085 森の南
大爺様に似ているなんて言われたのは初めてだ。
嬉しいような、恥ずかしいような、照れくさいような。
少しソワソワしていると、トールから「兄さん、なんかへん」と言われてしまった。
コホンと咳払いをひとつ。
気を引き締めて探索開始だ。
ちなみにアリスは桃薔薇との会話が盛り上がってしまったため留守番しているそうだ。
薔薇の精霊達が「おまかせください」と言うのでお願いしてきた。
ヴィーはモモンガの姿が気に入ったようで、森の中を飛び回っている。
この森の中では少し異質な魔力なので、どこにいるのか気配ですぐに分かってしまう。
トラブルを起こさなければ良いのだけど……
宮殿を出てまっすぐ南へ進むと、正面に人型精霊が集まっているのが見えた。
転移扉をくぐった時に剣を向けてきた連中だ。
『接触すると面倒そうなので少し遠回りしましょう』
シエルの言葉に頷き、少し東寄りに進路を変更する。
自分でも気配察知を展開しているが、トールの索敵のほうが広範囲なので探索はトール頼みだ。
森の至る所に精霊がいる状況で、大爺様だけの痕跡を探すのはなかなかに難易度が高い。
「そういえば兄さん、昨日、精霊王の間に行ったときに空間魔法の痕跡はなかった?」
「精霊王様の前で調べさせてとは言いづらくて……でも敏感なヴィーが何も言っていなかったから、きっとあの部屋にはないんじゃないかな」
「そうかなぁ。あやしいと思ったんだけどな」
「またタイミングを見て聞いてみるよ」
『あの部屋に隠し部屋はないですよ。あれば我々が気づいています』
「……そうですよね。まずは森を探しましょう」
俺の右側には少しムッとしているトール、左側にはすました顔のシエル。
なんだかちょっと居心地が悪い。
宮殿から弧を描くようなルートで南東に出ると、そこは断崖絶壁。
ただひたすら青い海が視界いっぱいに広がっていた。
「うわーっスゴイ眺めですね!」
『東側は高台になっていますから。西から森を出れば崖下に平原があって、海沿いに砂丘が見えますよ』
「へぇ。崖なら隠れやすそうですけど……このまま海沿いに西へ向かってみましょう」
「……ちょっと待って」
トールの低い声。
踏み出した足を止めて振り返る。
「何か引っかかったのか?」
「……もう少し南。古いけど海の中に闇魔法の痕跡がある」
『!!?』
「もしかして、悪魔か……!」
『レオンハルト、お願いだ』
「わかってます」
崖下を覗き込むと、点在する小さな島々。
ーーどの島だろう。
まぶたを閉じて時渡りの瞳を発動。
ゆっくりと目を開けると、一人の精霊が崖の上に立っていた。
おそらく彼が先代の光の精霊・リュシーだろう、他の精霊よりも一段と眩しい。
今、隣りにいる光の大精霊は黄色がかった金色のオーラだが、先代は少し赤みがかった金を纏っている。
ーーまさかこんな所で悪魔と通じていた……!?
けれど彼は、崖の上から海をじっと見ていたかと思うと、踵を返して森の中へ戻っていった。
ーー違った。でも、一体何を見て……
点在する島々。
その中でも、目を凝らさずに見えるギリギリの距離。
そこに視える黒い影。
少し遠すぎる。
過去視を解除して遠視の魔法に切り替えてみるが、現在そこには何も見当たらない。
「影があったのは右奥から4番目の島です。船が欲しいですね」
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