078 山の大精霊はお怒りのようです
side トール
『ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ』
中庭の回廊と精霊王の間をつなぐ渡り廊下に立ち塞がっているのは、白い顎髭を蓄えた大男。
厳つい大男に見下されてアリスは縮こまった。
ひぃぃぃぃぃと声にならない悲鳴を上げて、桃薔薇と身を寄せ合っている。
『なんだ桃薔薇、お前もいたのか。一緒にいたならちゃんと止めろ』
『すすすすみません!』
『そんなに怯えなくても良いじゃろうに』
ジャングルのようにもしゃもしゃした白い髪のテッペンを、左手でガシガシとかく大男。
右手には大剣のような杖が握られている。
『して、客人よ。この先に何用じゃ?』
「すみません、探し物をしているので精霊王様の部屋に行きたいです」
『そりゃ無理じゃ。約束のない者は通せん』
「そこをなんとか」
『無理じゃと言うとる』
食い下がろうとするトールの服の裾を、桃薔薇が引っ張って止めた。
『あの、諦めたほうが良いですよ』
「なんで?」
『山の大精霊様はここの番人で、絶対にルールを曲げません。それに今は静かで穏やかですが怒るとす〜っごく怖いです』
「頑固なの?」
『そして、気分屋で態度がコロコロ変わります』
『おい、聞こえとるぞ』
「……山の天気もよく変わるもんね。山の大精霊だから気分がコロコロ変わるのかな」
残念なものを見るような目で見上げられ、大男は流石にイラッと来たようだ。
本人達は小さな声でこっそり話しているつもりだが全部周りに聞こえている。
『融通がきかなくて、まさに動かざること山の如しなんですよ』
「見た目も頑丈そうで山っぽいもんね」
『お前たちはさっきから何を言っている!!』
お怒りモードの山の大精霊は顔が真っ赤でまるで火山のようだ。
『まったく、大人しく聞いていれば……流石あの生意気なルーヴィッヒの子孫だな。忌々しい一族だ!』
「今の発言は聞き捨てならないわっ」
「そうだっ大爺様はすごい人なんだ。謝ってください!」
『はん。何も知らないってのはおめでたいな』
『大精霊様っそれ以上はやめてください!』
桃薔薇の言葉にハッとした大男は、冷静を取り戻すように咳払いをする。
大男は落ち着いた声で、けれど冷たい目のまま見下ろして言った。
『とにかく、ここは通せん。部屋に戻れ』
敵意を持った精霊に絡まれるかもしれないとは思っていた。
兄さんを部屋においてきて正解だったなーーそう思ったトールはゆっくり瞬きをする。
「わかりました。アリス、一旦帰るよ」
「うん」
『では私もバラ園に戻りま……』
言いかけた桃薔薇の腕を、トールはガシッと掴んだ。
「キミも一緒に来るんだよ」
『えっでも』
「こんな中途半端なままじゃ納得できないから説明してよ」
『困ります』
「ぼくも困ってる」
『でも、でも……っ』
『本当に困るんですぅ〜〜〜〜!!』
涙目になって叫んだ桃薔薇は、光の球体になりトールの手をすり抜けてどこかへ飛んで行ってしまった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
六章に出てきた精霊さん達に名前を付けてみました。
やはり名前があると愛着もマシマシですね。
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