閑話/異世界の花
異世界から召喚された救世主たちが集った家、「結界の家」の主が不在となってから数十年。
誰も住んでいないはずなのに、家は綺麗に保たれ、庭の草木も元気に葉を茂らせている。
太陽の光が眩しい早朝。
温かい風とともに結界の中に入り込んできた小さな光の球。
その球はくるりと一回転すると、7歳ほどの少年の姿に変身した。
「ふう。今日は熱くなりそうだから今のうちに水をたっぷりあげなくちゃ」
この少年は時々やってきて家の管理をしてくれていた。
お気づきだろうか、この少年こそが幼い頃のルーヴィッヒである。
彼は契約していたショウの家の掃除をしたり庭の世話をするため度々訪れているのだ。
肝心のショウは旅に出たあと行方不明となったまま。
聖山に行くとテオドールに話したのを最後に、その後の足取りは誰にもわかっていない。
もしかしたら、そのうちヒョッコリ帰ってくるかもしれない。
カイの言葉を借りれば「ワンちゃんあるんじゃない?」。
そう期待をしながらルーヴィッヒは「結界の家」の管理を続けているのだ。
時々見え隠れする「結界の家」の過去。
時渡りの瞳におぼろげに映るのは、何かを考え込んでいるショウとカイ。
ホームシックになったヒナのためにショウは植物の研究を始めたようだ。
ーー日本の景色を再現してみようかな。
そう言ってショウはいろんな花を庭で育て始めた。
ヒナが生まれ育った家の庭は季節によっていろいろな花が咲くらしい。
それも毎年、移り変わる季節に合わせて同じような種類が同じ場所に花を咲かせていたようだ。
芝桜、待雪草、鈴蘭、ヒヤシンス、チューリップ、クレマチス、あやめ、向日葵……
俺達は縁側からそれらを眺めるのが好きだったとカイは語った。
元の世界の種類とは少し違うけど、見た目が近い植物を採取してきて庭に植えていたショウ。
品種改良をして増やしていけば、いつか懐かしい景色を再現できるかもしれないと気持ちを込めて。
そんな庭の植物達に手をかざし、魔法で柔らかい雨を降らせれば小さな虹ができた。
キラキラと光りを反射しながら揺れる花々が主人不在の家を見上げながら少し寂しそうに揺れる。
「……ごめんね」
小さく溢れた声は水音にかき消された。
この家は懐かしさと優しさに溢れている。
あたたかさを感じながら、ルーヴィッヒは今日も庭の水やりに精を出すだった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思いましたら、ブクマ登録や評価、リアクションなど頂けると嬉しいです。
執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。
第六章は……もう少しお待ち下さい。
ちょっと夏バテぎみ。みなさまもお気をつけください。




