063 魔王アモン
「時渡りの瞳で見た光景を知られるのは問題があるのでは?」
「あれは精霊力だろう、魔力とは別物だから介入できないはずだ」
「そういう認識で大丈夫なんですか?」
「今のところはな」
「……わかりました」
「そういえば、あの家に気になるものはあったか?」
「魔王様は結界の家に入れないんですか?」
「あそこはルーヴィッヒの奴が他者を拒絶する結界を重ね掛けしている。血を受け継いだお前達しか入れない」
「……そうですか」
救世主の姿を見た。
怪我をした大婆様と、助けようとする大爺様も。
大切な身内が傷ついていたと聞いたら彼はどんな気持ちになるだろう。
「何を考えてるかわからない人には言いたくないです」
アモンが眉根を寄せる。
「我は何があったか知りたいだけだ」
「…………」
「過去を知ってどうするということではない」
でも大婆様の墓の前で魔力暴走を起こしかけてたよね?
感情の起伏が読めないのが怖い。
墓に供えられた豪華な花束を見て考える。
前から思っていたけど、この人たぶんシスコンなんじゃないだろうか。
俺と魔王アモンが話をしていると、突然ヴィーが突撃してきた。
正しくは、アモンに突撃したヴィーが片手でクチバシを鷲掴みにされている。
「フガガッグググガ!!」
「……なにしてんのさ、ヴィー?」
「フググガ」
「すみませんが開放してあげてください」
アモンが無言で手を話すと、ヴィーは「ぶはーーっ!!」と大きく息を吸った。
「アニキ! 大丈夫か!? こいつに何もされてないか!?」
「大丈夫だから落ち着いて」
「おっおう。でもヴィックがこいつの悪口めちゃくちゃ言ってたってトールが言ってたぞ!」
「早口で言われれるとよく分かんないから落ち着いて」
俺の右肩に止まり、鼻息荒くフシューッ!と威嚇しながら魔王を睨みつけているヴィー。
「そいつも連れて来ていたのか」
「ええ。長距離を飛ぶには乗せてもらったほうが早いし、一人での行動するなと周りが言うので」
「そうだな、番犬に良さそうだ」
ふはっ。
思わず吹き出してしまった。
「誰が番犬だ!! アニキも笑ってんじゃねーよっ!」
「あははっごめんごめん。でも頼りにしてるから、確かに番犬かなと思って」
「そっ、そ〜んな風に思ってんなら番犬してやってもいいぜ」
照れたように胸張ってる。
調子いいなぁ。
「レオン、これを持っておけ」
アモンがポケットから何かを握って渡してきた。
受け取ろうと手を差し出したが、何故か髪に付けられた。髪留め?
「これは?」
「魔力を貯める魔道具だ。そいつは精霊力も貯めておける」
「似合うぞ。そのうち役に立つだろうさ」
そう言ってアモンは意味ありげに笑って翼を広げ、魔王領に戻って行った。
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