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閑話/旅の錬金術師

「錬金術の村」の村人(ご先祖様)目線です。

※ショウ目線のものも「異世界創造伝記」に番外編としてアップしております。

これは1200年ほど前のこと。

次元の亀裂が他世界とつながり、稀に異世界人が迷い込んでくることがあった。

聖山中腹に隠れ住んでいた異世界人の村に、旅の錬金術師が遊びに来たときのおはなし。


□□□


「わー! 本当にこんな山奥に村がある〜」


声が聞こえたので外に出てみると、知らない男がいた。


「誰だおまえ? どこから来た」

「あっごめんごめん! 異世界人がいる村があると聞いて、もしかしたら俺と同郷かもと思って来てみたんだ」


なるほど、黒目黒髪。

たしかに〈同郷〉かもしれないな。


「……オレはチョウノスケ、村長の息子だ。おまえは?」

「俺はショウ。旅をしながらいろんな物を作ってる」

「錬金術師か?」

「似たようなもんかな」


へえ、まだ17~18歳くらいだろうに錬金術師か、すごいな。

かなり魔力が高いか、よほど魔力操作が上手いのだろう。

こんな山奥の村に辿り着くくらいだ……只者ではない。



「ねぇ、キミが異世界人?」

「オレは孫だ、爺さんが異世界人だった。他にも何人かいたらしいが、今いる異世界人は1人だ」

「その人に会えますか?」

「……そいつなら、向こうにいるぞ」


オレは畑の方を指差す。

そこでは1年ほど前にこの村にやってきたマサキが野菜を収穫していた。


「ありがとう、ちょっと話をしてくるよ」


そういって旅の錬金術師はマサキと話をしに畑のほうへ行った。

なにやら二人で会話が盛り上がっているような声が聞こえたが、まぁ、あやしい奴ではなさそうで良かった。


マサキはオレと同じ21歳。

元の世界ではダイガクとかいうところに通う学生だったらしいが、こっちの世界ではとっくにみんな働いている年齢だ。

あいつは体力があるので畑仕事を中心に仕事を頼んでいる。

狩りはやったことがないというので練習中だ。



「チョウノスケ、どこか土地があまっていないか? 俺がいつまでも居候じゃ申し訳ないと言ったら、彼が新しい家を作ってくれるそうだ」

「家? 錬金術ってのはそんな物まで作れるのか?」

「あ〜……俺、正しくいうと〈モノ作り職人〉なんですよね」

「モノ作り? 聞いたこと無いな。家を建てるならその辺の木を倒して場所を空けないといけないぞ」

「じゃあ俺が木を倒すから、そのまま木材として使わせてもらって良いですか?」

「この山の木は太くて頑丈だぞ」

「魔法を使えるから大丈夫です」

「そうか、なら好きにしてくれ。親父にはオレから言っておく」


オレは仕事の続きをするため家に戻ろうとしたら、後ろから「イエーーイ!!」と元気な声が聞こえた。

マサキが前に言っていた〈ハイタッチ〉とかいうのをしている。よほど嬉しかったのだろう。



数時間後。

森の一角の木々が消えた。


なんだこれ、どうなってんだ?

どうやってこの範囲の木を倒したと言うんだ!?

森の中にぽっかりと空いた空間を、オレは唖然と見つめていた。


驚きのあまり、呆然と旅人の仕事ぶりを眺めていた。



さらに数時間後。

そこには立派な茅葺き屋根の家が建っていた。


いや、いくらなんでも早すぎるだろう。

なんだこの人間離れした作業は。

本当にあいつは何者なんだ!?


「マサキく〜ん、これから家の中を整えていくけど、希望はさっき言ってたかんじで大丈夫?」

「ああ、忍者屋敷みたいなかんじでヨロシク!」

「オッケ〜! まかせといて!」


トンカン、トンカン、ギーコギーコ、コンコンコン……


作業中、あいつは建築中の家に泊まっている。食料も持ってきているらしい。

あれから5日ほど経過しただろうか。

ものすごく元気な声が村中に響いた。


「できたーーーーーっ!!!」



「えっなに、できたの? ありがとう、ショウ」

「待たせてごめんね、マサキくん。つい楽しくなっちゃってやりすぎちゃったかも」

「はははっショウって本当に作るのが好きなんだな」

「いや〜、こんなの作るなんて初めてだしワクワクしちゃって。これもロマンだよね〜」

「そうだよな、男のロマンだよな!」


「中はどうなって……うおーっすっげぇ! ちゃんと忍者屋敷だ。おまえ本当にすごいよ!」

「ふっふっふ。もっと褒めても良いよ」

「満足そうだな。一緒に忍者ごっこでもするか?」

「ふっふっふ。おぬしも悪よのぉ」

「悪役になってるぞ」


「この回転扉の奥は隠し部屋で、あっちの縄梯子は屋根裏に行けるよ」

「おお〜!」

「こっちの大きい絵の裏は隠し通路で向こうに繋がってるんだ」

「へぇ」

「収納はそことここで、ところどころ床板にしかけがあるから探してみてね」

「あと、こっちにのぞき窓があって……」


2人は大興奮だ。


「ついでに手裏剣とかマキビシっぽいのも作って飾っておいたよ」

「マジか! ありがとう!」


2人でよくわからない会話をしているが、とにかく立派なお屋敷ができたことだけは分かる。

元の世界でもこんな家に住んでいたのだろうか? 異世界すごいな。


「なぁ、オレも中を見て良いか?」

「もちろん! ぜひ見てってくれ」

「うわっ本当に広いな。それに面白そう」

「なんなら一緒に住むか? こんなに広いんだし」

「いいのか?」

「こっちは問題ないぞ」

「今度はオレが居候することになるのか」

「嫌なら無理にとは言わないけど」

「いや、住みたい。一緒にすまわせてくださいっ」

「じゃあ、これからもヨロシクな!」



「さて、話がまとまったところで問題があります」

「えっ急になんだよショウ」

「家の中のライトとかお風呂とか、電気がない代わりに魔道具を設置してます」

「そんな貴重なもの……ありがとう」

「ただし! 家も魔道具もメンテナンスが必要です。なので覚えてもらいます」

「「ええっっっ!?」」


「あはは、大丈夫! 聖山は魔素が多いから錬金術に向いてると思うよ。それに作れるようになったら売ることもできるし一石二鳥じゃない?」

「それはそうだけど……できるかな?」

「大丈夫、大丈夫。簡単なものなら3日もあれば覚えられると思うよ」



旅人ショウの言う通り、オレ達は3日でランプ型の魔道具を作れるようになった。

「チョウノスケくんは適正があるね」と言って、マジックバッグの作り方も教えてくれたが簡単にはいかない。


その後、ショウはマジックバッグの完成を見ることなく「そろそろ待ち合わせの町に戻らないと」と言って村を出ていった。

あれから誰も村を訪れる気配はない。

「この村の存在は内緒にしてほしい」と頼んだ約束を守ってくれているようだ。



錬金術を教えてもらってから1年。苦労しながらもなんとか小さいマジックバッグを完成させた。

今は村のみんなも一緒に練習中だ。

皮素材を手に入れるために獣を狩る機会が増えたので、食卓に肉が出ることが増えた。

これも一石二鳥というやつか。みんな喜んでいる。


ショウがまたここに来ることがあれば、この完成した第一号を贈りたい。



彼のおかげで「錬金術の村」として有名になるのだが、それはもう少し未来のおはなし。

いつも読んでくださりありがとうございます!

評価やブックマークも本当にありがとうございます!!


今年は初めてなろうに作品をアップしまして、久しぶりに物語を書く楽しさに時間があっというまに過ぎていきました。読んでくださる方々に感謝申し上げます。来年もコツコツ頑張りますのでよろしくお願いいたします。

みなさまも素敵な新年をお迎えください!

ーーーーーーーーーー

モノ作り職人ショウが書いた「異世界創造伝記」を別連載にて公開しております。

一応完結していますが、番外編を時々書いていますのでこちらもよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n7983jn/

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