086 見つけた
『船ですか。ふむ……』
「飛んで降りることもできますが何があるかわかりませんから」
『たしかに、罠がある可能性もありますね。魔力を使うのは控えたほうが良いでしょう』
「それと、先代の光の大精霊と思われる方が、そこの崖から島を見下ろしている姿も視えました」
『先代がーー』
「あの島を見ていたと思うのですが、何が見えていたかは島に行ってみないと……」
『島に行ける方法を考えておきます』
それから俺達は海沿いの崖を少しずつ西に進んだ。
あの島以外にはとくに気になるものは見つからず、このまま森の端に着くのではと思った頃、鳥姿のヴィーがパタパタと羽音を響かせてやってきた。
「おーい!! あっちに洞穴を見つけたぞ」
「洞穴? 隠れ家にぴったりだね!」
『そんなのがあるなんて話は聞いたことがないな』
「とくかく行ってみましょう。洞穴なんて怪しいです!」
ヴィーの案内で森の緩やかな坂を登っていくと、なるほど、たしかに洞穴があった。
洞穴と言って良いのだろうか、入口は子供がかがんでやっと入れそうなくらいの大きさしかない。
「これは……隠蔽魔法ですね」
『こんな茂みの段差に隠れていたなんて。気づかなかったはずだ』
「大爺様が掘ったのでしょうか」
「この魔法はそうだね。確認してみよう」
時渡りの瞳を発動。
遡っていく遠い時間の中でも、木々のざわめきと小川のせせらぎが耳に届く。
この森は古くから変わりなく精霊達に愛されているらしい。
まわりを漂う精霊達の気配も感じる。
やがて視えたのは、深い緑の大きな葉をどけながら左手を洞穴にかざしている翠玉色の髪の少年。
まだ大精霊になる前だろう、見た目が14歳くらいの大爺様だ。
繊細で儚い雰囲気の空気をまとった、大人になりかけの少年。
ーー2種類の隠蔽魔法を重ねがけしている。
ずいぶんと念入りに隠しているんだな。
それから少しずつ時を遡るが、周りを伺いながらこっそり入っていく姿と、出ていく時に隠蔽魔法を必ずかけている姿ばかり。
しばらく遡りながら様子を見ていたのだが、突然、10歳くらいの少年が洞穴から飛び出してきた。
慌てて南西に走っていく少年。
俺は惹きつけられるように後を追った。
けして目を離してはいけないような気がして、見失わないように、必死に後ろ姿を追いかけた。
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