表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/135

068 記憶のカケラ

林の向こうにある丘の上は、初夏の草花が一面に広がっていた。

深い森に囲まれている隠れ里だが、この場所だけぽっかりと空間が空いている。

丘から眺める景色はひたすら山のそれだが、風に揺れる木々の隙間からは時々海が光って見えた。


あのとき何があったのか知るのが怖くて躊躇していたが、左肩に止まったヴィーの温もりで少しだけ緊張が和らいだ。


「……ヴィー、俺に力を貸してくれるか」


「おう! まかせろっ」


俺は子供の頃の記憶があまりない。

ヘンリの腕輪が見せてくれた記憶は、俺の中にはないものだ。

自分のことなのに魔力暴走を起こしたなんて知らない。

思い出すためにも、過去視の力で確認すると決めた。



マジックバックから大爺様の大杖を取り出して地面に突き立てる。

あれだけ膨大な魔力が蠢いていたのだ、コントロールに失敗したら過去に囚われてしまうのではないかと恐怖を感じてしまう。


だから、大爺様の力を借りる。

ヴィーの秘められた魔力も。


ーー大爺様、どうか俺に力を貸してください。


突き立てた大杖に精霊力を流し込むと周囲の魔素が集まってきた。

光る粒が全身を囲んでいく。

地面から風が吹き上がる。


この場にある大爺様の魔力残滓が杖の力を増幅させるのを感じる。

俺やフィン、里の皆の魔力も感じる。思い出とともに染み付いた魔力が支えてくれた。


目を開けるのもやっとの強い風。

フィンにもらった髪紐が飛ばされてはいけないと思い、するりと外せば勢いよく風に乗って髪がなびいた。

渦を巻く魔素に囲まれて目を閉じ、深く息を吸う。


準備は整った。


ゆっくりと目を開けて〈時渡りの瞳〉を発動。




流れ込んでくる強い力。

遡っていく時間の流れ。

光と風が早送りするように流れていく。


注視して、知りたい過去のタイミングを見計らう。


ざわめく木々。

吹き荒れる風。

この地の記憶の中の、最も強力な魔力に引き寄せられる。

大爺様の強力な力。

それと共に、俺の中にあっただろう魔力の痕跡も。


慌てる大爺様の姿。

泣きじゃくる子供の頃のフィン。


大杖の力を借りてコントロールしながら、止める時間を調整する。


もう少し。

ーーもう少し、その先だ。


そう、その先へーー……



そこで目にした光景は……俺は驚いて時間を止めた。

だって信じられるか?

こんな生き物が本当にいるなんて。


巨大なトカゲにも見えるが、角と翼がついている。


これって、絵本に出てくるドラゴン……だよな?

なん……だと!?


いつも読んでいただきありがとうございます!

少しでも面白いと思いましたら、ブクマ登録や評価、リアクションなど頂けると嬉しいです。執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ