064 贈り物
「相変わらずよく分かんねーヤツだったな」
「そう言うな。魔王なりに心配してくれてるんだと思うよ」
「あれでか?」
「たぶん不器用な人なんだよ」
本当に不器用な人だと思う。
無口でいるのは、たぶん、悪魔と対峙したときに大事なことを読まれないようにするため。
だから余計なことも聞いてこない。
変に絡んでくるのは構ってほしいのかな。
姉のシノンは亡くなり、元魔王の両親も行方不明らしいから、もしかしたら寂しいのかもと思う。
本家へと続く道沿いに咲く花菖蒲を眺めながら思いに耽る。
紫色の垂れた花弁が風に揺れるたびに大婆様の姿を思い起こさせた。
彼はシノン大婆様のことをとても大切に思っていたようだ。
ヴォルモール国の氷漬け事件の後、行方不明になった姉をずっと探していたアモン。
その間、大爺様と大婆様は結界の家に身を隠していたようだけど。
まだ数回しか会ったことがないけれど、アモンはあまり感情を出さない。
その彼が、大婆様が亡くなったことを知ったときは号泣していた。
魔力暴走寸前になるほどの感情の乱れ。
そこから見えるのは、大婆様への親愛、絆、信頼と執着。
ーー重いなぁ。俺は、彼の期待に応えることが出来るだろうか。
「あっしまったぞアニキ!」
「え、どうした?」
「どうせアイツに会ったんだから、そのまま魔王領まで連れてってもらえば良かったー!」
一瞬あっけに取られて目を瞬くけれど。
「……たしかに、それもそうだ」
思わず笑みが漏れる。
沈みかけた心が浮上する。
ヴィーが一緒で良かった。
「なぁ、その髪飾りはつけたままにするのか?」
「? つけてたら変なの……か……」
ヴィーに言われて髪飾りを外してみると、それは木を削って作られた蝶型の髪留めだった。
真ん中に魔力を貯められる魔石が隠されている。
「どう見ても女物だぞ」
「そうだね」
「好きな女にでも贈れってことか?」
「いや、これは俺が持っておくよ」
蝶形の髪留め。
魔力を貯められる魔石が隠されている。
……うん、これも救世主ショウが作ったものだね。
たしかショウがヒナに贈った物だ。
ショウとヒナが行方不明になった後、テオドールが聖山に探しに行ったときに見つけたものだ。
「異世界創造伝記」の最後のほうに書いてあったと思う。
ーーー
あいつらが最後に行った場所に手がかりがないか探すため、聖山への扉を開けたことがある。
そこには魔力の痕跡があったものの誰もいなくて、ショウがヒナのために作っていた蝶型の髪留めだけが落ちていた。
調べてみると、蝶の真ん中に魔石が隠されていて魔力を貯めておける仕組みになっていた。
ただし今は魔力は空っぽだ。
ーーー
その髪留めがこの手にある。
どう見ても悪魔に狙われそうな代物だ。
流石にこのまま持ち歩くのは問題がありそうだから後で錬金村のおばば殿に相談してみよう。
けれど、その前にーー
「アニキ、次はどこに行くんだ?」
「……隠れ里に一度戻りたいんだけど、つきあってくれるかい?」
俺達が知りたいことの鍵は、きっとあそこにある。
そんな気がするんだ。
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