076 宮殿探検隊3
side トール
一方そのころ、アリスとトールは部屋の外を探索していた。
「さっきアリス達が見てまわった中には怪しいところはなかった?」
「ん〜たぶん。でも、よくわかんない」
「……まぁそうだよね。一緒に見てまわろう。案内してよ」
「はーい!」
アリスに案内されるがまま、あっちに行ったりこっちに行ったり。
こっちには壁画があるとか、そっちには魔道具があるとか、わりとどうでも良い情報を口にしながら楽しそうに連れ回してくれるので、トールは索敵しながらついて行く。
ーーなかなか大爺様の魔力が見つからないなぁ。
所々にうっすらと痕跡があるものの、隠し部屋に繋がりそうな手がかりは索敵に引っかからない。
宮殿の中ではあまり魔法を使っていなかったのかも?
そう思って宮殿の外へ行こうとしたのだが、小さな精霊に止められた。
『お待ち下さい! 外にはいろいろな精霊が多くいます。何かあったときに守れる自信がありません』
桃色髪の少年姿の精霊は困った顔で訴えてくる。
どうやらぼく達の行動をこっそり伺っていたようだ。
「それは、ぼく達が外に行くのはまずいってこと?」
『はい。いくら精霊王様の庇護下にあるとはいえ、中には気の荒い精霊もいますから何があるかわからないですよ』
「……そう。ぼく達、危害を加えられるようなことをした記憶がないんだけど」
『あなた達ではなく、ルーヴィッーーっいえ、なんでもありません!』
「今、ルーヴィッヒと言おうとした? 大爺様が関係あるの?」
『いえいえ、なんの関係もありません!』
「じゃあ外に行っても良いよね?」
『それはダメです』
「どうしてダメなのかちゃんと説明してくれる?」
トールが笑顔で圧をかけるものだから、少年姿の精霊はぐぬぬと黙ってしまった。
アリスはハラハラしながら見守っている。
しばらくいがみ合っていた2人だが、結局折れたのは精霊の方だった。
『わかった、分かりましたよ! 本当は森の外の者には漏らしてはいけないと言われてたんですけど』
「誰にも言わなければ問題ないでしょ?」
『なんて人だ……ルーヴィッヒ様の子孫とは思えない発言!』
「大爺様を知っているの!?」
ルーヴィッヒ様という言葉を聞いてアリスも身を乗り出してきた。
『直接は知りませんが……とても真面目で慈愛に溢れ、多くの者を救ったと聞いています』
「じゃあどうして恨みを買っているの? キミもルーヴィッヒ様と呼んでるくらいだから尊敬する気持ちはあるんでしょ?」
『それはもちろん!』
「何があったか教えてよ」
『……そうですね、あなた方には知る権利があるのかもしれません』
『あれは、私がまだ精霊になる前。薔薇の蕾だった頃なのですが』
トールとアリスは静かに耳を傾ける。
『精霊は基本的に森の外へ干渉してはならないとういう掟があります。でもルーヴィッヒ様が掟を破ったせいで森に危険が迫り、そのため彼は森を追放されたとされているのです』
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