070 涙の理由
気がつくと視界いっぱいに星空が広がっていた。
ぼんやりとした意識のまま辺りを見渡すと、ヴィーが不安そうに覗き込んできた。
どうやら草むらに倒れていたらしい。
俺は仰向けで横たわっていた。
「アニキ! やっと気がついたか!」
「ヴィー。俺は……どうしたんだ?」
「急に倒れたんだ。支えるのが大変だったんだぞ」
「そうか……どのくらい気を失ってた?」
「ん〜〜たぶん3時間くらい?」
「……そうか」
「体調は大丈夫か?」
「ああ。心配かけてごめんな」
「まったくだぜ。あまり無茶すんなよ」
俺は苦笑いを返すしかなかった。
無茶……たしかにそうだな。
今夜は隠れ里で一泊することにした。
半分壊れている我が家。
アモンの奴、今まで里に入れなかったからって八つ当たりじゃないのか、まったく。
まだ少しくらくらする頭を押さえながら思い出してみる。
時渡りの瞳で見た過去は、なんとなく覚えているけれど途中からは曖昧だ。
ドラゴンが来て、フィンが怪我をして、魔力暴走しかけて、大爺様が来て、助けてもらって。
3人で遊んでいるうちに結界の外へ出てしまったためドラゴンに気づかれたようだと大爺様は漏らしていた。
フィンは自分が怪我をしたことよりも、俺が死んでしまうかもしれないと思って号泣したようだ。
「レオンがいなくなっちゃうかもって怖かったよぉ」と大号泣してた。
ヘンリは「俺が誘ったせいで」と目に涙を浮かべながら謝っていた。
「悪いと思うなら、これからレオンハルトを守る盾になれ」と言う大爺様の言葉に「わかりました!」と素直に返すヘンリ。
まだ子供だし、あれって絶対わかってないだろう?と言いたくなったけれど……あの後ヘンリの家族はエルフの谷に引っ越して稽古してたんだもんな。ちゃんと大爺様との約束を果たそうとしてくれたのだ。感謝しなくては。
その後、俺達は一部の記憶を封印する魔法をかけられたようだ。
なんとなく覚えているのはそのへんまで。
その後は強い魔力の渦に耐えられず意識を手放してしまったらしい。
自分はまだまだ力不足ということだ。
けれど知りたかったことは視ることが出来たと思う。
今までの断片的なものが繋がって納得したというか、安心したというか。
フィンが泣いていた理由が想像していたものと違っていたのには少し驚いた。
みんなの温かい気持ちを感じられて、胸の奥がなんだか熱い。
ドラゴンは……そのうち会いに行きたいな。
けれど、その前に大爺様の痕跡を辿らなくてはならない。
明日はエルフの谷に戻って転移扉で移動しよう。
行き先は精霊の森。
精霊王様に挨拶して、大爺様のことを報告しなくてはならないのだ。
久しぶりの自分のベットに横たわりながら、やりたい事・やらなくてはいけない事を順序立てて思考を巡らせる。
だが、疲れ切っていた俺は何の進展もないまま深い眠りについてしまったのだった。
第五章は短いけどここまでとなります。
なんとかここまで来れました……!
読んでくださった皆様、ありがとうございます!!
第六章は「精霊の森」編。
ちょっと立て込んで来たので更新まで間が空きそうですが、忘れずに足を運んで(?)いただけると嬉しいです。
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