反省……。


 っと、思ってる内にあおいさんのちっちゃ可愛い撫で肩が近いです、同じくほっそりなお体も、お顔の照れも近いです、

 あおいさんどきどき真っ赤です、心臓の音までアップテンポにトクトク、

 かなり速くさせちゃったのは申し訳ないですが、けれどもほんとに可愛いですねっ!♪


 止まらずゆっくり、抱きしめる柔らか両腕をすぅすわ伸ばして、撫で肩を越えて背中に回していきます、

 あおいさんは嬉しそうな緊張、いっぱい照れてくれてる優しさがありがたいです、私も遠慮なくできますしもう着きました、

 コンパクトなお背中にそっと触れます、私は肌硬い手の平だから決して痛くないように、

 内側の筋肉柔らかを伝える感じに、もにすぅ、すぅもに、ゆっくり抱きしめて行きながら、

 彼女の左肩の上、私から向かって右のところに、私の微笑みを顎下からするりと乗せます、胸も体も寄せてするりと合わせて、

 ふわふわの柔らかさをいっぱい伝えてあげます、

 私の大きめFおっぱいのふわふわぱっつり!元気もキュンキュン伝えて、

 手と腕から背中のたっぷりもっちり筋肉も柔らかい力をほこほこ送ってます、ふわふわきゅむにっ!♪て安心パワーに、

 あおいさんを抱きしめられてます。


 あおいさんは頬の赤みも引いてきて、

 今は心臓の音もゆっくりとぅ、とぅ、落ち着いてリラックスしてくれてます、

 表情もちょっと眠たそう、気持ちよさそうにとろんとしてくれていますうら、私こそ嬉しいし光栄です。


 ……それからも10秒くらい同じ姿勢でやんわり、

 私の強い体でふわふわ、もにもに、抱きしめたままあおいさんと一緒に過ごして、

 すっかりとろけておちついてくれた彼女をまたそっと離してあげた。


「はい、お疲れ様でした。あおいさんは可愛くて、優しいですね」


 すると彼女はほんのり桃色のお顔で、


「ありがとう、ございました。わすれません。ぜったいに、わすれません……!」


 夢見心地に呆けたような、でも確かな感動を伝えてくれたから、

 私もじんわりほっこりと、気持ちがたくさんあたたかくなれました。


「こちらこそ、ずっと嬉しかったですよ。いい経験ができました」


 明るい心はそのままにミニバッグを拾い、せすじを伸ばしてすっくり立つと、

 待ってくれてた神様に向き直ってから、ちょっとした謝罪を送ります。


「ウェルシュさん、どうもお待たせしました。

 あおいさんはきっともう大丈夫ですから、みんなでお名前交換に行って、

 それからまたお話を聞かせてくださいね」


「オッケー、サポートありがとね!

 雰囲気落ち着いて俺も助かるよ、ほんと!」


 と、ニッコニコのサムズアップを見せてくれた彼に、こちらも緩い笑顔が浮かびます。


 一方、玲衣さんは私の後ろでもうミニバッグ――ちょい紫なライトブルーのホーボー ――からスマホを取り出す動き、

 気配を取ってくれていたから、

 私も振り向かないまま自分のミニバッグ、メタリックなシルバーホワイトの角形(かくがた)をオープン、

 持ち慣れたスマホ、マットブラックのをしゃきしゃき取り出します。


 あおいさんも水色ワンピのポケットから、ご自身のスマホを取り出して、

 私たちはそのままほぼノータイムで、スマホの画面から皆の名前をお互い、

 そしてウェルシュさんにも、はっきり伝え合うことができました。


 葵遥さん、すくすく成長できそう、道を行けそうで良いお名前です。


 実際にそのことを言葉にしたら、彼女はほっぺたをぽぽっと赤くして照れちゃいましたが、

 そこがまた可愛らしくてなんだかあったかくむずむずしました。


 玲衣さんの提案でアドレス交換も三人一緒に出来て――葵さんはまたあわあわと恐縮していましたが、やっぱり可愛いし優しいのが分かりましたから、私と玲衣さんでほのぼのにこにこ、気にしないでと説得しちゃいました――、

 私はこころ朗らかに、ウェルシュさんとの話し合いを再開します。


 ……今は玲衣さんと遥さん――彼女もお名前で呼んでもいい、と、恥じらい気味な許可をくれましたので――のお二人も、

 幾分落ち着いてくれてるのがほっとします、文殊の知恵にも期待しておきますね♪



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