18.魔王さん・ゆるゆるディベート
(Side:清浄院琴子)
セネットさんのかっちり粛然な手並みで私にお紅茶を準備してもらえたら、
彼は「清浄院さん、どうぞ」とカップを元の位置へ低空水平移動、さらっと持ってきてくれましたので、
私も「はい、ありがとうございます♪」って、微笑みほっこり答えます。
セネットさんが軽く頷き、「うん、ではまた」と返してくれたときも私たちの声以外に音はなく、
カップをそっと置いてくれたのもまた楽しいです、心が自然に高まって、浮き浮きふわふわ落ち着きます。
なので早速お紅茶をいただきます、セネットさんが背すじも歩みも真っ直ぐピッと、席に戻るのをちょっとわくわく見ながら声緩くもきちんと宣言です、
「美味しそうです。お紅茶、いただきますね」
意志を場に通して誰かのお返事は待たずに、白磁きらつるのカップ横、ひとつ小さく丸まってるハンドルを左手指で、そふつぃ、スつり♪ と確かに摘まんで、片手持ちのまま口元へ揺らさず上げます、来ました♪ とってもなめらかそうなお紅茶を、私もなめらかにいただきます。
一口分のほかほか爽やかな香り、甘くもキュンと透けてるフルーティーが唇から舌、喉にさらこく通ります、あ美味しいです、見て感じた印象ぴったりにストレートでもすんなり味わえます、すっきりほのかな甘みの温かさ、奥深くとろりと寝転んだ苦みに渋みがするーっと明るく抜けてきますあとくちもさっぱりです美味しいですっ、
紅茶味ほわシュッて優しくもキレあります、ほんと飲みやすくてかなりこれ、好きです♪
なので私自身もあったかくほわふわ、すっきりワクワク楽しくなれてっ、あ、にこにこ正直が出ちゃいます恥ずかしいです、笑みまでもっとすぅきら浮かびます、自然に広がって咲いちゃいます、でも美味しいので二口目もいただきます♪
気分良いまま恥ずかしいままにこにこ、私は所作をゆっくり続けて、も一度お紅茶をさらふるさぁら、といただきます、あ♪ やっぱり美味しいですコクコク飲めます、ほっとしますキュンふわッて上がります♪ ……ちょっとだけ、多めに飲んじゃって恥ずかしいですね、今はこの辺りにしときましょう。
ちょっと気を抜いたかも、恥ずかしいかも、な心のまま、笑顔をすつ、と静かに緩めて私はカップを丁寧めに置きます、快い無音はけして崩さないように、はい♪ そろふ、って品良く置けました、きっと私もムードも大丈夫、ですっ。
――と、私が紅茶の楽しみを一段落した時、正面のケネスさんからまた月照って乾いた夜の声が、カラリと私に掛けられました、表情はなんだか面白がるような……どうにも意地悪そうなひんやりの薄笑みで、お茶会がこれからどうなるのか少々緊張します、不安になります。
「気に入ってくれて何より。リオにはいつも注がせてるからな、そりゃウマいだろうな」
あっ、不安とかもう消し飛びました、むかついて叩きのめしたいのが戻ってきました。
〝いつも〟ってなんですかそれ、私に見せつけて思い知らせたいんですか? 上等です、私こそ私自身の強さを、綺麗さを、セネットさんにきっとふさわしいのを! この魔王さんに思い知らせてやりたいです、あっいえ、
でも今はお茶会で、許せませんけどっ、でもっ、とにかくがまんです。お互いの立場も、いえケネスさんと一緒くたにはされたくないですけれどっ、でもお互いの立場や都合や、この世界の暮らしやすさとかが関わってきますから、そうです遥さんと玲衣さんっ、お二人のためにもココは……ココも? 何度も何度もむかつきますね、怒りを投げ締めに拳足でぶつけてやりたいです、じゃなくてッ、
決意してがまんですっ、まだ微笑みもしとやかふわり、私はぜんぶ大丈夫ですから何か適切な話題を返しましょう、
えっと今私たちこの世界というかこの国、ウェルハート魔王国に居ますし簡単でも歴史を聞きたいです、できればレネアシャ全体の歴史も交えて、あッそうです勇者が要る原因、災厄とか元神とかがどうして悪い事柄なのか、なにを仕出かしたのかも知れるといいですね、
というかそっちのが差し迫って大切ですから早速聞きましょう、ケネスさんに――よりも、セネットさんの声でお聞きしたいですけど礼儀とか場の流れとかで残念ですがまあ、はじめは向かいの彼ですねケネスさんに言わなきゃです、
まだ彼が言い終わって0.3秒くらいですし考えを順調に進められました、じゃあ言葉をさらりっと手短に伝えちゃいましょう、だってケネスさんとはにっこりが短いのがいいです、あんまり好きではありません。
「はい、とっても美味しいです。お互い遠慮なしということで、実は少しお聞きしたいのですが――」
ですがそこまで言い掛けた時、玲衣さんが珍しくも早口でキパリ、冷ややかな声を挟み込んで来ました、
話し始めに一応ことわってくれましたが、でもちょっとびっくりしちゃいます。
「いやその前にゴメン、ケネス陛下あなた、さっきから琴子に不満でもあるのでしょうか。
私の気のせいならいいのですけど、少しばかり来賓に対してぞんざいが過ぎると思います」
えっ玲衣さん、それ言っちゃうんですか!? 驚きですし心配です、笑みもスムつ、となくなりますし真顔にもなります、
もし何かあった時に玲衣さんを守るにはセネットさんに無理押し含めて頼らせていただかなきゃです、
友好的に頼れる強いかたがこの場ではセネットさんしか居られませんし、ご当人にはほんとに申し訳ないですがでもそんなこと考えてる場合じゃないんです、玲衣さんと遥さん、それに勿論私自身も、予期しうるトラブルからきちんと守らなきゃいけません、
あッ玲衣さんまだ言ってますッ、ケネスさんの遠慮なし発言とか、見えてる、見せてる? フランクな態度とか、そんなの多分社交辞令ですよ!?
「ご無礼を承知で言わせていただきますが、
琴子に対するあなたの言動は場の空気や円滑な交流を阻害する要因にもなり得ます。
もし私たちの信用が無いのでしたら、理由や改善案をきちんと仰っていただき、
勇者という世界の協力者として、どうか一緒に考えさせてくださいな。
出過ぎたことを申しましたが、心よりお願い致します」
――そこまでで言い終わったのか、玲衣さんは背を前に深々と、ケネスさんへお辞儀をなさいます、と彼女のスンと真面目なお顔が私の方へサユィ、とすんなり振り向いて声、落ち着いたシトヤカな音色をフォローするみたく送ってくれました。
「大丈夫、この感じだと彼は怒らないから。まだ望みに沿ってるしね」
「あ、はい。ありがとうございます」
いえあの、とっさに答えましたけど、玲衣さんまたすごいお相手に失礼かもなコトなさってますね!?
お返事も待たずに首を私に、横あいにそらすとか、
それ軽んじる態度や対話拒否って受け取られても致し方ない気がしますが果たしてご説明通りに怒らないでいてくれるのでしょうか、
ほんと玲衣さんとケネスさんは先に医療局でなに話していたのでしょう、あでもひょっとしてもう言いたいことスキに言い合える的な仲良しさん同士なのかもですっ、じゃあお二人とも安心そう――ではなくてッ、あくまで万一の〝かも〟な仮定じゃないですかっ、都合良すぎる希望はダメです、私っ!
……私が顔色まだ穏やかめの静謐ながら内心でこう、思いを焦り走らせていると私の返しから0.2秒後、実時間ではほぼ直ぐにケネスさんの軽やか乾きのお声がペカペカ明るく聞こえてきました、
そちらにつぃと姿勢を正せば見えた彼の表情も面白がりぽいニコヤカです、少なくとも怒気や敵意はおもてに表れてませんしほんとに大丈夫な? 感じです。
「ああ、その通りだよ。さっき玲衣とだけで喋って喋られてした時は、もっと冷徹にヒートアップされたからな。
真っ正直に聞けて俺は楽しかったが、清浄院さんの動向に口出ししたことが玲衣はお気に召さなかったらしい。今とおんなじで、親身が過ぎてるんだろうな――だがまぁ、そこも面白いよ。
とにかくな、清浄院さん」
ケネスさんの薄笑みが三日月みたくサァッと揺らめきニンマリ、意地悪アーチをはやばやと描きます、お声もさらにカララッと高まります。
「玲衣は呼び捨てまでスグ許してくれたのに、清浄院さんへの文句は一っつも許しちゃくれないんだ。少しだけ妬けるよ。少しだけ、な」
「はあ、なるほどです。私も玲衣さんが好きですし、お互いそういうとこありますからね、あっ」
いけませんつい思うままに言っちゃいました、ケネスさんのお立場に比して対等すぎたかもですっ、早くお礼を、お礼から伝えなきゃです、ほっこり真顔でさぱさぱ、声にします。
「いえ、なによりもケネス陛下から、広いお心のご親切をいただきまこと嬉しく思います。
玲衣さんと平穏なまま話し合ってくださって、重々ありがとうございます」
そしたらケネスさんは声と笑顔にちょっぴりの嘲り、誂いを込め、
「はっ、硬いなァ。だが玲衣とは別の味で面白い。気のつくろいを引き剥がしたくなる。
なぁ清浄院さん、さっきからの疑問に突っかかりに文句を、いま直接再開していいか?
あんた自身に聞かせたいし、お返事云々を聞いてみたい」
と返してくれましたから、別に断る理由も状況もありませんしすぐ承諾させていただきます。
見て聞いてる感じケネスさん子どもっぽくて……向かう相手にまで正直すぎて? もう怒るまでもない白けに悠然が湧いてきました、サラッとクールに落ち着きます、きっと彼より私のが上です♪
私は微笑みをまたふわりっと咲かせて、声も軽く柔らかく送ります。
「ええ、大丈夫ですよ。是非ともお聞かせくださいな」
伝えると、ケネスさんの表情が上がり眉の真顔にシトツ、って締まり、割に苛立った風になりました――これが素でも演技でも少し呆れます、おいくつの王様かは知りませんけれど無警戒に若すぎるかたに見えますね。ただ現実として立場の超高いお相手ですし、セネットさんのお友達ともあれば個人で戦っても凄く強いでしょうから油断は絶対に禁物です、
ほんといざという時はセネットさんが頼りです、セネットさんの善意や良心、いつもあたたかな優しさをもっと、真正面から引き出させていただきます。
セネットさんを都合よく利用して、きっと嫌われちゃうかもですけど、でも先ずはっ、私たちの安全の方がずっと大切です、決めています――あ、ケネスさんのお返事が来ました。空いた間隔はちょい長めに0.6秒、声にも多少のカタさ憤りが通ってます、やっぱり隙があって付け込めそうなかたですね。
「そッか、あァじゃあ伝えるよ、手始めに玲衣にも言った急ぎっぷりからだ。
清浄院さんが総合格闘技っての、特に男子の部へ転向してからヒドい短期間で、世界制覇をやっちまえたことだ。
ストレートに行くが、清浄院さんはそうするために親の七光り、会社の力を散々使い倒したんだろ?」
「はい、そうですね。ずっと協力していただいていますし、いつもすっごくありがたいですよ。
クールな応援が嬉しくって頑張れてっ、身も心もぐんぐん高まります、癒やされる以上に強くなれるんです♪」
ほわさらぴっかり答えつつ心はなめらか、すー、と動かして思います、
ケネスさんがもし本心から言ってる、顔も見せてるなら忍耐不足、嘘の策略なら礼儀や印象に無思慮、
どちらにしても〝失礼〟という弱みから多かれ少なかれ貸しが作れますし実際着々と覚えて理解して行けてます、
いずれ話しやすくなりますね♪
当のケネスさんは右眉を僅かですがヒクピ、と動かし、怒った雰囲気をさらに確立させています、間を置かずに乾いた森と落ち葉のお声をカシャザッと放ってきてくれます。
やっぱりどこも分かりやすいですね冷え冷えグリーンのイケメンおこさん、お顔もお声もお言葉も、お手にお体のパチつわ、ってしたハリ、こわばりも♪
「なァ、まるで良いことみたいな口ぶりだが、それはどうなんだ。
真剣勝負に恥ずかしげもなく外付けの権力を持ち込んで、じゃあ清浄院さんの実力はどこにある?
審判でも買収したのか?」
あら、また貸しが増えました。気持ちが割にかちっと落ち着きますね、ただ両隣の玲衣さんと遥さんがその、すっごくひんやりしてムードに顔色をぴぃんキリィッて張り詰めさせてるのがちょっとかなり気になります、
お二人とも正当に優しいからこそ怒ったり心配してくれているのでしょうけど、別に今私は楽しんでますし、どうか穏やかー、にしてくださると嬉しいです、ほら私ふわふわ微笑んでますよ、心からですし、声もです♪
「いえ、そこまではしてません。
調査して問題がありそうでしたら、その時は公正な判定をしてくれるように心構えを改めていただくか、
もしくは他のかたに代わっていただいたくらいです。
あと審判さんだけでなく、スタッフのかたがた全員を調査させていただいてはいます。
なので言葉の捉え方次第かもしれませんが、
不正や反則は私にもお相手にもスタッフさんにも一切存在したことがありません。
試合も私がすぐ勝って終わりますので、
相手のかたが不慮の反則や事故を行ってしまうような暇が無かったですし、
これからもきっと無いだろうと思います」
私は笑みをぱぁと明るく、にっこり広げて持ってる強さ、持ってる自覚を楽しみます、
声もお空に快く上げちゃいます♪
「私は格闘で動くのがとっても強くて、体もやわらかーく♪ 超しっかりしてるんです♪
玲衣さんが見てくれてるのもありますし、怪我せず疲れず動きを止めずに、いつだって元気いっぱいなんですよっ♪」
あ、ケネスさんがちょっとだけ目を大きめにして頬へ微熱の血色、あからさまに見とれて聞きほれてくれてます相変わらず不用意ですね貸しプラスです、頬の細めなふくらみスラリを薄ピンクに染めてシィンと無言、少しだけポト、って開いたお口で息飲み・息飲み・驚いてます、彼の返しも止まって都合良しですね。
お茶会の空気が静かな内に、気持ちを通させていただきます。勿論セネットさんにもお伝えしますっ、あっセネットさんきっぱり真面目顔ですけどほっぺ赤いです嬉しいですっ♪ すっきり丸みの健康ハンサムほっぺが、ぽぽっ! て好意を示してくれてます、セネットさんの正直は大好きです♪
私に在ったちょっとの寂しさも、全然綺麗に吹き飛んじゃいます!♪
「だからこそお相手のかたがたにだって、皆さん客観的にはお強いひとたちでしたが、でもすぐに勝ててきたんです。
短いスパンで大連勝です、どこに行っても私が一番です。
そして必ず、これからもそうなります」
けれど、ふふっ♪ 今はセネットさんへのお気持ちがあります、
セネットさんはもっと素晴らしく強いかたですから笑い声までちっちゃく零れちゃいますっ、
にこにこパワーが止まりませんっ♪
「すみません、笑ったのは今とても楽しいからで、けしてどなたもあざけってはいないんですよ。
私はただセネットさんが好きで、強さにもどきどきしてるんです。
セネットさんにときめいていますから、すっごく勝負してみたいんです。
勿論今は勝てないでしょうし、闘ってもセネットさんへの失礼になるだけですからせめて一日後、
今夜レネアシャで寝て成長させていただいてからのことですが、
でもその時が来るのがめっちゃめちゃ楽しみで、もうっ♪ いえ私から来させますけどっ、
とにかくセネットさんと勝負したいんですっ、格闘の試合か、訓練場でさっきやったみたいな試合か、それかいっそのこと喧嘩ですっ♪
ほんとどれでも良ですっ、だってどれでも絶対ぜったいっ、体きゅんって幸せですからねっ!♪ あハートもですよ、芯から高まってきゅんきゅんです♪」
では一応魔王さんに了承を得ましょう、セネットさんのご上司ですからさすがに聞いとかなきゃですね。
「なのでケネス陛下、私とセネットさんが喧嘩するのを、どうかお認めくださいね。
ご都合を付けたり場所を準備したりとか、よろしくお願い致します♪」
彼に伝えると少しのきょとんな間を、表情にも時にも置いてから二秒――深緑の視線は未だ薄くまっすぐ、私をぼんやりじーっと見続けながら、のんびりな寝起きっぽいお返事をいともゆるゆる紡いでくれました。
「は、えぁ、うん。そうかきっと、リオとも合うし付き合え、なんでも」
わ、嬉しいです♪ 上司かつ国家トップのかたからお付き合いにオッケーが出ました、やっぱり恋人チェックをされてたんですね。セネットさんを大切にしてくれていてそこは嬉しいです、ありがとうございます♪
なので二つの意味合いで、お礼の言葉を送ります。きらきら笑顔をふわぱっ、と照らします――セネットさん、見て聞いててくださいね♪
「はい、ありがとうございます♪ ケネス陛下の深いお心遣いへ、決して恥じないようにしますね。
セネットさんのお答えを聞いてから、もっと正式なお付き合いを目指します。
喧嘩するのも楽しみです♪」
ケネスさんはまるで夢うつつの態度変わらず、私に了承を続けてくれます。
「おぅ、そっか、また分かった。付き合って喧嘩な、それもいい。え? なに、喧嘩? なんだそれ。えっ?」
あ、どうも目がシッカリしてきました、思慮や理性が戻りかけてるみたいです、けどまあそれはそれで良しですね。流れに任されるだけじゃなく、みんなできちんと納得に向かえます。
なのでケネスさんの怒ったようなびっくり顔から、森を揺らす突風めいた焦り声が聞こえてきますが、また適切に対応していきましょう。
「いや、なに言ってッ、ほんとなに言ってたんだ!? 認めるわけッ、認められるわけないだろ喧嘩とかッ、付き合いもだ! 当たり前に駄目だろ喧嘩とか持ち出す女を、リオに付き合わせるなんてとにかく完全に、駄目だ! 危なすぎる! リオが危なすぎるッ! これは全部却下だ、さっきのは反故だ! 危険要素の塊みたいな女を、断じてッ、リオとは付き合わせんからな!」
わー、なんだかセネットさんをすごい守ろうとしてますねこのかた、心なしか態度や言葉に執着ぽいのも感じます――ちょっとむかつきますね。
ケネスさんが主張されている〝セネットさんへの代表者気取り〟を投げ飛ばして叩き潰してやりたいです、
先ほどとは別の怒りがめらめら湧きます。
お二人のあいだに何があって今どんな関係かは知りませんが、
上司部下でも友達同士でもそれか恩人同士でもケネスさんは確実にやっつけます。
セネットさんとの喧嘩はやっつけ合う楽しみですが、ケネスさんには義務感です、特に受け止めずにやっつけます、黙らせます。
ただまあ、関係や思い出の詳細はセネットさんかケネスさんかに聞かないとですねっ、
セネットさんをもっと理解して、分かり合っていく手助けになりそうですから♪
そう考えると少しわくわくします、ケネスさんよりもセネットさんのお声で是非に聞きたいことですね♪ でもセネットさん、先にごめんなさいっ、私が望んだのにムッとしちゃったり、ひどくやきもちしちゃうかもしれません、いえ思うだけじゃなくてその時が来たらきちんと声にして頭を下げて、セネットさんに謝らないといけません、恋の誠意はほんとに、絶対ですっ。
あ、けどケネスさんはどっちでも、どうでもいいです、セネットさんが気にするなら謝ります、ええ。
もう立場とか権力の問題も全部原因さんをやっつけて解決です、玲衣さんも遥さんも未来は明るいです。
でも未来より先にとりあえず目の前です、今はお話し中のお相手が残念、ケネスさんですし、
私の笑顔を真面目ぽくすっきり静めて、さらっとお答え致しましょう。
くるくる考えてた時間も秒未満で上々、会話に間を空けることもなく、意を涼しい声にしてそよがせます。
「いいえケネス陛下、安全第一のお心掛けが大切なことには同意いたしますが、しかし恋愛は時に引けないものです、
ほかほかあったかい飛び込みも、そっと静かな気遣いも、全てが押しに向かうことだってあるんです。
好きの純粋はほんとに色々で、きっとどれもが間違ってないですから。
勿論TPOはありますけれど、その理性だって尺度のひとつです。常なる適用は無理ですし、むしろ絶対にしちゃいけないことですよ。あらゆる大切を心に保った上で、覚悟して選ばないといけません。
私も楽しさに責任は持ちます、喧嘩して好き合う自信がはっきりとあります。
だって私は綺麗で可愛くて、元気やわらかーく、超強いですからね。
あと、もう一つの大前提として、セネットさんご自身の意見も聞いてあげてください。
私もすごく聞きたいですし、どうかお願い致します」
実際、セネットさんは見た感じハラハラした風な焦燥の真顔であったかほっぺを赤々継続中、
ちりりふる、と揺れる黄昏の瞳に、ぎゅっと真っ直ぐ張った眉、キュウムと引き締めた広め整い唇へ照れと恥じらいの可愛さをおっきく、ぽわーっ! と明瞭に添えてくれています。
緊張中のかたに思うのは不謹慎かもですが、でもほんっと♪ 真面目可愛くて純真誠実で、好きです、素敵ですって気持ち上がります、もっともっと伝えたくなっちゃいます♪
ケネスさんはまだ頑固に声をカチカチ、乾いた熱帯夜みたいに仰ってますが、
そろそろお隣のこだわり対象本人をしかと見てくれないでしょうか、まじめに。
「ふざけんな。駄目だ。今言った通りに、リオを巻き込むようなヤバい付き合いも喧嘩も絶対、させねえ。
魔王として終わらせたことだから、清浄院さんはリオを諦めろ。いいな」
――全っ然良くないことですので、NOの即答をすわさー、と返します。あともうセネットさんへ尋ねに掛かります。
「え、嫌です。好きですし、私は色んな美と力を身に付けてますから、きっと相応しいと思います。
なので今聞きますね」
「えっ、ハ? おい勝手に――」
無視してセネットさんの生真面目純情なお顔、ぴっしりあわあわの赤面を軽くすぃ、と振り向き、
彼と目を合わせて問いかけます。
「セネットさん、ひとまずお付き合いしちゃいましょう、続けるかどうかなんてそれから考えればいいです。
勿論いっしょの喧嘩、勝負の闘いはしますけど、セネットさんのご意見も最大限尊重しますから。
どうでしょう、ケネス陛下の命令ではなくて、セネットさんの意志こそをお聞きしたいです」
するとセネットさんはほんの微かに両肩をスピ、と上げて固め、くっきりな目元を悩むように、さち・つむ、と細く伏せ、
けれど口元はささやかに開き、こころ寂しくなるくらいに静かで確かな息を、るぅる、と長く吹きました。
じっと考えてくれている沈黙は二秒、三秒と真摯に続き、しかし四秒が来る前に彼は肩下げおもてをちょい、上げ直し、目もキッと格好良くお開きになって、不落の線香花火みたいなお声を熱く品良くしっかりと、確かに聞かせてくれました。
「分かった、是非そうしてみよう。
現状を考慮し、提案を理解した上での……すなわち事態の解決を優先してしまった、悪しき不純が入り混じった決断だが、
私個人の思いとしても、清浄院さんは素晴らしくて、すべて魅力的だ。
また勝負事については、将来的な意味合いで承諾させてもらいたい。
今はまだ時期尚早ではあるが、お互いの安全や確実な治療を将来にこちら側で保証することができれば、
その時をタイミングとして伝えよう。
また補足すると、〝こちら側〟というのは、私の持っている権力や関係性も加味してのことだ。
恋愛には未だ分からないことも多いが、しかし清浄院さんを見ていると、
時にはギリギリまで手段を尽くすことも必要だと思ったんだ。
私個人に出来る範囲と、協力者を得られる範囲の両面において、
不幸を呼ばないだろうギリギリまでをどうにか活用していきたい。
最後になったが、いつも私を好きと言ってくれて同じ時間を楽しんでもらえることと、
私自身も楽しめることはとてつもなく嬉しい。
とてつもないがために混乱もするのだが、しかし優しくありがたい混乱だと感じる。
だから清浄院さん、今の応答で進んだ関係も含めて、これからもどうかよろしくお願いする」
「はい、私からもよろしくお願いします」
殆ど反射でさらさっ、と答えちゃって恥ずかしくって、でもそれは心に留め置き、今はとにかくもう笑いますぴかぴか明るく成れますっ、セネットさんに見せたい私の可愛さ、私自身が感じたい可愛さを、元気もにぱち柔らかに声まで弾んで示します♪
「とってもとっても、嬉しいですっ!♪
楽しくって好きです、セネットさんも、私もっ♪」
あとのお茶会が楽しみですね、セネットさんといーっぱいお喋りしたいです。
あっ、でも情報収集とかも一応しないとかもですし、ここはセネットさんに緩衝役となってもらって、ケネスさん、はなんか今面白くて、家猫が信じられない物を見たときのようなお目々まん丸驚愕固定のお顔、ver.首だけセネットさん向きになってますから王子様ことマシューさんに――彼も割と多めの緊張が見えますが困惑などは控えめで、意思疎通できそうな雰囲気に保ってます――色々お尋ねしましょう。
ケネスさん、猫のお気に入りのおやつやおもちゃが急に片付けられたり、丸まってくつろいでたクッションや椅子からサッとナチュラルに引き離されたりしたときのあのビックリ呆然顔になってます、見てると胸がすいて、あ失礼、とにかくめちゃ面白いですね♪
まあ黙ってくれてるのは分かりましたから軽くスルーして、お茶会をゆるゆるエンジョイしちゃいましょう♪
玲衣さんと遥さんも淡みスマイルをほこほこ、心地良さそうに落ち着いてくれてます、
私がかなり勝手したり先走ったりしたのに怒りも嫌いもせず受け入れてくれて、ほんとに優しいお二人です。
セネットさんとはまた別の感じに、好きです♪