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004 白い小鳥

聖山は魔力の源である魔素が濃いために普通の人間が足を踏み入れることはほとんど無い。

この隠れ里には、レオン一家とエルフ12名ほどがひっそりと住んでいた。


レオン達の父親はエルフ族で、母親はルーヴィッヒの血筋だ。

ちなみに母方の祖父は人族。

曽祖父が精霊族のルーヴィッヒで、曾祖母は魔族。

かなり特殊な家系だろう。


エルフ族は閉鎖的だ。

両親の結婚は反対され、エルフの谷にいられなくて聖山の反対側に来たと聞いている。


父親はエルフの族長の末弟だった。

民の中には大精霊であるルーヴィッヒを慕っている者もおり、村を出る時には2人に同行したいと数名が一緒についてきたそうだ。

この地に辿り着き、ルーヴィッヒが目隠しの結界を張って皆で暮らせるように里を整えた。


だがエルフは極端に排他的。

純粋な精霊族でない者には冷たかった。


混血の母親とレオン達3人は里の中で肩身の狭い思いをして生活していた。

その母親は強すぎる体内魔力に耐えられず身体を壊し、アリスが幼い頃に亡くなってしまった。

父親は他国との交渉役をしているため、外国に行っていることも多い。

それでは困ることも多いだろうと叔父一家は何かと気を使ってくれている。

父親の従兄弟だった叔父が里長を務め、周りとの橋渡し役などを引き受けてくれていた。


レオン達の家は集落から少し離れた場所にあり、訪れるのは里長である叔父の家族だけ。

それなりに楽しく暮らしてはいたが、時々寂しさも感じるのは仕方がない。




けれど今は、めったに来ない里のみんなが瓦礫の片付けを手伝おうとしてくれている。


「魔族領に行く話はまた今度にしよう」


そう言ってレオンは駆けつけてくれたみんなに挨拶しに行った。

残されたアリスは不満そうに頬をふくらませている。

ヴィックはそれを見て苦笑いするしかなかった。



「そういえば!その白い小鳥さんはなんなの!?」


アリスが急に振り向いてズズイと近づいてきたので、ヴィックは焦りながらも答える。


「え〜っと……。たぶん、ぼくの魔力のカケラ、かな?」

「魔力のカケラ?」

「そう。ぼくの中に隠れていた魔力。なんの魔力かはちょっと分からないんだけど」


寝台の上で座ったままのヴィックが腕を伸ばすと、小鳥は手の甲に止まった。

うっすら光る、まっしろの、ふわふわの小鳥。

魔力塊だからだろうか、少し透けて見える。


「キミは、ぼくなんだよね?」


ヴィックが話かけると小鳥はチーッと鳴いた。


「ぼくと合体できないのかな? 意思の疎通ができたら良いのだけど」

「ねぇ、魔力のカケラってことは、ごはんは食べないのかな?」

「さあ? 普通のご飯はどうなんだろう。魔力でできているなら魔力を食べたりして?」


ヴィックが指先に魔力を集めると、小鳥はクチバシでつついてそれを吸収した。

「あっ食べたね。やっぱり魔力を食べるんだ?」



「食べたんじゃなくて吸収したんだよ。もっとちょうだい!」

白い小鳥が言葉を発した。



「ええっ今、しゃべった!?しゃべったよね!!?」


アリスは目をキラッキラさせて、すご〜い!と大興奮。


「魔力ちょうだい。もっとちょうだい。」

「いっぱい食べたら大きくなったりするの?」

「おう。魔力が増えれば成長するよ。もっとちょうだい!」


驚いたヴィックは「じゃあ魔力をたくさん吸収したらもしかして……」と、何やら考え込んでしまった。


「オイ、魔力ちょうだいって言ってるだろ。早くくれよ。」

「ん〜……ちょっと待ってね」

「私の魔力でも良いの?」

「今はまだ他の魔力はダメ。ヴィック、魔力くれよ〜」

「ん〜……」

「はーやーくー!ちょうだいってばぁ!」


考え事に没頭しているヴィックは上の空で返事をする。

なかなか魔力を分けてもらえなくて、小鳥は羽を広げて騒ぎ始めた。


「早くくれって言ってるだろぉー(怒!!」


羽をばたつかせたり、勢いよく飛び上がったかと思えば天井にぶつかったり、ヴィックの髪をつついてみたり。

まるで子どものダダッ子だ。


「ああっもう!ほら。」


ヴィックはたまらず指先に魔力を集めて小鳥を落ち着かせた。


「ねえ、キミもヴィックなんだよね?」

「そうだよ」

「ぼく、なんとなくしか覚えていないんだけど、魔王に連れて行かれたヴィックもいるよね?」

「そだね」

「ぼく達って元に戻れるのかな?」

「さあ? でもあっちは〈闇の魔力〉と一部の〈記憶〉だけ持っていったみたいだぞ」


「……たしかに、記憶が一部欠けているかんじはする。キミは?」

「オレははっきりした記憶は6歳くらいまでしかないぞ」

「じゃあ6歳くらいってこと? あー。どうりで……」


「どうりで、なんだよ!?」

「いやぁ、言動が6歳っぽいなと……」

「あ"あ!?」


ちょっと好戦的になってきた1人と1羽を見て、アリスが叫んだ。


「ねえ、待って! 小鳥さん、さっきよりも身体がはっきり見えてるよ!」


言われてみるとたしかに、うっすら透けていた小鳥の身体が実体化してきていた。

小さくて、真っ白で、まんまるで、ふわっふわの、ずんぐりむっくり。


「魔力保持量が増えたからな」

ドヤ顔の小鳥さん。


「ぼくの魔力のおかげだね」

マイペースのヴィック。


相性が良くないのか、1人と1羽はまたもや睨み合ってケンカしそうな勢いだ。


「まったくもー、ケンカしないの!」


「それよりさ、どっちもヴィックなんだよね? 呼び方に困るから、それぞれ新しい呼び名を考えない?」

妹のアリスのほうが冷静である。


現状、ヴィックが3人いることになるのだ。

「たしかに!」と納得した2人も新しい呼び名を考えることに賛成した。

白い小鳥さんは、シマエナガくんを想像しながらお読みください⋯⋯。

※1行目を追加しました。(12.9)

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