065 ヴィックとトールのこそこそ話
魔王城に来て2ヶ月ちょっと。
ヴィックは城内を自由に歩き回っていた。
ただし、近くにはいつもセダルがいる。
そばかすの少年、セダル。
最初は世話係だったのに今では周りから従者と言われている。
それと言うのも、ヴィックが好き勝手に城内を動き回り、「これ、もらうよ」と倉庫の物を持って行こうとするので関係部署に交渉するのがセダルの役目になっていた。食事を運ぶのも、部屋の掃除をするのもセダル、問題が起こった時に頭を下げるのもセダル。
「だあぁぁぁ!! もう!!! 本当は魔王様の側仕えになりたかったのにっっ僕はなんでこんな所にいるんだぁ〜〜〜!!!!!」
セダルは時々、我慢の限界が来たように叫ぶ。
それをヴィックは耳を塞ぎながら冷めた目で眺めるのだ。
「うっさいなぁ。不満があるならついてくるなよ」
「そんなわけにいかないだろ! キミを1人にしたら問題を起こしてばかりじゃないか!」
「失礼な奴だな。周りが勝手に問題を起こしてるだけでボクは何もしていない」
「んなワケあるかぁ〜〜!!!」
今日も今日とて喧嘩腰の2人。
騒がしいセダルに溜息を付き、ヴィックは空を見上げる。
「じゃあボクは展望室で昼寝してくるから。邪魔しないでよ」
そう言って階段を登っていくヴィックを見送りながら、セダルは深く息を吐いた。
階段の一番下の段に腰を掛けて壁に頭をもたれる。
通りかかった仲間の魔族に「今日もお疲れ」と声をかけられ、力なく笑いながら手を振り返す。
それが彼の日常だ。
当のヴィックはといえば。
最近はこの展望室がお気に入りの場所である。
城の中でも二番目に高い場所。
一番高いのは魔王様の部屋らしいが、この部屋もなかなかに良い眺めだ。
眼下に広がる魔族領は意外と平和で、街の向こうには港があり、穏やかな海と大陸も見える。
だがヴィックが目を向けるのは更にその先。
この南の島からは見えるはずもない、大陸の最北。
聖山にいる半身に向かって魔力を飛ばす。
手元には魔力を高める魔道具。
城を探索していた時に見つけた物だ。
「おーいっトール! 聞こえるか?」
『ヴィック。聞こえてるよ』
お互いに魔力を飛ばして繋がった2人は、今では念話ができるほどになっていた。
「そっちはどうだ?」
『ヴィックが見つけてくれた魔界の鉱石のおかげで上手くいったよ。ありがとう』
「良かった! 皆は無事?」
『父上が足を怪我したけど、順調に回復してる』
「治癒魔法で治せないのか?」
『悪魔の魔力は穢れてるから治癒魔法があまり効かないらしいんだ』
「そうか……じゃあ治癒の効果がありそうな魔道具を探しておくよ」
『魔道具ってそんなにいっぱいあるの?』
「古いけど使ってないのがいっぱいあるから好きにしろって魔王が言ってた」
『そうなんだ』
「わりと、あちこちに隠れてたりするから探索しがいがあるよ」
『楽しそうだね』
「だって城の結界から出られないから……城内を探検するくらいしかやることないんだよ」
『……もしかして、ぼく達が魔王城に行ってもヴィックは出れないの?』
「今のままだとね。でも、どうにかする」
『そっか。楽しみにしてるよ』
「うん。じゃあ、そろそろ魔石が切れるから、またなトール」
『じゃあねヴィック』
ヴィックは魔道具をつつきながら肩を落として呟いた。
「……魔石の効果が切れるの早すぎ」
大陸の南の島と、大陸の最北の聖山。
遠い地の半身と繋がるには膨大な魔力を消費するのだ。
ヴィックはどこかに転がっている魔石を探すため、今日も魔王城を探検するのでした。
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