113 海上の戦い1
どうしよう。
海賊たちに見つかってしまった。
どうしよう……どうしよう……
内心は焦りまくりだが顔に出すわけにはいかない。
俺が態度に出せば弟妹達は不安になってしまうから。
長男の俺が守らなくてはならないのだ。
『あの子達を守ってあげてくれ』
大爺様の言葉を思い出して拳を握る。
両足に力を込めて踏ん張り、魔力をまといながら自分に言い聞かせる。
ーー大丈夫だ。この船は結界で守られているから簡単に侵入されたりはしない。
きっと、きっと大丈夫。
目を閉じて深く息を吸う。
向かってくる3艘を遠見の魔法で見れば、いかにもガラの悪そうな海賊達。
筋肉もりもり、腕や頬に傷があったり、眼帯していたり、服も袖は引きちぎったのか?と聞きたくなるようなワイルドぶり。いや、ワイルドってのは表現が上品すぎか。ボロボロだし血やドロの黒ずみが付いてるし、はっきり言って汚い。全員頭に布を巻いているのはお決まりなのかな?
手には大剣や小型ナイフ、弓なんかを持っている。
ーーあんな奴らをこの船に近づけるわけにはいかない。
「アリスとヴィーは部屋に戻って、使えそうな魔道具がないか見てきてくれるか」
「うん、わかった!」
「わかったぞ」
二人が部屋に入ったのを確認した俺は、船の先端へ向かい、舳先に立って剣を構えた。
ーーここは異空間、何があるかわからないぞ。油断するな。
『おまえ、対人戦の経験がないだろう』
『お前さんは優しすぎる』
エルフの谷で言われた言葉が頭をかすめて、小さく手が震えた。
ーー大丈夫だ。里を出たときより成長している。ちゃんと戦える。
ーー俺があいつらを守るんだろ。しっかりしろ、俺!
再び自分に言い聞かせながら前方を睨む。
魔力は充分。
距離も効果範囲内。
あとは幽霊船が来るまで持ちこたえるだけだ。
遠視で確認すると、海賊達が小舟からこちらへ弓を射ようとするのが見えた。
結界があるから届かないだろうけど、結界もどの程度まで持つのか分からないし余計な衝撃は避けたい。
剣に風魔法をまとわせて向かってくる矢に向かって風刃を放つ。
枝のようなそれらは風刃に分断されてバラバラと海上に落ちていく。
このくらいなら俺でも問題はない。
けれど本丸は海賊船。
……ほら、言ってる側から大砲をこちらに向けてきた。
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