057 異世界人ショウ
廊下に出ると、先程まではなかったヴィーの気配を感じたので急いで奥の部屋に向かった。
「ヴィー!! 無事か!?」
勢いよくドアを開けて飛び込むと、そこには1人の少年の姿があった。
いや、正しくは少年の姿を形取った魔力の集合体。
「……ヴィー……なのか?」
「アニキ」
振り向いた彼の顔には見覚えがある。
初めて精霊力を使って過去視の瞳に覚醒したときだ。
泉の祠で視た、淡く光る2人の姿。
質素な衣をまとった若い男性と、翼のある女性。
ーーまさか……!!
「アニキ、目が青いぞ? どうしたんだ?」
いつもの調子のヴィーの声。無事で良かったと安堵し、小さく漏らした息とともに現実に引き戻された。
先程までの浮遊感はない。
ただし、指先が小さく震えている。
自分の両手を見つめながら、精霊力を使いすぎたのかと反省した。
「ヴィーこそ、その姿はどうしたんだ?」
「砕いた魔石をばらまいたまでは良かったんだけどさ、雷鳴や風が吹き荒れてすごかったんだよ。」
「うん」
「それに結界がひび割れて崩れ落ちただろ」
「そうだね」
「なんかヤバそうなかんじがして、急いでこの家に飛んできて隠れてたんだ」
「さっきまで気配も感じなかったんだけど、どこに隠れてたのさ?」
「このタンスだよ。防御魔法が付与されてるタンスを見つけたんだ」
「なるほど、怖かったんだね」
「こっ怖くなんかないぞ!!」
「俺はヴィーが見つからなくて怖かったぞ? ぎゅってして良いか?」
「なんだアニキは甘えん坊か? 特別に許してやるぞ」
許可をもらったので、少年姿のヴィーをぎゅうっと抱きしめる。
「無事で良かったよ」
「アニキもな」
安心したように2人の身体から力が抜けていく。
目を閉じれば感じるヴィーの魔力。温かい……もう大丈夫だ。
改め見回せば、部屋の中は独特な魔力に満たされている。
たぶん異世界人ショウの部屋だったのだろう。
その魔力を取り込んだため、ヴィーはショウの姿になった……といったところか。
そういえば、ショウも暗殺者が怖くてタンスに隠れたエピソードがあったな。
「異世界創造伝記」の……何ページだったか。
〜〜〜
不安になった俺はあたふたしながら周りを見回し、いざという時のために作っておいてた防御魔法を付与したタンスの中に隠れた。
そして昨日作った防御特化イヤリングを強く握りしめながら必死に祈る。
神様!仏様!ご先祖様!どうかボクをお守りください・・・っっ!!!
子供のころ、泣いていた俺に婆ちゃんが教えてくれたおまじないだ。
異世界でも効果があるか分からないがすがれるものには何でもすがりたい。
困ったときの神頼みはこの世界の神様にも有効だろうか?
そんなことを考えながら必死に祈っていたら、そのまま眠ってしまったらしい。
翌朝、タンスをノックする音で目を覚ました。
〜〜〜
「これがそのタンスかぁ」と思いながら、そのときのショウを想像したら思わず笑いが込み上げてきた。
ショウとヴィーは少しタイプが似ているかもしれないな。
クスリと笑いながらも、重要なことに気がつく。
「ヴィー、悪魔は異世界人の少年の魂を探しているようだった。その姿は危険だから元に戻れるか?」
「そうなのか? わかった、この格好はもうしないよ」
そう言ってヴィーは鳥の姿になって俺の左肩へと身を預けた。
1階では輪郭がぼやけて救世主の顔は分からなかったけれど……さっきのヴィーの姿は、間違いなくショウだろう。
泉の祠の記憶にあった少年……彼もショウなのだと思う。
『救世主の魂は過去へ飛んだ』
あの言葉を聞いたときから、なんとなく気づいていた。
どれだけ遠い過去に飛んだのか。
もしそうなら彼はあの聖山でひっそりと暮らしていたことになる。翼のある女性が迎えに来るまで、ずっと、待ち続けていた……?
ならば、あの女性は救世主の仲間であるヒナの可能性がある。彼女もまた、過去のどこかへ飛んでショウを探していたのだろうか? けれど巫女様は「天空族」と言っていた。天空族とはどこに……
「アニキ〜? どうしたんだよ。早く帰ろうぜ」
「あ……ああ、そうだな。父上も会いたがっていたぞ」
「無事に救出できたんだな! オレも早く会いたい!」
ヴィーの微笑ましい姿に、俺はそっと頬を寄せた。
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※明日からはまた8時の投稿になります。




