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054 結界の家

お待たせしました! GWなので4連休は毎日10時にアップします。少しでも休日のお楽しみになってくれれば光栄です。第四章もあと少しなのでぜひお付き合いください。

一方、慌てて馬に跨がり結界の家へと向かっているレオンハルト。


身体強化の魔法をかけた馬体は通常の馬よりも力強く大地を駆けていた。

心なしか体格も一回り大きく逞しくなっている気がする。

草原を抜け、いくつかの村や町を越えて辿り着いた旧王都の外れ。

むかし召喚された救世主が住んでいたとされる小さな家は、1200年経った今でも結界を維持している。


ーー空は橙色に染まっている。

日が完全に沈み闇に覆われれば、悪魔に有利になってしまうだろう。

早くヴィーと合流しなければ。


乗ってきた馬を近くの木につないだ俺は、焦りながらも結界に手を添えた。



索敵魔法を展開。

悪魔の痕跡は感じられないから今のところは大丈夫のようだ。


結界に込められた魔力を調べると、いろんな魔法が組み合わされている。

防御魔法、浄化魔法、回復魔法、解呪魔法、防音魔法、対魔法結界、対物理結界。

そういえば「異世創造伝記」にも救世主の三人で魔法を付与しまくったと書いてあった。

もはやシェルターとのことだが、シェルターって何だろう?


それはともかく1200年も経っているのに効果が続いているのはすごいなと思っていたら、大爺様の魔力の気配がする。どうやら補助魔法のようだ。なるほど、弱ってきた結界でも補助魔法のおかげで効果を維持できてるのか。

……だったら、それは今後、俺が受け継いでいくべき役目なんだろうな。


これだけ強固に守られているとは、流石は結界の家。

悪魔が来てもこれなら入りこまれる心配はないだろう。


安堵して、一歩、足を踏み入れる。


思った通り……俺は結界の中に入ることができた。

きっとヴィーも大丈夫。

家の中にいるはずだ。


「ヴィー!」


玄関を開けて叫ぶが反応がない。

本当に、ヴィーがいるん……だよな?


「ヴィーー!!!」


もう一度大声で呼ぶが、やはり反応がない。

不安が押し寄せてきて心臓がドクンと音を立てる。


「ヴィーーー!! いないのか!? 返事をしてくれっ!」


ゲホッゴホッゴホ……

馬で駆けてきて疲労しているのに大声を出したため咳き込んでしまった。

息苦しさに顔をしかめながらも辺りを探るが、誰の気配も感じない。


どうしようかと頭を抱えたが、そういえばと思い出す。


こういう時こそ、過去視の力が必要なんじゃないのか!


大切な家族のために使うべきだろう。


意を決した俺は、目の前のダイニングテーブルに手をかざす。


ここは聖山に比べると魔素は少ない。

だが、救世主達の魔法が残っている。

大爺様の気配も残っている。


どうか、俺に力を貸してください……!!!




彼らの気配を感じる。

強い力が流れ込んでくる。


点と点が線で繋がるような、その線がどんどん増えていくような。


ーーリンクする。


目を閉じれば、光が、風が、すごい勢いで走っていく。

巻き戻っていく時間。



一瞬だが、ヴィーらしき鳥が部屋の中を飛んでいるのが見えた。



けれど巻き戻っていく時間は止まらない。

ものすごい勢いで走っていく光と風。


どこまで戻るんだろうと不安になったとき、ふわりと風が止んで静寂が訪れた。


そっと目を開ければ、そこにはテーブルを囲む3人の少年少女の姿。

精霊力が足りないのか姿はボンヤリとしていて顔は見えないが、楽しそうにしているのは雰囲気でわかる。

部屋の奥からもう一人、背の高い青年が食事と思われる皿を運んでいた。


ーーもしかして、救世主の三人と世話係の青年……?


彼らが何を話しているのか興味はあるが声は聞こえない。

残念だ。


……本当に?


本当に聞こえない?


王宮で、あの悪魔は魔力に同調して記憶の中の音も聞こえていたようだった。


ならば俺にもできないだろうか。


「魔力に同調」ということなら、このまま彼らの記憶に寄り添えば……あるいは……



ゆらりと揺れる意識。


自分の意識と彼らの記憶が溶け合い、混ざり合うような感覚。

自分も過去の存在であるかのような浮遊感。

ふと、小さな声が聞こえてきた。

儚い幻の彼らが楽しそうに笑っている声だ。


にぎやかに4人で食事をしている情景。

窓から差し込む光のせいもあって、彼らの笑顔が眩しい。



……そうか、彼らはこんなにも仲が良かったんだな。



何故かわからないが、切なくて心が苦しくなった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

少しでも面白いと思いましたら、ブクマ登録や評価、リアクションなど頂けると嬉しいです。執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。

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