047 悪魔と王国2
『おまえら、あの大精霊とどういう関係?』
少年姿の悪魔が言う「あの大精霊」とは……思い当たるのは一人しかいない。やはり大爺様のことだろうな。
嫌な予感がする。身内であることは知られないほうが良いだろうな。
どう答えようかと迷っていると、ヘンリが一歩前に出て腕を突き出した。
「大精霊ってルーヴィッヒ様のことか? それなら、このバングルを下賜されたけど?」
『そうそう、そんな名前だった。じゃあ、そっちのエルフも何かもらったの?』
「あ……ああ」
嘘は言っていない。
大爺様にいただいた剣を帯剣している。
「なんだぁつまんないの」
悪魔は頭の後ろで手を組み、空中に浮遊しながら口をとがらせた。
「そっちこそ、ルーヴィッヒ様のことを何故知っている!」
『あいつのせいで異世界人の魂を逃しちゃったんだよね』
「ーーっ!! もしかして復習でもする気かっ!?」
『そんなくだらないことしないよ、復習したって欲しいものは手に入らないじゃん。あの魂をどこへやったのか聞きたいだけ』
「それは残念だったな。ルーヴィッヒ様は天に還られたぞ」
『まじか。あーもうっだから早く見つけたかったのに! ラキエルのせいだ!』
「……ラキエル?」
『そう、ボクの中にいるもう1体の悪魔』
「「「は?」」」
『ボクはあれが欲しいのに、ラキエルが食べようとしたんだよ。だから頭にきてアイツを取り込んでやったんだ』
「おまえは何者だ?」
『ボクはジドラル。魔道具作りが趣味の魔族だよ☆」
ニッコリと自己紹介をするジドラル。
だが目は笑っていない。
何を考えているのか読めないところが余計に怖い。
「1200年前に魔界から逃走してきた悪魔というのはおまえ達のことか?」
『そういえばそんな事もあったね〜』
愉快そうにヒャラヒャラと笑うジドラル。
一見、無邪気な子供に見える。だが艷やかな黒髪と赤い瞳、尖った角も頭の両サイドにあり、彼から漏れ出ている膨大な闇の魔力は強い悪魔であることを見せつけていた。
「王国を混乱に陥れて何が目的だ?」
『べつに。異世界人が欲しかっただけ。まぁ、他の魂も手に入るならラッキーくらいに思ってたけど』
「それで新聖女と手を組んだのか」
『今はそうだね』
「今は?」
『こっちの世界に来たばかりの頃は帝国にいたし、昔は王国の貴族に力を貸したこともあったよ。反乱軍とか立ち上げてて面白かった〜』
「こちらはいい迷惑だ。さっさと魔界に帰れ」
『やだよ。魔界では見ることが出来なかった面白いものがいっぱいあるもん。とくに異世界人が作った魔道具の研究はやめられないね』
思わず顔をしかめた。
エルフの谷にも転移門など異世界人ショウが作ったものがある。悪魔に突撃でもされたらたまらない。
『話は変わるけど……そこのキミ、見覚えがあると思ってたけどあの大精霊に少し似てるね? ちょっと一緒に来てもらおうかな』
ふいに、俺に向かって伸ばされた黒い触手。
反応が遅れてしまったと思ったが、左腕を掴まれる前にヘンリが剣で払ってくれた。
風圧で黒い霧が霧散する。
悪魔は再び姿を変え、黒の麗人ラキエルに戻った。
『剣など無駄だ。我に実態はない』
再び黒い霧が触手となって襲ってくる。
次々と現れる無数の触手。
自分でも剣を取り抵抗するが数が多すぎて捌ききれない。
悪魔に向かって魔法で攻撃していた隊長も、全部には手が回らないと叫ぶ。
「ヘンリ!!」
「おうよっ! だったらこれでどうだ!」
ヘンリが魔力を放出する。
身につけていたバングルが光ったかと思うと、彼が手にしていた剣へ周囲の魔素が吸収されていく。そして剣には文字が浮かび上がり、剣は弓矢へと形を変えた。
聖魔力を帯びた弓矢。
ヘンリはその魔力をまとった弓矢を悪魔に向けて放つ。
「どおぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」
しなる弓、放たれた聖矢、風を切る音、蹴散らされる黒い霧。
真っ直ぐ飛んでいった光の矢はラキエルの身体の一部を吹き飛ばして光の粒となって消えていく。
「……バカな」
ダメージがあるなど考えもしなかったのだろう。
想定外のことに目を見開いた悪魔は、自分の身体に開いた穴を呆然と見つめながら闇の中へ姿を消した。
「おまえも食らってやるから待ってろ」と言い残して。
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