077 森の掟と追放劇
side トール
『精霊は基本的に森の外へ干渉してはならないとういう掟があります。でもルーヴィッヒ様が掟を破ったせいで森に危険が迫り、そのため彼は森を追放されたとされているのです』
初めて知るルーヴィッヒの過去に、トールとアリスは唖然とした。
『でも、本当に追放されたわけではないのです。迫る危険から森を守るために、自分から出て行ったと聞いています。もっとも……危険を呼び寄せたのも彼自身なのだから、出て行くのは当然だと非難も浴びたようですが……』
「もしかして大精霊様が言っていた、少し前に先ほどの者達と意見が食い違ってしまって……というのは」
『それが元々の原因ですね。精霊は森の中では自由を許されていますが、他種族に干渉するべからず、安易に加護を与えるべからずと掟にあります。けれどルーヴィッヒ様は他国の出来事に首をつっこんでしまった。精霊王様はルーヴィッヒ様を可愛がっていたのに……次代の精霊王にと期待されていただけに残念です』
「大爺様ってそんなにスゴイ精霊だったんだ!」
『はい。そうれはもう特別な存在で、幼い精霊はみんな憧れていました!』
目を輝かせるアリスに桃薔薇の精は笑顔で答えた。
「その話は誰から聞いたの?」
『トール様もお会いした光の大精霊様ですよ。ルーヴィッヒ様とは生まれた時期も近くて仲が良かったようです』
「昨日の大精霊……仲が良かったんですか」
『はい』
「なのに大爺様が出ていくときは庇いも止めもしなかった、と」
『仕方がなかったとしか』
「でも友達なのに助けてくれなかったんだよね?」
『この森を守るためにはそうするしかなかったんです』
納得いかないとむくれるトールに桃薔薇は眉を下げるしかなかった。
アリスは険悪な雰囲気にオロオロするばかり。
ーーどうしよう、なんか話を反らせる話題は……
「あのっ大爺様が森を出て行ったときの話とか聞いてますか?」
『ええっと……精霊王の間に突然現れて、出て行くと宣言したと聞いています』
「突然?」
『精霊王様と大精霊様がみんな集まっているところで突然宣言したと』
桃色の髪を揺らしながら頷く桃薔薇。
けれどトールは「そっちじゃない」と首を振る。
「突然、精霊王の間に現れたんだよね?」
『えっは、はい!』
「もしかしたら探し物の手がかりは精霊王の間にあるかもしれない」
トールとアリスは顔を合わせて頷いた。
バタバタと精霊王の間に向かって走っていく2人。
その後を桃薔薇が「待って〜!」と追いかけていく。
『待ってっ待ってください! そんな簡単に近づいて良い場所じゃないんですよ!』
そんな声は聞こえないとばかりに2人はどんどん先へと行ってしまう。
ーー私が余計なことを言ったばかりにっ精霊王様ごめんなさいっ!
困った困ったと頭の中で唸りながらも、なんとか2人に追い付いた。
追い付いたというか、2人が足止めを食らっていたというか、厳つい大男が立ちふさがっている。
山の大精霊だ。
やっかいな男に見つかったと桃薔薇は顔を引き攣らせるのだった。
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