閑話2/追放聖女はキラピカツヤーン!で武装する
モニカ聖女が国外追放を言い渡されてから神父様に出会うまでのおはなしです。
すみません、ちょっと長いです。
神様、私は今、馬車に揺られて国境へ向かっています。
神殿を出るというのにご挨拶もできないことをお許しください。
***
「偽聖女モニカ、貴様は今まで国民を騙してきたな。国外追放を命ずる!」
数刻前、私はそう言われて神殿を追い出された。
8歳のときに勝手に聖女候補として連れてきておいて、7年間も休みなく働かせたあげくに「偽聖女」呼ばわりして追い出したのよ。まじで意味不明だわ!!
偽聖女ってなんなのよ。ちゃんと聖魔法を使えるわよ。
神殿での祈りも、神殿治療院での治癒も癒やしも、ほとんど私がやってたんですけど!
だいたい筆頭聖女に任命したのはそっちじゃないの。
偽聖女はひどいじゃない。
自分なりに一生懸命頑張ってきたのよ。
私の7年間を返せ!って思うよ。
そんな愚痴を頭の中でつぶやきながら外を眺めていたら、カタンと馬車が止まった。
運良く騎士団に馬車を出していただけたけれど腰が痛い。
と言っても、自分で時々治癒魔法をかけてるからそんなに苦痛ではないんですけどね。
追放を言い渡された時、リオニダス副団長が騒ぎに駆けつけてくれて「今まで尽くしてくれた者に対する扱いではない」と神殿に抗議をしてくれた。でも結局、追放が覆ることはなかったから「せめて国境まで送らせてほしい」と言ってくれて。私にとっては救いの神のようだったわ。
リオニダス副団長は王都ではよく黄色い声のご令嬢たちに囲まれていた。女性との関係も絶えなくて軽薄だとの噂を聞いていたのだけど、実際は全然違った。
護衛をしてくれている彼は至って真面目。
もしかしたら、こっちが素なのかな?
噂ってあてにならないな〜
おだやかな風を浴びていたら、少しだけ気分がスッキリしてきた。
うん、国外追放、上等じゃない。平民をなめんなよ。
もうこき使われることもないんだし自由にさせてもらおうじゃないの!
私はもう聖女じゃない。ただのモニカよ。
ええ。ええ。叫んでいいですか?
もちろん心の中で。
「自由だぁーーーーー!!」
……あ、しまった。声に出ちゃってた。
国外へ出るまではいろいろな方にお世話になりました。
騎士団の皆様はもちろん、泊めてくれた協会の方々、温かい食事をくださった近隣の皆様。
何か御礼を……と思ったものの、私にできるのは聖魔法だけ。
礼拝堂で女神の像を前に跪き、手を組んで目を伏せる。
祈りながら聖なる力を込めれば……浄化魔法の光が広がり礼拝堂を覆う。
キラピカツヤーン!
私はいつもこの魔法で神殿の掃除をしていたのだ。
掃除もできて、邪気も払えて一石二鳥!
神殿に使えている者なら誰でも使える……そう思っていたのだけど、実は特別な力だったようだ。リオニダス様が教えてくれた。
「とりあえず、聖魔法は国を出るまで禁止です」と言われてしまったよ。なんてこったい。
けれど習慣というのはウッカリ出てしまうもので。
旅の間にお世話になった村では、去り際に浄化魔法でお掃除をしていた。
濁った川の水もキラピカツヤーン!で澄んだ美しさを取り戻し、老木が元気になるように祈れば新しい葉が芽吹き、枝が力強く伸びて薄紅色の花を咲かせた。
いつも当たり前に使っていた魔法なのに……最初は村の人達に感謝されるのが不思議だったし、なんで騎士団の人達は慌ててるのかと疑問だった。
でも、王都の神殿が異常だっただけで、普通はこんな魔法は使えないのだと国を出る頃には理解したよ。
***
なんとか無事にカーディナルの国境を出たのだけれど、護衛をしてくれていた騎士5人のうち、結界を出た3人が急に体調を崩してしまった。
急いで回復魔法をかける……けれど、なんとも言えない違和感。
ふと空を見上げれば、うっすらと濁ったカーディナルの結界。
「なに……これ……!?」
なんで今まで気づかなかったのかしら。
誰も気づかなかったなんて、そんなことある!?
「……モニカ聖女、有難う。もう大丈夫だよ」
リオニダス様が苦痛に顔を歪めながらも大丈夫だと言う。
「でも」
「もう動けるから十分ですよ。それより状況を把握しなくては。そっちの2人は結界から出るなよ」
「「はっ」」
「この結界……なんでしょうね?」
「我々になんらかの作用があったのは間違いないだろう」
結界を見上げながらも苦しんでいる2人の騎士に回復魔法をかけていると、突然頭を下げられた。
「「……あの、モニカ嬢! 今まで偽聖女と疑っていて申し訳ありませんでした!!!」」
「えっえっ? どうしたんですか急に?」
「……なんか頭がスッキリしたと言うか、なぜモニカ嬢を偽物だと思っていたのか自分でも不思議で」
「自分もです! 今までは頭に靄がかかっていたようなかんじで……自分の意思とは違う何かに引っ張られていたような……」
「それは、もしかしたら洗脳の類かもしれません」
振り返ると、耳の尖った神父服の男性が立っていた。
「失礼、領主様と町の視察をしていたら聖魔法の気配を感じたもので。もしやカーディナル王国の方々ですか?」
「そうですが、貴方は?」
「私はパデボルン国で神父をしております。ここから馬車で15分ほど行ったところに協会がありますので、よろしければいらっしゃいませんか」
「それは有り難いですが視察の途中だったのでは?」
「領主様に話を通してきたのでお気になさらず。最近、国境を超えた方が体調を崩すことがよくあるので警戒していたのです」
「その話を詳しく伺いたい」
「ええ、私も王国の状況が知りたいですね。なにしろ伝書鳥を送っても返事が帰ってこないもので」
「……最寄りの領主に伝令を出します。後ほど協会でお話を聞かせていただけますか」
「承知しました」
リオニダス様が結界の内側に残っていた2人に何か指示を出している間、私は少し混乱して座り込んだまま謎の結界を見上げていた。
こんなの、知らない。
こんな結界……どうなっているの?
私の結界が王国を守っていたと思っていたのに……私がみんなを苦しめていたということ!?
「お嬢さんのせいではありませんよ、カーディナルの聖女様」
神父様が優しい声をかけてくださった。
「私もこの結界に異常を感じて調べておりました。この結界は現在二重になっており、聖魔法の結界の内側で不穏な結界が少しづつ濃くなっています」
「結界が二重……」
「ええ、貴方の結界のおかげで不穏な結界があれ以上広がらずに済んでいるのです。大陸の皆は貴方に守られているのに等しい」
ほろりと、涙が一雫こぼれ落ちる。
私の力が誰かのためになっていた。
良かった。良かった……
「さぁお嬢さんも馬車に乗ってください。協会でお茶でも飲みながら一緒にお話しましょう」
差し出された手に、ふらふらと自分の手を乗せる。
「ああ、涙は拭いておきましょうね。可愛らしい顔には笑顔のほうが似合いますから」
そう言って私の目元を指で拭ってくれた。
こんな風に女の子扱いされたのは初めてで、チョロイ私は簡単に落ちてしまったのだった。
神父様は不思議な人。
魔族と人間のハーフだけど、聖魔法は平気らしい。
とても包容力があって、優しくて、頼りになって……私に幸せをくれる。
まるで家族のような、友人のような、不思議な距離感。
ちなみに不穏な結界は悪魔の仕業かもしれないとのこと。
悪魔とは先祖代々の因縁があるとか。
神父様の敵は私の敵。
待ってなさいよ、悪魔!
キラピカツヤーン!で退治してやるんだからねー!!!
おかげさまで3000PV超えました。
読んでいただきありがとうございます!! これからも楽しく読んで頂けるように精進してまいります。
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