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20.伝説の伝言ゲーム

(Side:清浄院琴子)



 わ、いよいよセネットさんの登場です、気持ちわくわく上がりますっ、めちゃ楽しみですっ♪

 でもケネスさんも凄くお強くて立派なかたですね、

 溢れる才能とお力で、厳しい土地の皆さんを安寧まで連れて行ってあげたのですから!


 動機が自我やプライドからの自己実現、自慢したがりだとしてもそれがやる気と活力になってたなら万々歳ですし、

 (じつ)の成果として大陸北半分、統治地域の全体へ優しい豊かさをもたらしたことはもう本っ当に素晴らしいです、

 ほっこりあったかく驚かされちゃいます。


 ただ、だからこそケネスさんを見た時、お会いした時には強さを感じなかったのが気になります、

 セネットさんに言われて内側を見たり感じたりするのはやめてるのですが、

 それでもマシューさんのお話ほど凄くて強いかただったら、そして見るのが私だったなら、

 (なに)かしらケネスさんのお力に気付けそう、強さを感じられそうなものです。


 あ、マシューさんにも言えることですね、彼もセネットさんと同格の軍高官さんなのに、

 〝見た目おだやかそうなイケメンで、細身ながらきちんと鍛えてる〟という風にしか分かりませんでした。


 不思議でちょっと悔しいですが、ひょっとしたらお二人はウィザード、魔法使いさんとのことですし、

 強さや力を直ぐには見て取れないように魔法で隠しているのかもしれません。


 あるいは魔法以外のスキルや、植物の精霊、光の妖精といった種族由来の能力なのかもですが、

 手段がどれにせよますますお強くって素敵です、油断無しな慎重さが()いですね!


 あとそう、お二人が別な種族であることです、

 ケネスさんは魔王、マシューさんは魔王子という親子の関係ですが、

 でも種族は精霊と妖精ですから、ひょっとしてマシューさんとの血縁はないのでしょうか。


 この世界、レネアシャに種族を越えた血縁が発生しうるのかはまだ分かりませんが、

 もしかしたらケネスさんが、過去にマシューさんの才能や努力を見込んでご養子とされたのかもしれません、

 なんとなく雰囲気も実父実子とは少し違うような気もします。


 マシューさんがケネスさんへ向けてる憧憬や尊敬、口の利き方も、

 親子ではない遠くの距離から高みを見上げてるような感じですし。

 

 ただ勿論、ご家庭により多種多様な差異もあるでしょうから、

 これはあくまで私個人の感想止まり、気軽に全部言えることではありません。


 養子かどうかのご関係だけを、丁寧簡潔にお聞きするくらいです。



 それと少しばかり、マシューさんのお話の中で気掛かりなところがありました、

 マシューさんが気付かれていないか無意識に目を逸らしているケネスさんの欠点――ケネスさんご自身も分かってないかもですが、とにかく彼の美点が裏目、

 〝様々な大事業を、自分からは、自分一人でしかやらなかった〟だろう悪い一貫性です。


 まずケネスさん、ほぼ一人きりで活躍されてたらしいのに〝配下の大集団〟って、どうにも寂しい矛盾を感じます。


 聞く限り部下や仲間のひと、さらには国民の皆さんと協力するのがあまりに不得意っぽいですし、

 矜持と傲慢と人間不信がごっちゃになってたのではないでしょうか? あとひょっとしたら、オーバーワークからの厭世感も。


 また、国民の悪感情だって、ケネスさんは替えがきかない人材かつ集団のトップなのですから、

 いっそ部下のどなたかに頼んで手厚いフォロー込みのスケープゴートになってもらうか、

 そうまでしなくてもせめてバカンスや悩み相談に付き合ってもらったり、(なん)でもいいから話を聞いてもらえばよかったのではないかと――結果論ながら少々気の毒、なおかつ残念に思います。


 とりわけ人間中心の南部国家、オネストシャイン聖王国……もしくは(せい)王国? から無理矢理に土地を譲らせた件への疑問が大きいです、

 ケネスさんの持つ戦いの力や、豊穣を生み出す開拓の力は全くもって秀逸なのでしょうけど、

 聞いたお話でも今のお茶会を思っても、大部分の交渉力は低いように感じますから。


 もし本当にケネスさんのみでやり遂げたのなら、

 彼に扱えただろう有効な手段はそれこそ、戦う力と開拓の力のどちらか或いは両方を交渉材料とすること、だったでしょうけど、

 これらはまあ事実ではないでしょう。


 戦う力で脅したならばオネストシャインとのいざこざが発生したはずですが、

 でもマシューさんはそんなこと一つも言ってませんし文句も皆無、むしろ相手国を称賛してましたからきっと違います。


 お話を聞かせていただいた感じ、どうもマシューさんはケネスさんにめッちゃ心酔されてますので、

 ケネスさんの〝偉業〟こと、他国からの土地の奪取においていざこざが発生していれば必ず自国側、というかケネスさん一個人の擁護と相手国の批判に取り掛かったでしょうし。


 では緑化と開拓の力を交渉材料としたか、これも多分違います。

 マシューさんがやはり敬仰(けいぎょう)の意をもって、

 〝ケネス陛下を利用した、道具みたいに能力を搾取した〟的な批判や文句を言うでしょうからね。

 土地を取られた相手国からすれば、対価としてケネスさんのことをそれはもう、ギリギリまで使い倒しそうです。現実にはケネスさん、提案しなかったし使われてもなかったでしょうから、その点はまあ安心ですけど。


 勝手な予想ですが、当時ケネスさんには見えないか、見ても気に掛けない所で部下のひとたちがとてつもなく頑張ってくれたのでは、と思います。

 それか外部に超有能な協力者さんが居たか。仮にこちらの場合でも、部下のどなたかからパイプが通ってそうですね。


 勿論、ケネスさんご本人だって真実頑張られていたのでしょうけども、

 部下や仲間のひとたちも出来ることを出来る以上に、持てる能力を振り絞って仕えてくれていたのでは、という気が致します。


 特に当時の余裕無いケネスさん相手だと、お返事し合える協力というかもう、一方的に仕えていくしかなかったし、

 関係のキャッチボールがほぼ全くできなかったでしょうね、という可哀想な推測も浮かびます。


 ケネスさん、おしゃれはお上手ですしセンスも()いかたなのですが、

 そこもまだ自分を見据える、という所へ大方とどまっているのかもしれません、昔の時も、今もなおです。

 思い流した予想には全て、お茶会から見える色々も込みですし。例外はセネットさんと、ひょっとしたらマシューさんもでしょうか。

 とても近いご友人さんやお身内さんには特別、気遣いや優しさを発揮されているとも感じます。


 でもまあ、ケネスさんの見る世界、ケネスさんの動く世界がしばしば狭くなりがちとは言え、

 彼が凄まじくお強くて、大業を立派に成し遂げられたのは確かなことです。

 セネットさんと仲良しっぽいのも、きっと認めあってるだろうことも既にほんのり分かります。


 あとさっき私に七光りとか外付けの権力とかどうこう言ってたワケも、

 ケネスさんがやはり一人でやることを矜持としている、とてもこだわられているからだ、って理解できました、納得も。

 いずれ勝てそうな時、闘えそうな時に彼を叩き潰すのは変わりませんが、

 闘う相手の部分部分が見えてきたのはほっと落ち着きます、安心して喧嘩できますし、喧嘩したらもっと理解し合えます、

 セネットさんの次くらいに楽しみです♪


 ただ今は喧嘩じゃありません、マシューさんのお話が大切です。


 お二人をどんどん分かっていくために、いずれセネットさんに私へ来てもらうためにも、

 〝魔王さん伝説feat.セネットさん〟をしっかり、すっきり、最後まで快く聞きましょう♪


 私なりに心に()めて、思って考えながら、です。



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