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050 悪魔と王国5

「救世主の魂は過去へ飛んだ」


カーディナルの王は確かにそう言った。

大爺様からの伝言。


救世主は3人いたはず。

大爺様と最も関わりが深かったのはモノ作り職人。

彼の魂を悪魔が狙っていた?

何のために?


過去へ飛んだとはどういう意味だろうか。




そんな事を考えながらも、負傷した父を背負って疾走する。

王城周辺は瓦礫が散乱していたが、王都の街中は比較的被害が少ない。

身体強化に風魔法も合わせてスピードを上げ、モニカ嬢の元へ急ぐ。


神殿や王城ではエルフ族が悪魔の手がかりを探しているが、今のところは何も見つかっていない。

隊長達もあのまま国王と話し込んでいる。

スカーレットは捕らえたし、水晶玉は割られたので国民の洗脳は解けたはずなのに、城内の一部ではまだ戦いが続いている様子。


すぐには戦いを止められないのか、それとも黒幕が手を引いているのか。

いや、単純にエルフが攻めてきたと思ったのかもしれない。




王都を囲む城壁が近づいてきた。

門が閉まっているので飛び越えようと、両足に魔力を込めて思い切り踏み込む。

風を纏って跳躍すると、城壁の外に王国軍の陣が広がっているのが見えた。


背中に感じる父の体温は高く呼吸も荒い。

傷口は小さいのに、そこから闇の魔力がゆっくりと全身に広がり蝕んでいく。

この姿勢は父上の負担になっていないだろうか。

背負った状態では回復魔法もかけられない……


城壁を飛び越えた俺は風魔法を使って静かに着地し、あたりを見回す。

ここは王国軍の陣の端っこ。

待機中の騎馬もいる。


「すまないっ馬を借りる!」


素早く手頃な馬に跨って、ぐったりしている父を横向きに抱えた。


「あとで返します!!」


馬に強化魔法をかけると同時に、軽く腹を蹴って走らせた。

振り落とされないように必死に手綱を握りながらも父に回復魔法をかけ続ける。

後方で何か叫んでいたような気もしたが、今は急ぐのでそのまま突き進む。


抱える態勢のおかげで父の顔色が確認できる。

少しは魔法が効いてきたのか、先程よりは顔色も良くなり呼吸が落ち着いてきた気がした。


「大丈夫ですか、父上」

「ああ、少しラクになったよ。だが……この態勢はどうにかならないか……」


たしかに、子供や女性以外を抱えて馬に乗ることはないよな……。


「その体調じゃ自分で馬に乗れないんだから今は我慢してください」


そう言われた父は諦めたように苦笑いした。



モニカ嬢がいる辺境伯の陣はもう目の前だ。

息を切らしながらも彼女の前に飛び込む。


「モニカ嬢!! 治療を……浄化を頼みたい……!」




王国に新しい結界を張り直したモニカ嬢は、天幕で横たわる父の治療をしてくれている。

治療に集中したいからと追い払われた俺はローゼンドルフ辺境伯卿と机を囲んでいた。


「帝国……か」

「何かご存知ですか?」

「思い当たるとすれば、600年前の謀反だろうか」


難しい顔で考え込む辺境伯とご嫡男。

俺達はいくつかある天幕のうちのひとつに遮音の魔道具を起動して情報を交わしていた。


「その謀反とは、どういったものだったのですか?」

「当時のカーディナル王と意見が合わなかった侯爵が謀反を起こしたのだ。その頃の帝国は勢いを失っていて、それまで侵略して広げていった国土で内乱があったり独立宣言したりで荒れていたらしい」

「帝国と隣接している領地の侯爵が、弱っている帝国を叩くなら今だと声を上げていたのは本で読んだことがあります」

「ああ、軍事国家の帝国に仕掛けるなんてバカげている。王家が平和主義のため話が進まず謀反に及んだらしいが、城には貴重な魔道具が沢山あるから守りは強固だ。結局、侯爵は撤退して西側にあった小国に逃げ込んだと聞いている」

「今はその国、ないですよね?」


「……ここから先は知っている人は少ない。西の小国でも政治の中枢に入り込んで王国に戦争を仕掛けてきたらしい。国の規模が違うから、当然王国が勝って統治した」


「そんな簡単に他国の中枢へ入り込めるものなのでしょうか」

「私達もずっとそこが疑問だった」

「今回のように悪魔が関与していれば可能でしょうね」


「人を操る悪魔ねぇ」


「主人格は魔道具好きのジドラルで、もう一体の悪魔ラキエルを取り込んだと言っていました」

「取り込んだ割にラキエルは結構自由に動き回っているようだな」

「おそらくコントロールしきれていないのでしょう」

「能力的にはラキエルの方が上かもしれません」


「どちらにしても厄介だな」 


「全員が洗脳されたワケではないことを考えると何か条件があるのだと思います」


「レオンハルト殿は見当がついているのかい?」


「はい。スカーレット嬢の場合は、少しでも好意があればそれを増幅させて媒介とし洗脳したと考えられます。逆に根源となる好意がなければ洗脳されることはない。そして好意が少なくなったり、強い意志を持った者は無意識の抵抗で洗脳が弱まるという現象が見られました」

「ふむ」


「それとは別に、悪魔ラキエルは……おそらくですが、魔力や魂に干渉できるのではないかと思います」

いつも読んでいただきありがとうございます!

少しでも面白いと思いましたら、ブクマ登録や評価、リアクションなど頂けると嬉しいです。執筆の励みになりますのでよろしくお願いします。

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