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048 悪魔と王国3

闇に消えていく悪魔を見届けて息をつく。


「大丈夫かヘンリ、悪魔に目を付けられたようだぞ」

「まぁしゃ〜ねぇな。なるようになるさ」

「何をのんきに……! いや、俺のせいだよな。ごめんヘンリ」


「レオンが謝ることじゃない。俺が子供の頃、ルーヴィッヒ様に誓ったことだから」


「? 誓ったって何を?」


「おまえの盾になるって約束したんだ」


「は……はい!? 聞いてないけど!!!」


「言ってねーもん」


何をしれっと言ってるんだコイツは。


「俺のことなのに勝手に誓うなよ!」

「誓ったのはルーヴィッヒ様にだ」

「じゃあ、俺の盾ってなんだよ!?」

「……」

「俺は聞いてないから無効だ。そんなこと、しなくていい!」

「そうはいかない」

「なんでっ!」

「俺の責任だから」


「は?」


「おまえが小さい頃に魔力暴走を起こしたのは、俺のせいでもある。だから責任を取る。それだけだ」

「意味がわからない。たとえヘンリのせいだとしても、子供の頃の話だろ」

「それでもだ。この誓いは絶対だ」


「……だからって、そんな危険なこと……」


俺のせいでヘンリまで悪魔に狙われるなんてーー


「どうせ遅かれ早かれ悪魔とは戦うんだ。だったら今、倒したほうがいいだろ」


形を戻した魔法剣を肩に乗せて、ニカッと笑うヘンリ。

なんでそんなに平気な顔してるんだよ。


「そういうワケだから、おまえは俺が誇れるような主になれ」


ーー誇れる主、か。

主だなんて……ただの友人じゃダメなのかよ……!


奥歯を食いしばり、拳にも力が入る。

全く意味がわからない。

あの時、何があったのか思い出せれば納得できるとでも言うのか。


形容しがたい気持ちにイラ立っていると、王宮の南側から爆発音が聞こえた。




崩れ始めた王宮の結界。

急いで音のしたほうに駆けつけると、瓦礫の中に数人の影があった。

その中に見覚えのある姿を見つける。


「父上……!!!」

「無事だったかレオン! 悪いが今は再会を喜んでる余裕はない」


魔法陣を展開している父の隣には、負傷しているが魔法師らしき人族。

その背後には見覚えのある人族が3人。

あれは、国王陛下と王妃と……第二王子?

周りには倒れている人も数人見える。


そして土埃の向こう側には先ほどの悪魔。



「よお、先ほどぶりだな!」


そう言ってヘンリが光の矢を放った。

聖矢で闇は払えたものの、実態のない悪魔はゆらりと消えて再び現れる。


「くそっ」

「ヘンリ、そんなに連発して魔力は大丈夫なのか?」

「問題ない」


『邪魔だ、おまえ達は大人しく待っていろ』


湧き出た黒い霧が壁のように立ちふさがる。

あちらの様子が全く見えず、今度の霧は剣で払っても光の矢でも消えてくれない。

闇の向こうから話し声だけが聞こえてきた。



『カーディナルの王よ、もう一度聞く。召喚の儀式について知っていることを教えろ』


「本当に知らないのです! これ以上はご容赦ください!」


『王族の直系に代々伝えられていると聞いたが』


「今はその伝統は消えたのです。もう数百年も前に失われております」


『……では、最後に召喚した救世主の行方を知っているか』


「救世主、ですか?」


『たしかモノ作り職人と言ったか』


「ーーあの方は旅に出たあと行方不明になったと……聞いております……」


『それだけか?』



『……まぁ良い。嘘か本当かはおまえ達を食べれば分かることだからなァ!!』


「陛下!!」

「きゃあぁぁぁーー!!!」


暗闇の向こうから轟音と悲鳴が聞こえる。


「父上!? 父上ーーーーっ!!」

「くっそぉ〜! この闇さえどうにかできれば」


その時、左手奥から一筋の光の矢が飛んできて黒の壁を切り裂いた。


「すまん、遅くなった!」

「ラウリ!!」


遅れて駆けつけたラウリが合流する。


「今の矢は?」

「それよりルイードと国王陛下だ!」


薄れていく闇の向こうに戦っている父の姿が見えた。

苦痛に顔を歪めている父と魔法師。

押し寄せる黒の手。

立ち込める土煙。


父は防御魔法陣を展開しながらも攻撃魔法で応戦している。

複数魔法の同時発動は心身にかなりの負担がかかる。

人族の魔法師も火炎魔法を撃っているが力の差が大きいため効果は小さい。




「ルイードを援護するぞ!」

「「「はっ!!!」」」


ヘンリとラウリが弓を射っている間に父の元へと駆けつけた。

俺は剣に炎魔法を纏わせ闇の触手を焼き払う。

父は攻撃を俺達に任せて、背後にいる王族を守るため防御魔法に専念した。

隊長は魔法の威力を上げるために詠唱し、雷撃魔法の準備を整えている。



闇から生まれる無数の黒。

それは悪魔の周囲から生まれていた。


ーー今まではそうだった。


だから気付かなかった。


それは突然、俺達の足元からゆらりと生まれたのだ。

影から現れた太いヘビのようなそれは、父の足に食らいつこうとしていた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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