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018 虹湖と魔王とルーヴィッヒ

タイトルとストーリーのイメージがちょっと違うので、分かりやすいようにサブタイトルをつけてみました。

ヴォルモール王城が氷漬けになった日、巫女様は婚約者にいただいた首飾りを付けていたそうだ。

運が良かったのか悪かったのか……と巫女様は苦笑いをした。


合同調査した遺跡から出てきた首飾り。

美しい首飾りだと思って贈ったのだろう。

遺跡から出てきた品々がまさか呪いの魔道具だったとは、誰も気づかなかったのだろうか。


「遺跡から出てきた品々にかけられていた呪いはこの世界の魔法ではなかったようです」

「この世界のものではない……?」

「むかし、次元に亀裂が入り魔界と通じていた時期があったのはご存知ですか?」

「ああ……異世界創造伝記の本に少し書いてありましたね」

「その時にこちらへ入り込んでしまった悪魔の仕業ではないかとのことです」

「悪魔の呪い……そんなことが分かるのは魔族くらいですよね」

「巧妙に隠蔽魔法がかけられていたようですよ。アモン様が教えてくださいました」

「!? 事件の後に魔王に会ったのですか?」

「アモン様は一度、この地を訪れております」


ーーヴォルモールの生き残りがいたなんて知ったら激怒して暴れそうなものだけど。


「アモン様によると、当時、取り逃がした悪魔は2人いて悪魔A・悪魔Bと呼んでいるそうです。悪魔Aのほうは良くわからないようですが、悪魔Bのほうは魔法の専門家で呪いも研究対象だったとか」

「では、その悪魔Bが呪いをかけたと?」

「アモン様からはそのように聞いています」

「……その悪魔たちはまだ生きているのでしょうか」

「そこは不明だとおっしゃっていました」


「悪魔たちを捜索しつつ、シノン様の行方を追っていたところ、この山村に隠れて暮らしている手がかりを得たようです」

「…………」


「この村は元々、亀裂から迷い込んだ異世界人達が隠れ住んていた村だったそうで、当時の村の住人がお二人を見つけて匿ったのだと聞いています」

「村の皆さんは魔王に咎められませんでしたか?」

「いいえ、むしろ匿ってくれて感謝すると」

「それなら安心しました」

「ただ、アモン様が訪れたのは……シノン様が亡くなり、ルーヴィッヒ様がお嬢様とともに村を出た後でしたので」


ーーそれは、想像するだけでも恐ろしい!!


「怒り狂いそうですね」

「それはもう、魔力暴走寸前でした」

「よく村が無事でしたね」

「ええ、ここは無事でしたが犠牲は大きかったです」


ーー?


「せっかく精霊の力を使えるようになったのですから、見てみますか? ここにはルーヴィッヒ様とアモン様の強い魔力残滓がありますから容易でしょう」

「はい、よろしくお願いします」

「向こうの山に湖があるのが見えるでしょう?」


ーー古い地図には載っていなかった湖だ。まだ新しいのだろう。


「あの湖と、こちらにある山桜との直線上に立って〈時渡りの瞳〉を発動してみてください」

「ここですか?」


巫女様に言われたとおりに山桜の木に向かって立つと、とても強い残滓を感じた。

かなりの魔力が通った後。

巫女様に目をやり、頷いたのを確認して自分の中の精霊力を瞳に集中した。


ーー少し、精霊力が足りない気がするけれど。


山桜に向かって手を伸ばし、かすかに感じられる大爺様の魔力をたどる。

認識してしまえば強い残滓の道の出どころであることが分かる。

大爺様の魔力とは別に、より新しくて強い残滓もある。

アモンのものだろう。


聖山に住まう精霊達の力も借りて〈時渡りの瞳〉を発動。

流れ込んでくる強い力。

光と風が早送りするように流れていく。


そして訪れる静寂。



そっと目を開けると、そこにはお墓の前で泣き崩れるアモンがいた。

その横には頭をさげている巫女様。


音は聞こえないのに、アモンの悲しみ、怒り、悲痛な叫びが伝わってくる。


ーー本当に、心から大婆様のことを大切に思っていたんだ。


そのうちアモンの嘆きに反応して周囲の魔素が集まり、どんどん膨れ上がっていくのが見えた。

さすが魔王と言うべきか、聖山という場所が関係しているのか、見たこともないような膨大な魔素が集まっている。

渦を巻き始めて今にも魔力暴走を起こしそうだ。


ーーこのままでは巫女様も村も危ない!!


「早く止めなければ!」と思ったがこれは過去を見ているだけ。

今も山村があるということは、この魔力はどこへ……


立ち上がったアモンは手を伸ばし、渦を巻いていた魔力を南東へ向けて放った。


勢いよく放たれた膨大な魔力が俺の頭上を通り過ぎていく。

身体をひねって目で追いかけると、放たれた魔力は小高い山にぶつかって森を破壊した。

森というか、山の一部を吹っ飛ばした。


ーーあれは、あの位置は……湖のある場所……!


唖然としているうちに過去の幻影は消えて元の景色に戻った。

いつのまにか、うっすらとオレンジ色になった太陽の光が湖に反射している。



「…………山が……」


「ええ、物理的に犠牲は大きかったです」

「なんて力だ」

「あそこは例の遺跡があった場所です。カーディナルが合同調査を取り仕切っておりました。アモン様は八つ当たりをして少しスッキリしたようでした」


ーー何やってんだ魔王のオッサン!!!!!


「あの湖は虹がよくかかるので「虹湖」と呼ばれております」

「そう……ですか」

「事件後、カーディナルは王都を西側に移して今の位置になったのです。ルーヴィッヒ様は多くを語りませんでしたが湖になることが見えていたかもしれませんね」

「巫女様は大爺様といつお会いになられたのですか?」

「あの日、城で難を逃れた私はカーディナルの婚約者を頼りました。彼は舞踏会は都合がつかずに不参加だったのです」

「それは運が良かったですね」

「はい。彼は約束通りに婚姻を結んでくださいました。魔道具の責任を感じていたのだと思います。ですが、彼が亡くなった後、私はこの村に追いやられることになりました。」

「……」


「本当に偶然だったのですが、ここにはルーヴィッヒ様とシノン様、そしてお嬢様がいらっしゃいました」

「それは……」


ーー俺だったら気まずくていたたまれないかもしれない。


「おふたりは私を責めることもなく暖かく迎えてくださいました。たった1年ほどでしたが一緒に過ごさせていただいたのです」

「そうだったのですね」

「私はこれも運命だったのだと思います。逃亡中の悪魔が捕まったという話は聞いておりませんし、私には、この一連の出来事を最後まで見届ける責任があると思ってます」


「そんな、あなたのせいじゃないのにっ! そこまで責任を感じなくても……」



大丈夫……と言いかけた時、森の奥から叫び声が聞こえた。

そして空から突然何かが降ってきた。

驚いて目をやると、それは馬に乗ったアリスとトールとアヤメ。


この馬はたぶんヴィーだろう。

なぜかツノと翼がついているけど。

本で見たことがある伝説の生き物と同じ姿。

ユニコーンだ。


なんでユニコーンの姿!?


白くて、風になびくタテガミが優雅で、翼を広げると凛々しくて、とても格好良いのに。


なのにやっぱり、足が短い。

いつも読んでいただきありがとうございます! ブックマーク登録や評価、コメントなど頂けると執筆の励みになりますので、少しでも面白いと思ったらよろしくお願いします。


☆別連載「異世界創造伝記」ではモノ作り職人ショウが活躍しています。

一応完結してますが、番外編を時々書いておりますので、こちらもよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n7983jn/

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