062 墓参り
更新が遅くなってすみません。やっとこ5章でございます。
聖山の中腹、結界に守られた小さな村。
そこには茅葺き屋根の大きなお屋敷と、木造の神殿以外の建物は見当たらない。
お屋敷から少し離れた場所にある小さな泉には今日も精霊が集まっている。
以前来た時には満開だった桜の木は、今は鮮緑の葉を茂らせていた。
泉から15分ほど坂を登ったところにある、大婆様が眠っているお墓。
俺は墓の前に跪いて花を供え、手を合わせる。
「大婆様、遅くなってすみません。大爺様の遺品を届けに来ました」
墓石の隣に遺品を置いて土をかけ、その上に小さなの蕾をつけた植物を置く。
植物魔法で根付かせると、ピンクの可愛らしい花々が咲いた。
結界の家にいくつかあった植木鉢のうち、大爺様の魔力を宿していた鉢をひとつ持って来たのだ。どうやら救世主は植物栽培の実験もしていたようで、記録ノートには「芝桜」と書いてあった。家の主がいなくなってからは大爺様が時々世話をしていたらしく、精霊の祝福を受けた草木は枯れずに残っていたのだ。
数年後の景色を想像して思わす笑みが漏れる。
満開の山桜と芝桜が広がった景色は、きっととても美しいことだろう。
大爺様の魔力に惹かれたのか周りに精霊達が集まって来ていた。
小さな光の精霊達はくるりくるりと踊るように飛ぶ。
優しく柔らかい光。
大爺様と大婆様のわずかな残滓がゆっくりと絡み合いながら空に溶けていった。
墓石と桜の木の周りを飛び回っている精霊達に感じる暖かさ。
お前達もお墓に手を合わせてくれるのかと、嬉しく思っていたら……
一斉に逃げるように姿を隠してしまった。
俺は溜息をついて仕方なく振り返る。
「来ると思ってましたよ、魔王アモン」
憮然とした顔で見上げれば、相変わらず何を考えているのか読めないアモンが立っていた。
「ここの結界は魔王様でも入れるんですね」
「姉上の魔力が残っているからな」
そう言ってアモンは両手で抱えた花束を墓の前に供えた。
墓参りするにはずいぶんと豪華だな。
キク科を中心に、白、ピンク、黃、水色……淡い色合いで束ねた両手いっぱいの花束。
「ヴィックは元気ですか?」
「ああ、毎日側付きの坊主と喧嘩してるよ」
「……喧嘩……居心地の良い環境が用意できないなら返してください」
溜息混じりに言えば、魔王アモンはフッと鼻で笑う。
「あれはあれで仲良くやってると思うぞ?」
「ヴィックの闇の魔力だけを連れて行ったのは何故ですか」
「魔力と記憶は繋がっている。お前も知っているだろう」
「…………」
あの悪魔は魔力に同調して記憶を読む。
だが思考を読むことは出来ないようだった。
「我から何かを言うことはない。理由は分かるな?」
俺は無言で頷く。
「お前は自分の瞳で見て考えろ。何があったのか、何をするべきか、辿れば見えてくる」
「俺にできるでしょうか」
「おまえにしか出来ないことだ」
読んでくださった方、ありがとうございます!!
さてさてレオンはどこまで成長できるのでしょう……どうか暖かく見守ってやってくださいませ。
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