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13.成るべく人事を尽くしましょう

(Side:清浄院琴子)



 セネットさんが告げた通りの皆様を、また円陣に集めてくださいましたので、

 私は早速挨拶からの発言を開始します――あと遥さんは〝清浄院さんのお話なら、私も是非一緒に聞いてみたいです〟とのことで、私のお隣、左側に残ってくださいました。

 とっても嬉しいし光栄なのですが、熱中症や日射病には気を付けてあげないと、ですねっ。


「皆さん、呼びかけに応じて集まっていただき、誠にありがとうございます。


 今よりは先ほどの試合のことと、私の思う心構えのポイントなどについて、

 皆さんとご一緒に話し合わせていただきます。


 では、まず試合に関しまして、

 魔王国に恐らく存在するだろう道徳的な慣習への思いから述べさせていただきます。


 断言させていただきますが、私はマシュー殿下やステリーさんの実行した的確な備え、

 すなわち事前に色々なスキルや、もしかしたら妖精の能力も使用しておくことと、

 試合開始時におけるお互いの距離といった各条件を有利に持っていくことに対して、

 全面的な賛成の立場です。


 これは決して気遣いや遠慮ではなく、

 れっきとした本心からの言葉です」



 皆さんが静かなまま、気配をピンわっ! と驚かれました、

 それは右隣にいらっしゃるセネットさんも同様で、驚きの中に心配、優しさを交えて私にぽそぽそ、

 かわいい小声で問いかけてくれます。


「清浄院さん、疑うわけではないが無理はしてないのか?

 いや、本心ならそれで何よりだし、賛成の理由も気になりはするのだが」


 私は彼に微笑みを向けて、自然穏やかに答えます。


「はい、まったく大丈夫ですよ。その理由も続けてお話ししますね」


「そうか……分かった、信じて拝聴しよう」


「ありがとうございます。では、説明を再開しますね」


 視線と皆さんの中心へ、視界を円陣全体へと向け直し、

 私は明るく真摯な声を紡ぎます。


「皆さん、今からの言葉は勝者の余裕とかじゃなくて、

 いつも思っている信念や合理、要するにこれも本心から来るところなのですけど、

 勝つために出来る限りのことをやり尽くそうとしたステリーさんと、

 そのサポートを(おこな)ったマシュー殿下は絶対に悪くないし、

 むしろ褒められてしかるべきだと考慮します。


 こちらの慣習にはまだ詳しくないのですけれど、

 一応は規則内とのことでもありますし、

 お二人とも軍人や武術家としては(ただ)しく立派だと思います」



 まあ遥さんへの対応などで思うことはありますけれど、でもそれとこれとは別なので、

 ずっと驚いている場の皆さんを少々面白く感じながらも――失礼ながら皆さん全員、

 めちゃ可愛らしい達人さんたちですね♪――私は言葉を続けます。


「また、ステリーさんから放たれていた敵意や闘志や殺意なども、

 これらは勝負事においておおよそ必要なことですし、

 それに何より私もステリーさんも全然、重篤な怪我なんてまるで負わないままに、

 継続してぴんぴん元気に生き続けられてますから、きっとギリセーフ? だって思います♪


 あ、こっちは完全に勝者の余裕かもですけど……」



 ちょっと自慢しちゃって恥ずかしいですね、反省です。


 次は試合前につい、いつもの調子で戦う相手(ステリーさん)のご様子、

 気配に身体に力の動きなどを見て感じちゃったことについてです、

 こっちの世界だと明確なハラスメントなのにやっちゃいました、けどっ、

 でもやるべきでしたからこれは反省しませんしこれからもやります、

 琴子はいつでも勝ちたいし、そのために全力を尽くしますっ♪


「また、温情がほしいのは実のところ私の方こそ、でもあります。


 ここレネアシャでは相手の内面を見て取ったり、感じたり、

 探ったりするのはハラスメントに当たるとのことですが、

 私はセネットさんからそれらの事実を聞いた身でありながらも、

 試合前においてステリーさんの内面における力の動きや、

 スキルの発動などを隅々までたっぷりワクワク楽しく、

 存分に見て感じさせていただきました。


 知らない力を見れて、感じられてすごく楽しかったし、

 ステリーさんの頑張りや真剣さも一部なりとも分かって、

 もうとっても嬉しかったです♪


 あ、すみません、話が逸れました。

 ともかく私も、できることをやり切るために人事を尽くしたということです。

 あとそう、内面を見て取るのは試合中も、演習中もですね、

 ステリーさんにもアーガイルさんにも、

 対峙、対決した際に力の流れや身体状況などをしっかりと感じさせていただきました。

 その時もめちゃ楽しかったです、本当にありがとうございます♪


 そしてそれらの諸々につきまして、

 私はハラスメント的な面で一切謝罪するつもりはございません。


 私が浮き浮きして楽しいのも確かにまあ、いっぱいたくさんありますが、

 何よりきちんと戦うため、勝ちを得るためにこそ必要なことだったからです。

 どうかご理解と、ご納得をいただければ幸いです」



 ――ふむ、皆さんの驚きが呆けにまでポカンと進行してますね、

 ちょっと付いてきてくれてるのか心配ですけど、

 でもひとまず最後までさらーっと進めてから、あとは質疑応答でカバーします!


「勿論、これらは私という一個人及び、私側の世界からの見識に基づく考え方です。

 その点も踏まえて、先ほどから少し考えていた論理を、皆さんとも共有させていただきます」


 そう言ってから私はちょっとだけ息継ぎ、短い間を置いて、

 さっき王子様との会話中に考えていたこと、

 地球側の国家所属な軍人さんの在り方や、

 さらにはもっと戦闘・戦術に対して先鋭的かつ徹底的なヤバめカッ飛び傭兵さんたち――清浄院グループの協力のもと、時折お会いして話を聞いたり、動き方や生き延び方を教わったりしています――の在り方について、

 皆さんへ説明し始めました。



 の、ですが……さて。


 皆さん顔色が青かったり白かったり、目と瞳が遠くまで透き通りすぎていたりと、

 未だかろうじて冷静を保っているセネットさんとアーガイルさん――このお二人もガッチガチに表情硬くなられてますが――以外の、

 残る11人全員がドン引きなされているのですが、

 これは果たして問題なかったのでしょうか? あと、質疑応答は無事円滑に進められるのでしょうか?


 それと、あの、遥さんがキラッキラの瞳と朱色上気のほっぺたで私に熱い喜びと尊敬を向けてくれていますが、

 彼女は別の意味で大丈夫なのでしょうか。


 割と武術的、戦術的に容赦ないお話が続いたのですが、

 さすが遥さん、私の格闘試合を見てくれているだけはある……のでしょうね、きっと。


 ……でも、お一人の女の子としてはちょっと心配にこそなりますが、

 ファンのかたとしてはとっても、嬉しいです。


 気恥ずかしいくらいに受け入れ度、理解度が高くって、それだけでもう、私も嬉しいです……

 だから遥さん、これからも応援をよろしくですっ!


 あ、でもお話し中ですしとりあえず、セネットさんに号令掛けてもらって、みんなを気付けさせてもらいましょう。


 セネットさん、まだ冷静な軍高官さんとして、どうかおひとつよろしくですっ♪



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