111 幽霊船の物語
トールが手にした「南の島の幽霊船」の物語、これが一番ヒントに近い気がした。
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未踏地を探して開拓するため、船で旅をしていた主人公たち。
南の小さな島に立ち寄り、住人たちと仲良くなったのだが……実は彼らは海賊だった。仲良く酒を飲み交わして油断していたところを襲われそうになった主人公たち。
彼らは慌てて船を出す。
船には護衛も乗っていたが、海の戦いに慣れている海賊に苦戦していた。船上で争っている中、主人公は海に投げ出されてしまう。
気がつくと主人公は船の上にいた。
幽霊船に助けられたのだ。
元の船に帰ることも出来ず、そのまま幽霊船の乗員になった主人公。その船は時間軸を超えていろんな次代の海を旅していた。遥か昔の海、見たこともない景色の海。
幽霊船の乗組員達は気の良い奴らが多く、主人公は時間とともに打ち解けていたが、海賊の件もあって心から信じることはできなかった。
心の中では孤独にかられていた主人公。
その気持ちを察してか、幽霊船は元の時間まで主人公を送り届けてくれた。
目の前には船を守るため戦っているかつての仲間達。
助けに行きたい。
だがここで幽霊船を降りれば、共に時を超えて旅をした友人達と分かれることになる。
主人公は悩んだ。
どちらも大切な仲間だと気づいた。
どちらも失いたくないと涙した。
すると幽霊船は仲間達に加勢し海賊団を退けてくれたのだ。
友の仲間は我らの仲間。
友情を再確認した彼らは肩を抱き合った。
いつでも、どこでも、どんな時代でも、姿は見えなくとも友情は続く。
そう言い残して幽霊船は南の海に消えて行った。
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「友のため、仲間のため……か」
「情に厚い幽霊船」
「情も何も、さっきすれ違っただけなんだが。どうしたら良いんだろうね?」
「……次の本、読んでみるよ」
残りは「黒い森の賢者」である。
トールが読んでくれるというので、俺はアリスとヴィーの様子を見に来た。
アリスは椅子に座って膝の上に本を乗せて読んでいる。
ヴィーは、流石に鳥型では本がめくれないので子ザルの姿だ。床に本を広げて読んでいる。
「ふたりとも、本はどうだい?」
「レオン兄、海とは関係ないけど面白いよ」
「小さな貴婦人と旅人、だっけ」
「うん。小人の国に迷い込んだ旅人が貴婦人と友達になる話なの」
ーーこれも昔話っぽい物語なのかな。
「アニキ、こっちも面白いぜ。仮面の勇者、参上! とう!!」
ーーあ、勇者ごっこが始まってしまう。だめだ。
「面白いのは良かったけど、今はこの異空間から脱出する方法を探さないと」
「レオン兄、貴婦人はね、外の世界のお菓子を主人公にもらった御礼に宝物を渡したんだよ。その宝物のおかげで小人の国から脱出できたの」
ーー宝物か。空飛ぶ怪魚のウロコと似ている展開だな……
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