007 家族会議
その日の夜。
俺達3人と1羽はテーブルを囲んで座っていた。
「父上からの返事がないから直接カーディナルの王都へ行ってみようと思う。その後はそのまま魔王城へ向かうつもりだ」
「お父様、大丈夫かなぁ? 何があったんだろう」
「わからない。父上がすぐに返事をくれないなんて初めてだ。何があったのか分からないし、危険かもしれないからお前たちはフィンと一緒にエルフ領に行ったほうが良いと思うのだが、どうだろう?」
「ぼくは兄さんと一緒に行くよ」
「そのまま魔王城にも行くならオレ達が必要だろ。もうひとりのヴィックに会わないとな!」
「私も行くよ。みんな一緒がいいもん!」
あ〜やっぱりか……
レオンは少し困った顔をした。
「でも、どんな危険があるか分からないし、俺一人では全員を守ってやれる自信がない」
「ぼくは守ってもらわなくても大丈夫。魔力の循環が良くなったから新しい魔法も練習中だよ。索敵と異空間収納。」
「すごいじゃないか! トールも頑張ってるんだな。」
「オレも!オレも魔法が使えるようになったぜ!」
「へー!どんな魔法だい?」
「周りの魔素を吸収して変化できるようになったんだぜ。すごいだろっ!」
そういってヴィーはバサリと羽を広げて飛び上がると白ネズミの姿に変化した。
「おおっ!これならいざというときも逃げられそうだね」
「他のもできるぞ」
ヴィーは着地するなり、再びジャンプして羽ウサギに変化した。
真っ白でふわふわ。
「わー! 可愛い〜!!」
アリスは目をキラキラさせてヴィーに抱きついた。
ふわふわの小さな身体を抱きしめながら満面の笑みである。
「おい、コラ!あんまり強く抱っこすんな」
「ちょっとくらい、いいでしょ〜!」
騒がしい2人を横目に、レオンはふ〜むと考える。
「トールとヴィーは、この調子なら一緒に行っても大丈夫そうかな」
「待って! 私も行くよ! 私も身体強化の魔法を特訓中だもんっ」
ーー身体強化か……だが元が子どもの体力だし、強化しても少し強い大人並みといったところじゃないかな。
渋い顔をするレオンにアリスは慌てて言葉を追加する。
「絶対に足手まといにならないって約束するから!」
「しかし……」
「魔法の他にも、大爺様からいただいた守護のペンダントもあるし!」
「それ、たしか効果は5回までだよね?」
「お願いだから、一緒に連れてって!」
「俺としてはヴィーと一緒に留守番しててほしいんだけど」
「やだーっ一緒に行く!!」
「でも、アリス……」
「やぁーだぁー!いっしょに行くぅー!!」
「お願いだからっ置いてかないでぇ〜〜」
ついにアリスは泣き出してしまった。
うえぇ〜〜んと泣きじゃくるアリスに、レオンはしまったと反省した。
ーーたしかに置いていかれるのは嫌だよな。でも連れて行くのも不安だし、どうしたものか……
「兄さん、ぼくも一緒にアリスを守るから。みんなで行こうよ」
「そうだな、オレも家族一緒のほうが嬉しいし。ずっとアリスの近くにいてやるから安心しろ」
「お前たち……」
弟達の成長を感じてレオンは胸がいっぱいになった。
どこか感情が薄いようなところがあったヴィックだが、ちゃんと人の気持ちを考えられるようになったんだなと思えてしみじみしたのだ。
「ありがとう、それじゃあ皆で一緒に行こうか」
レオンは少しだけ困った顔をしながらも、笑って言った。
「俺も、みんな一緒がいいよ」
「っく。あっありがとぉ〜〜!!!」
アリスはますます泣いてしまった。
「ただし、条件がある。」
レオンの一言でその場は静かになった。
「トールは索敵と異空間収納を練習中、ということは。空間系の魔法が使えるということだろ。念のために結界魔法も練習しておいてほしい」
「う……わかった。やってみる」
「ヴィーが変化できるのは小さいものだけか? 大きい物にもなれたら嬉しいんだけど⋯⋯たとえば馬とかさ。アリスを乗せることができるだろ。どうだい?」
「おう、まかせろ! やってできないことはな〜い! たぶん。」
「アリスは、防御魔法を覚えてほしい。フィンにお願いしておくから、教えてもらって練習するんだ。いいね?」
「……うん。がんばる。」
涙目のまま素直に返事をしてくれたアリスが可愛くて、レオンはアリスの頭をなでまわした。
「レオン兄、ごめんね。ありがとう」
上目遣いが超絶可愛い。
「こちらこそ、一緒がいいと言ってもらえて嬉しかったよ。ありがとう」
ふたりで顔を合わせ、にへへと笑う。
「ヴィーも、トールも、ごめんね。私を魔王からかばったせいで大変なことになったのに」
「アリスのせいじゃないよ」
「そうそう、全部魔王が悪い!」
「ありがとう、頑張って魔法の練習するから。ぜ〜ったい一緒に行こうね」
「おう! 頑張ろうぜ!」
3人は顔を見合わせて頷きあった。
旅の出発に向けて猛特訓開始だーー。
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